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キャンセル待ち

しりとり式にテーマの言葉を連鎖させていく掌編小説。
テーマは、軍艦巻 に続き 「ャンセル待ち」 です。

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待つことが、私の価値だ。
どこかの歌じゃないけれど。

そのひとは、取引で月に一度私の会社にやってきた。
背が高く白い歯をしていて、いつもさっぱりとした香りがした。
毎度の会食の後、二人でバーに行き、そのまま朝まで過ごした。
月に一度だけ、でも必ず。

そのひとには恋人がいた。
遠い外国に駐在しており、3ヶ月に一度会いに行っているとのことだった。

そんな遠距離恋愛、そのうち終わるに違いない。

友人は言った。
「先の見えないキャンセル待ちだ。やめたほうがいい」

私はやめなかった。
待ち続ければ権利は消えないでしょ。

ある日そのひとは言った。
「結婚するんだ」
そうなんだ、おめでとう。外国に住んでいるって言ってた彼女さん?
「ううん、彼女とは少し前に別れた。最近入ってきた会社の後輩となんだ」

どこの女だろう。
キャンセル待ちの横入りは許せない。

でも、三組に一組の夫婦が離婚する時代だ。
次を待つことなんてわけない。
待つことだけが、私の価値だ。

じゃあ今日はあなたの結婚祝いだね。
次、何飲もっか。


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次回は
キャンセル待 → 「ケット」です。
友人の、なしころもサクサク(@jupiter_00270)が担当します。

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