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別れ話、男からの返信

 別れを切り出すと、彼から帰ってきた一言目は「俺も思ってた」
 思ってたのなら男が先に切り出すべきでは、と思う節は誰しも皆無ではないはず。まあ、苦し紛れの言い分なのは明らかであるし、それは後の言い分からも明かされる。
 この一言を枕詞に、つらつらとお互いが距離を置くことが正しいという理屈を並べているようにうわべでは話を続けるが、実際のところその理屈は綺麗に整列していない。ここで語られる言葉のほとんどは意味を果たさないようだ。意味を果たさないというのは言い過ぎかもしれないが、ここで発せられる言葉は形式化された内容であって、それぞれその形式をコピーしたのち、ペースト先で場所や環境、時間設定などを各々の辻褄に合うように設定した、これからのあなたのことを思って私は話しています。私は最後は紳士として終わります。という「意味」を含めた言葉である。「思い」ではない。
 そして、最後にこの言葉がつくことがある。「このことは誰にも言わないでくれないか」
 この言葉の裏には何があるのか。言って悪いことがあるのか。犯罪を犯したわけでも、恥ずかしいとこをしたわけでもない。この一言で女は友人に別れ話をすることで自分のうちに詰まった思いから解放されることができなくなる。別れた後にもそんな思いをさせるなんてなんと往生際の悪いこと。
 この最後の一言は男のプライドからくるものなのだろうか。それよりも男がまだ吹っ切れていない、まだ未練が残っていることの現れと言った方がしっくりくる。
 
 これを踏まえると、別れ話を切り出した際に返ってくる男の返事は耳を傾ける価値がないものだったりする。もちろん全員とは言えないが。
 そんなことをしゃしゃるは恋愛をしていない若干19歳美大生。私はいつも傍観者。周りの景色が変わっていくだけ。そんな中で耳をよぎる言葉でしか私は恋愛を語れない。そんな私の言葉に信憑性は全くないのだが、そんな傍観者の考えも必要ないとは言い切れないだろう。恋は盲目であるようだから。

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