見出し画像

[体験談]アメリカPhDプログラム合格への道

みなさんこんにちは。今日はアメリカのPhDプログラム受験に関して、記憶の新しいうちに書いていきたいと思います。今後受験をされる方の参考に少しでもなれば幸いです。ちなみに、私は、ニューヨーク大学の修士課程に現状在籍をしているので、アメリカの大学在学中の留学生という立場で出願をしました。そして、9つのPhDプログラムへ出願し、2つのプログラムから合格を頂き、最終的にカーネギーメロン大学のNeural Computation PhD Program(https://www.cmu.edu/ni/academics/pnc/)へ進学をする予定です。そのような立場の人間の取り組みと思って読んでいただければと思います。

アメリカのPhDプログラム受験は日本の受験とは全く違う

まず最初に、日本とアメリカのPhDプログラム受験の違いについてまとめていきたいと思います。アメリカのPhDプログラムの受験では、日本の大学受験で見られるような筆記試験のようなものは全くなく、提出する書類を基づいた総合的な評価によって合否が決まります。日本の大学の推薦受験に多少近いのかもしれません。

では、筆記試験がないのだから、その分野における専門性は必要ないのか?答えはNoです。むしろ、アメリカのPhD受験では、筆記試験で答えることができるような静的な知識・専門性ではなく、実際にこの学生が研究者としてこの分野でやっていけるのか、研究に取り組んでいくために必要な知識をどの程度持っているのかという、経験に基づくより動的な知識・専門性が求められます。その学生の学力ではなく、研究者としての素質を評価されているような印象です。

そのため、実際の出願準備期間だけでなく、出願する何年も前からの準備が非常に重要です。出願までの自身の経験全てを用いて、自身のその分野の研究者としての素質をアピールしていくのがアメリカのPhD受験です。

またもう一点非常に特徴的なのは、研究者としての素質に加え、その学生の長期的なvisionや、なぜ今の研究に興味を持つようになったのか等、その学生の人生そのものが評価されます。それは主にエッセイと面接を通じて評価をされるのですが、学生が明確に回答を提供しないといけない問いの例としては、
・あなたはなぜこの分野に興味を持ったのですか?
・将来何を成し遂げたいのですか?
・その将来のvision実現のために、なぜPhDプログラム(特に出願先のプログラム)への進学が必要なのですか?
等が挙げられます。過去の経験と将来のvisionに一貫性を持たせることが非常に重要なので、受験を通じて、自分という人間を改めて考えるきっかけを与えてくれるのがアメリカのPhD受験という印象を個人的に受けています。

出願において最も重要なのは研究経験と推薦状

さて、それではもう少し具体的な受験に関する内容に入っていきたいと思います。まず、アメリカのPhD受験において提出を求められるのは主に以下の通りです。
・エッセイ1: Personal Statement
・エッセイ2: Statement of Purpose
・推薦状3通程度
・CV(日本で言う履歴書のようなもの)
・英語力の証明書(主にTOEFLのスコア)
・基礎学力の証明書(主にGREのスコア、但し最近は提出を求めるプログラムが減少傾向)
・成績証明書(GPA)

日本人として、アメリカの大学院受験を考えた際に一番大きなハードルとなるのはもしかするとTOEFLかもしれませんが、実際TOEFLのスコアは足切り程度にしか使われず、出願書類内での重要度は低いです。

重要なのは、二つのエッセイを通じて自身の研究者としての素質を十分にアピールし、その裏付けを推薦状を通じて行うことです。ちなみに、エッセイに関してはプログラムによってPersonal Statementの提出を求めないものも多くあります。ただ、エッセイが1本であろうと2本であろうと書くべきことは変わらず、自身のその分野への興味のきっかけから、これまでの研究経験までを一本の筋を通してまとめあげることです。そして、実際に研究をともに行った教授から、この学生はしっかりと研究に取り組む力があるという裏付けをもらうことで、大学に自身の研究者としての素質を伝えます。

そのため、特に推薦状に関しては、長期的かつ戦略的な準備が重要です。その分野において、国際的にプレゼンスのある先生からの推薦状を1本ではなく最低でも2本、できれば3本以上揃えることが合格に向けてほぼ必須の条件といっても過言ではないと思います。学部や、修士課程在学中の研究活動を通じて、この推薦状のことを意識しつつ動けると受験において非常に有利になるかと思います。

ちなみに私の場合、学部時代での専攻は数学だったので、今回進学をする分野との関連性はかなり弱かったです。そのため、PhD受験の前に、アメリカの修士課程プログラムに入学をし、その2年間を使って研究経験と、推薦状を準備するためのネットワーク作りを進め、今回の合格に繋げました。

出願書類の準備には諸々含めて半年はかかる

実際に出願することを決めて以降も、なんだかんだで出願準備には半年程度かかると思います。私の場合、今回の受験は以下のようなスケジュールで動きました。
[6月-8月]
・出願するプログラムの調査
・日本の奨学金の願書準備
・教授への推薦状依頼
[9月]
・TOEFLの受験 (私の場合GREは不要だったので受験しませんでした)
・エッセイに書く内容を(日本語で)考え始める
[10-11月]
・エッセイの作成
[12月]
・出願

私の場合、TOEFLの勉強はニューヨーク大学受験の際に一度徹底的にやっていたこともあり、スコア取得にはそれほど時間がかからなかったのですが、実際はここには相当時間がかかると思います。

また、エッセイの作成においては、当初色々な人に見てもらったのですが、最終的には現在アメリカで同分野のPhDプログラムに通っているアメリカ人の友人に何度も何度も添削をしてもらい、まとめあげました。この友人の力なしでは、私はエッセイを仕上げることができなかったと思います。

教授への推薦状の打診は早くから行っておく必要があります。私の場合、打診後、必要に応じて英語で自身のこれまでの経験をまとめた資料を先生に共有し、推薦状作成の際の参考資料として使ってもらいました。

情報集めはできるだけ現地にいる人にリーチして進める

上記に少し記載しましたが、特にエッセイの準備に関しては、現地の学生や研究者にできる限りリーチをして、助けを求めることが重要だと思います。日本でも受験に関して色々な情報は手に入りますが、実際の現地の情報とは大きく異なることがよくあります。

例えば、私は自身の知りうる限りの情報を元にまとめたエッセイを、現地のPhDプログラムに通っている友人に見せたところ、ほぼ全構成を見直すことになりました。英語の文法や語彙うんぬんと言うよりは、何をどのようなストーリーで書いて、どう自分をアピールするかの理解が、全く異なっていました。そして、彼女に助けてもらったお陰で、無事合格ができるレベルのエッセイに仕上げることができました。

日本からアメリカの大学院受験を考える場合、これはなかなか簡単ではないかもしれません。これを乗り越えるために私がニューヨーク大学をした際にとった戦略は、自分のいきたいプログラム内の研究室にいる日本人学生・研究者に勇気を出して直接メールを送ってみるということです。もし返信が返ってこなくても止めることなくとにかく挑戦し続けます。そのような挑戦の結果得られる情報は、日本でどれだけ時間をかけても集められない貴重な情報になると思います。

留学生にとっての恐怖の面接は準備が9割

最後に、面接について少しだけ触れておきたいと思います。ここまでは出願書類について書いてきましたが、実は多くのPhDプログラムでは、出願書類を提出した後に、恐怖の面接が存在しています。私の場合、それぞれのプログラムで4名の教授と30分のzoom面接に取り組みました。アメリカの修士プログラムに現状在籍をしているとはいえ、英語力に自身は全くありませんし、面接はただただ恐怖でした。そのため、想定質問・回答を準備し、それを模擬面接を友人に依頼して何度も練習することを繰り返しました。

しかし、実際にやってみると、面接というよりは先生との会話というような印象で、非常にカジュアルな形式のものでした。聞かれた質問も私の場合特に難しいものはなく、準備さえしっかりしていれば答えられるものばかりでした。

また、私の出願したプログラムでは、書類審査でほとんどの学生が落とされるため、面接の段階に進んだ時点で残っている学生の数は10-15名程度でした。そのため、実際の合格率はわかりませんが、書類審査さえ突破できれば、合格はかなり近いところにあると思っても良いかもしれません。

まとめ

今日は私がこの冬に経験をしたアメリカのPhD受験に関してまとめました。アメリカのPhDプログラムは、多くが授業料等が無料になることから世界各国からたくさんの学生が受験しており、競争率が非常に高いです。そのような環境の中で合格を勝ち取るにはとにかく準備が大切です。本記事に記載した情報が皆さんの受験の準備に際して何か参考になれば嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?