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ダブリン城とご対面 | アイルランド留学日記 5

授業が始まり、本格的にアイルランドでの学生生活が始まった時期。

日本人の留学生が1人もいないクラスばかりを選んで少し緊張したり、入会したJapanese Society(日本同好会)の初イベントに参加したり、と忙しない5日間を経た、週末。

私は友人と一緒に、再びダブリンのシティセンターを訪れていた。

街の中央にある銀の塔Spire(スパイア)で、もう1人、初めましての人と合流した。
他のヨーロッパの国で少し前から留学生活を始めていた彼女は、人見知り全開の私に優しく話しかけてくれた。ありがたや。


3人で向かった先は、Dame StreetとCastle Streetのすぐ近くにある、アイルランドのシンボル、ダブリン城(Dublin Castle)

街の中に突如現れる、城へのゲート。この時点で、荘厳さを感じてしまう。


エントランスでチケットを買う際、対応してくれたのはノリの良いおじさん。

『Are you girls Japanese? (君たち、日本人?)』と聞かれ、Yesと答えると、英語と日本語のパンフレット両方、そして笑顔溢れるウインクをもらった。


おじさんに見送られ入場(入城)すると、まず広がっていたのは美しいシャンデリアとレッドカーペット。

この階段を登る時、中世ヨーロッパにタイムスリップした気分だった。


順路通りに進むと、暖炉と椅子、アイルランドの国旗がある比較的シンプルな小部屋へとやって来た。

赤い壁に白い暖炉。


写真右上に写っている白丸の解説パネルには、アイルランドでかつて起こったイースター蜂起の中心人物、James Connolly(ジェームズ・コノリー)の名前が。

この小部屋は、当時イギリスの支配下にあったアイルランドを変えようと戦うも、道半ばで処刑されてしまった彼へ敬意を捧げるため作られたらしい。


小部屋を出ると、先ほどの赤と白の空間から一変して、白と金の通路が広がっていた。

美しすぎてため息が出てしまう回廊。


壁に飾られている、歴代のアイルランド首相たちの白黒写真が出迎えてくれた。

中でも気になったのが、第7代首相のMary Robinson(メアリー・ロビンソン)。

1990年から7年間、首相を務めたそう。


解説文を読んで彼女がアイルランド初の女性首相であったこと、初めてイギリスを訪れQueen Elizabeth II(エリザベス女王2世)に謁見したことを知った。

・・・日本で首相となった女性は、未だ0。
(※振り返りを書いている2023年現在も、この数は変わらず。)

思わぬところで世界とのギャップ、母国の課題を直面し、やりきれなさと悔しさが入り混じった。


ひとまずダブリン城を楽しむことに戻るため先へ進むと、お次は「豪華絢爛」という言葉が似合う応接間。

ここには、アイルランドの歴史を彩った人々の肖像画が飾られていた。


なぜかMちゃんとEちゃんとはぐれていたことに気付いたのは、この部屋に来た時である。
少し焦るも、「まあ、そのうちどこかで会えるだろう。」と気楽に考えながら、そのまま城内を回り続けた。

その間、2人は私がいなくなっていて、『あれ?どこ行ったの!?』と驚いていたらしい。
・・・人見知りに加えてマイペースな性分が出てしまって、本当、申し訳なかった。


そうとは知らない私は、さらに奥へと進む。

美しい王座が目を惹く王冠の間。
現在も大統領就任式が執り行われる聖パトリック・ホール。


城最古の部屋で美しい天井画に見惚れていると、慌て顔のMちゃんEちゃんもやって来て無事に合流。
平謝りしつつ、他の部屋を一緒に見て回った。


城から外に出ると、エントランスからはよく見えなかったダブリン城全体の外観を眺めることができた。

世界一美しい図書館に行った時とは真逆の、よく晴れた日だった。


ヨーロッパといえば、尖塔がいくつもあって、真っ白な壁で、縦に長いタイプの城がすぐに浮かぶのではないだろうか。
身近で例えるなら、ディズニーランドのシンデレラ城のような、あんな感じの城。

私も例に漏れずそのイメージを持っていたため、ダブリン城を見た時は驚いた。
想像していた城と、全く違う。

だが同時に「ああ、ダブリン城だ。」と思った。

先ほど触れた通り、アイルランドはイギリスからの独立を目指して長年戦い続けた過去がある。
つまり、支配下の時代に作られたこの城は、その歴史と独立後のこの国の歩みをずっと見てきたのだ。



アイルランドという国の歴史、この国の人々の誇り(プライド)が残る城。

そこは、1人の歴史の傍観者と対しているような威厳を感じられる場所だった。

最後の部分を、少し補足。

もちろん、ヨーロッパ各地にあるどんな建築様式の城にも、それぞれの歴史とその時代を生きた人々の人生の一部が刻まれていると思います。
なんだったら、ダブリン城の建築様式も、私が知らないだけでヨーロッパでは一般的かもしれませんし。

ただ、私がダブリン城内を見てから外観を見た時。
灰色の石壁に歴史の重みのようなもの、縦ではなく横に広がっている造りに過去・現在・未来を見続ける覚悟?のようなものを感じたので、「傍観者」そしてタイトルに「ご対面」という言葉を選びました。

そんな、エモーショナルな経験をした思い出です。

(上写真:回廊の天井。細かい装飾まで美しかった。)

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