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WHY なぜ創るのか 【クリエイティブはどこへゆくのか】#3

どうも。EATALK MASKの中の人、ミムコです。

これは、人はなぜ「創る」のか、私はなぜ「創る」のか、というお話の続きの3回目です。

前回のお話はこちら。

クリエイターはハンターである
この前提をもとに、ソロハンティングで理想の獲物に挑み続ける「クリエイターの理想像」についてお話したのが前回。なんか、美大あるある的なお話になってしまっていたかもしれません。

今回はハンティングが近年変わってきたよ、というのを創作話で書いてみたいと思います。

毎回考えながら書いているので、予告と違ったりして...すみません。
私の話もどこへゆくのか、という感じなんですけど、一緒に考えながら読んでもらえたら嬉しいです。

あと、先にお伝えしておきますが、今回長くなっちゃいました...


孤高の凄腕ハンター

ある集落に凄腕のハンターがいました。
彼はひとりで森へ入り、何日もかけて、大きな獲物を狩るのです。

最初から凄腕だったわけではありません。
狩りのために仲間と森へ入ったある日、彼は偶然大きな熊に出くわしました。

その熊を見た瞬間、「この熊を狩りたい」という強い衝動に駆られたのです。

その思いは日に日に強くなり、仲間と狩りをしていても、あの熊のことを考えてしまいます。

どうしたら狩ることができるのか。

暇さえあれば、森へ入り、熊の足跡を追い、武器や罠も熊に合わせて試行錯誤を重ねます。
そしてある日.......とうとう彼は熊を狩ることに成功したのです。

彼は集落のヒーローとなりました。
子どもや若者は、彼のようなハンターになりたいと憧れるようになります。

獲物を誇示するハンターたち

しかしこの頃、集落では作物の栽培が始まりました。手間と時間をかけて大物を狙うハンターは何人も必要ありません。作物栽培の人手が減ってしまっては困るからです。

でも肉を調達するハンターも必要なので、有望そうな若者を数名選ぶことになりました。
選ばれたハンターたちは特権意識を持つようになります。そして、お互いどれだけ素晴らしい獲物を狩れるかを競い合い、誇示し合うようになるのです。
「おまえの狙っている獲物は何だ? 俺の狙っている獲物の方がすごいぞ」
こんなマウントの取り合いを始めます。

多様化するハンティング

大きな獲物を狩るハンターには、スポンサーがつくようになりました。持ち帰る獲物を優先的に渡す代わりに、狩りに必要な食料や武器をもらうのです。

このことで、ハンターたちに格差が生じます。
武器も食料も充実したハンターは、より大物にチャレンジでき、スポンサーのつかないハンターはそこそこの獲物しか狩れない。

スポンサーの目に留まることが、ハンターたちの目標になり、彼らはあの手この手で自分たちの狩りの技術や獲物を魅力的に見せようと工夫し始めます。
ある者は、凝った罠を開発しました。またある者は、狩った獲物を豪華に調理して提供しました。


エンタメ化するハンティング

この頃、作物の栽培や狩りの進化によって、人々は「食べる」ことに困らなくなり、刺激を求めるようになってきました。そこに目を付けたスポンサーが、狩りをエンタメ化することを思い付きます。
狩場まで行き、仕留めるところを見たり、武器を限定して難易度を上げたり。


人々は熱狂します。生活が豊かになってきていたこともあり、スポンサーになりたいと思う人も増えました。お気に入りのハンターを援助することで、一緒に狩りに参加しているような気持ちになれるからです。


獣を狩らないハンティング

 そんな仲間たちの様子を一歩引いて見ている青年がいました。青年は思います。

「すごい獲物じゃなきゃ、ダメなのかなあ」

ある日、青年は、鼻息荒く狩りへ出掛けていく仲間のハンターたちから離れて、大きな獣がいないと言われる森の反対側へ行ってみることにしました。彼は獣を追うことも好きでしたが、「発見」という名の狩りがもっと好きでした。きれいな色の石や木の実、草花、小さな発見も楽しいのです。

「あ、あの青い鳥! 初めて見るな」
ワクワクしながら、青年は鳥に狙いを定め、弓で仕留めます。立派な獲物とは言えませんでしたが、彼は満足でした。美しい青い羽根が手に入ったからです。

獲物を持ち帰った青年は、その青い羽根で髪飾りを作りました。小さな花を添えて。
その髪飾りをいたく気に入った帽子職人がいました。
そして、材料として青い羽根が欲しいと青年に相談を持ち掛けます。青年は快くその依頼を引き受け、青い鳥を狩りに出掛けました。

狩場へ向かう途中、青年はふと思い付き、帽子飾りの材料になりそうな素材を袋に集めます。あの帽子職人は気に入ってくれるだろうか。

集めた素材を青い羽根と共に帽子職人に渡します。帽子職人は感動しました。今まで想像したこともない素敵な帽子が出来上がるに違いありません。

ああ、こんな素晴らしい素材がたくさんある森に自分も行ってみたい。そう強く思った帽子職人は、青年に連れて行ってほしいとお願いします。

それは青年にとっても嬉しいことでした。彼はずっと、発見の楽しさを誰かと共有したいと思っていたからです。

体験に価値が生まれる

翌日、二人はさっそく森へ出掛けます。今日は特別な狩りです。「素敵なもの」を探す狩り。

青年は森を歩きながら、今まで自分が発見したものをひとつひとつ帽子職人に伝えます。木々のざわめきが音楽に聴こえること、森の匂い、小さな花の可憐さ、実は石にも彩りがあること。帽子職人と青年は「素敵なもの」をたくさん狩りました。

森から帰ってきた帽子職人の作った帽子は瞬く間に大人気となりました。森の清々しい匂いを感じる帽子、可憐な花がそっと咲く帽子。森で得たインスピレーションから生まれた帽子たち。そう、森で得たのは材料だけではなかったのです。

そのことが話題となり、森へ連れて行ってほしいという人が増えました。青年は獣を狩るハンターではなく、森の「素敵」を狩るハンターとして、森のツアーガイドとして、一躍人気者となったのでした。

誰もが「創る」時代

これを機に、森のツアーが多くの人に広がり、ガイドをする人も増えました。
こうして、森には多くの人が集まってくるようになります。絵を描く人、物語を綴る人、音楽を奏でる人。森は巨大なアトリエとなりました。そこでは、「創る」のセッションが行われ、日々、多くの新しい作品が生まれます。

過激なハンターショーに飽きてきていた人々は、森のアトリエに行くようになります。日々生まれる作品を楽しみ、時には自分もセッションに参加してみたり。

こうして、誰もが自由に「創る」ようになったのです。



noteという森は、巨大なアトリエですね。
次にどんなことを書くかはまだ決めてないですが、連鎖は続けたいなぁ、と思っています。


続く......多分ね。


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