『バーティミアス サマルカンドの秘宝』 感想

5年ぶりの再読。魔術師という特権階級になるための英才教育を受ける少年ナサニエルと、彼の奴隷として召喚された陽気で減らず口の妖霊バーティミアスが主人公だ。

社会人3年生になってから読むと、また違う切り口が見えてきた。ナサニエルが嫌悪し蹴落とそうとしている目上の大人たちは、普通の大人だということ。その普通には「欲深さ」や「いじわる」、「他人を出し抜く」などのネガティブなイメージを多く含む。だがそれは、彼らが自分の地位や生活を守り、より良くしたいという、むき出しでまっとうな生存欲から来るものだと私は思う。ナサニエルは、それを薄汚く感じて嫌がった。私も嫌がっていたのだ。

『バーティミアス』は魔法やアクション、個性的なキャラクターが描かれたとても楽しいファンタジー児童書だ。同時に、社会的な批判や価値観を揺さぶるような強い感情も描かれている。主人公たちを取り巻く社会情勢や文化をエッジを立てて描き、「魔法」というチョコスプレーで包む。だから楽しく、のめり込んで読んでしまうのだ。

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