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今日のごはんと本 産後の入院記録 DAY2

産後2日め。
体は回復傾向。
昨日、赤ちゃんの検査の折、とある異常がある可能性があると聞く。
そのときは落ち着いていたけど、夜中に不安が炸裂する。


赤ちゃんを預けたものの、結局5時には目が覚める。
体が痛くて動けない。
肩、脇、背中、腰がバキバキ。
渾身の力でいきんだことによる筋肉痛が、数日遅れで襲いかかってきた。
湯船につかりたいけど、産後は1ヶ月入れない。
やりすごすのみ。

一夜明けて、赤ちゃんの診断への不安が、ズガンと爆発する。
昨日は、平気だったんじゃなくて、実感がわいてなかったんだと、思い知らされる。
うー、とうめきながら、涙が止まらない。
大丈夫、大丈夫、と何度も言う。
大丈夫、大丈夫、は近年のわたしの口ぐせで、そう繰り返しているときは、大丈夫じゃなかったらどうしよう、と不安でたまらないときだという自覚はある。
不安と恐れの嵐。

でもこの、心がぐちゃぐちゃになるきつさを、抑え込んだり無視したりすると、きつさがずっとあとを引くこともわかっている。
ああ自分は今どうしようもなく怖いんだな、不安でたまらないんだな、そう認めて、嵐に翻弄されるがまま、感情の波が引くのをじっと待つしかない。

これを書きながら、陣痛をやりすごすのと同じやり方だな、と気づいたら、少し落ち着いてきた。
うまれたばかりの赤ちゃん。
出会えてうれしい。
顔を合わせてまだ3日めなのに、すでにわたしの人生に不可欠な存在。
大好き。
大丈夫、大丈夫、守る、守れる。

世界中で、子どもを持ったたくさんの人が、あらゆる不安と戦っている。
というか、子どもを持つこと以外にも、人間の一生は不安や危険でいっぱいだ。
誰だって、感情に翻弄されながら、踏ん張っている。
人間社会は、爆発する感情のかたまりだ。
とりあえず、赤ちゃんを預けているうちに、シャワーを浴びないと。

鼻をぶんとかみ、ぐちゃぐちゃの顔を袖で雑に拭いて、ベッドから起きる。
外はもう明るくなりはじめている。
大丈夫、大丈夫。
さっきよりも、しっかりと言える。

朝ごはん
鮭の塩焼き、きゅうりの酢の物、高野豆腐の煮物、白米、おみそ汁、オレンジジュース。

食って力をつけるぞ! ともりもり食べる。
入院中のごはん、毎回楽しみ。

ナースステーションに、預けていた赤ちゃんを迎えにいく。
すやすや寝ている。かわいい。

出産から分娩までつきっきりになってくださった助産師さんが見ていてくださって、いろいろとお話する。

今回、陣痛が途中で弱まってしまい、なかなか赤ちゃんがおりてこない状態が続いていたので、子宮口をかなり思いきり、そして何度も、ぐりぐり手で開かせたとのこと。
赤ちゃんの心拍が下がってきてしまっていたので、お医者さんの判断で、これまた力技で破水させたそう。
おかげで一気に赤ちゃんがおりはじめて、なんとか日をまたぐことなく分娩に至れたということだった。
あの激痛はやっぱりただごとじゃなかったのか! と納得。

お産の後半、赤ちゃんの心拍は下がっていたらしく、急いでくださったとのこと。
めちゃくちゃに痛かったけど、お産が長引いていたほうが、赤ちゃんとわたしもしんどかったので、処置してもらってよかった。
おかげで、生まれたあとは自然に泣いて呼吸できていて、蘇生の処置をせずにすみ、カンガルーケアもできた。

出産直後も思ったことだけど、今回は本当にたくさんの方々に応援してもらったお産だったのだなあ。
ひとりめは、自分の力を信じて自然に身を委ねた野生のお産で、今回はたくさんの人の力を借りた人情のお産、という印象。

ずっとわたしをさすってくれて、足湯マッサージしてくれて、声をかけ続けてくださった助産師さんに、改めてお礼をお伝えした。
助産師さんは、あのお産を乗り越えられたんだから、これからどんなことも乗り越えていけますよ、と言ってくれた。
お産のプロがそう言うくらい、痛みの激しい部類のお産だったのだなあ、と感じ入る。
そして、たしかにあれ以上しんどいことはそうそうないだろう、色々あってもわたしはなんとかやっていくだろう、ともすっと思えた。

助産師さんといろんな話をして、たくさん優しい励ましをもらって、心がほかほかになった。
前回はコロナ禍でそんな機会は皆無だったから、こんなふうにゆっくり話せてうれしい。

検査結果が心配だと話すと、自然に治る子がほとんどだし、赤ちゃんは元気だから、大丈夫ですよ、と励ましてくれた。
すごくほっとした。
自家発電の「大丈夫」より、誰かがくれる「大丈夫」のほうが、何倍も効く(もちろん逆もありうるだろうけど)。

ひとまず安心したのと同時に、生まれた子を前にして決して安心できない人が世界には大勢いるのだということを、絶対に忘れずにいようと思った。

部屋に赤ちゃんと戻り、ケアをしたあと授乳。
こくこくと飲んで、すやと寝た。
肩にあごをのせてげっぷさせながら、ぎゅっと抱きしめた。

おやつ
チーズケーキ。
母の差し入れのケーキをもりもりと食べる。
元気が出てきた!
おかんサンキュな! 的なやばいテンション。
産後のホルモン、まさに大暴れである。
感情のアップダウンが富士急ドドンパ。
乗ったことないし、もうなくなるそうだけど。

昼ごはん
親子丼、きつねうどん、豆苗とツナの酢の物、パイナップル。

ガンガン食べる。


おやつ

ヨーグルト、ホワイトチョコラスク。
食後すぐにおやつも食べる。
お腹が、というより、心が甘いものに飢えている。

なかなか泣き止まない赤ちゃん、ひたすらだっこして、やっと寝る。
ふわふわであったかい。
そのまま本をぱらぱらと読む。
集中して読めないけど、眺めるだけでほっとする。
しかし、そろそろいいかなと思ってコットに移すと、赤ちゃんはすぐに目をさまして泣き出した。
眠るのが難しいらしい。

足のむくみが最大に。
見たことない形になっていて、思わず写真を撮る。
漢方薬を処方してもらい、夫に圧着ソックスを差し入れしてもらう。
いろいろあるなあ、ほんと。

沐浴指導で、赤ちゃんの顔面を湯船につけてしまう。
ごめんね、ごめんね、と何度も謝る。
4年ぶりの沐浴、とても恐ろしい。
しかも前は夫にほぼまかせていたので、やり方をほとんど覚えていなかった。
手と腰が痛くて、途中で何度か休む。
赤ちゃんは、気持ちよさそうにしてくれていた。
せめてもの救い。

沐浴後の授乳で、やっと寝付く。
こっちも相当に眠い。


おやつ
いちごのババロア。
産院のおやつ。
3分で消えた。

夫と子どもが面会に来てくれる。
赤ちゃんは寝ているので、起きるのを待つ。
子ども、赤ちゃんに声をかけて、ふにふに触って、大興奮。
夢のような光景。

しばらく起きなさそうなので、子どもを誘って、別の階の自動販売機までジュースを買いにお出かけ。
抱き上げて、上の方の飲みもののボタンを押してもらう。
妊娠中ずっとできなかっただっこを、ようやくできてうれしい。
ほんのちょっとだけど、ふたりの時間が持ててよかった。
夫も一瞬でもひとりになれたらいいかなとも思い。
普段は避けている自動販売機のジュースを買えて、子どもはごきげん。
夫とわたしの分も買って、部屋でみんなで乾杯した。

夫に、助産師さんから聞いたことを話す。
夫からも、卵膜剥離や破水の処置のあと、お医者さんから聞いた話を教えてくれる(内診中は立ち合えず、その都度夫は廊下に出て待っていた)。

促進剤を最大まで使っていたため追加はできず、もし処置の効果がなく赤ちゃんがおりてこなかったら、帝王切開もありえたらしい。
夫は、かつて聞いたことのないわたしの悲鳴を廊下で聞き続けてたこともあり、さんざん痛い思いをした挙句に帝王切開になったら可哀想にもほどがある、と相当心配したそうだ。
どうにかこうにか経膣分娩でいけてよかったね、と改めてしみじみと言い合う。

赤ちゃんが目覚めたので授乳。
子ども、それを見守って満足したらしく、帰る、と宣言。
授乳しながら見送る。
来てくれてありがとう。
ふたりのいない夜は、やっぱりさみしい。

赤ちゃん、授乳後に寝てくれたので、わたしも少し寝る。
夕食が運ばれてくるまでの30分くらいだったけど、深く眠れて、気持ちが晴れた。


夜ごはん
タンドリーチキン、グリーンサラダ、ポトフ、白米、トマトスープ、ダックワース。

夕陽が窓から差し込むなか、ばりばりとごはんを食べる。
母の差し入れおやつをデザートにした。
満ち足りた。

おやつ
クッキー。


読んだ本
『暮らしのヒント集』
授乳中などにパラパラと。

『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』
読み進めるうちに赤ちゃんとの関わりについて書かれた章に入り、なんともタイムリー。



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