見出し画像

今日のごはんと本 出産当日の記録

出産予定日を超過したので、入院してバルーンを入れ、次の日陣痛促進剤を使うことに。
落ち着かない夜を過ごし、朝を迎える。
いざ出産!


6:45
起床。
枕元のナースコールから声がしてハッと起きる。
助産師さんから指示があり、荷物を持って陣痛室へ移動。
早朝の廊下は誰もいない。
壁全面がガラス張りになっていて、朝日がめいっぱい降ってくる。
気持ちのいい晴れの日。
陽射しがあったかい。


7:00

陣痛室へ。
アースカラーの落ち着いたベッド。
やわらかいブランケットの上に寝そべり、モニターしつつ内診。
指を入れられ子宮口の開き加減を確認されるこの内診は、うー、とつい声がもれる痛さ。
ひとりめのとき、内診をほぼせずに済んだのは、ラッキーだったんだなあ(入院時にすでに8センチ開いていて、すぐ分娩になった)。

昨日入れたバルーンは、まだしっかりはまっていて抜けておらず、水の量を増やす。
1時間様子をみて、促進剤を入れていくことに。

7:30
朝ごはん!
タラの粕漬け、白菜とにんじんのさっぱり煮、鶏肉と根菜の煮物、白米、おみそ汁、野菜ジュース。

朝から魚、うれしい。
おいしかった!
残さずぺろっと食べる。

夫にLINEで現状を共有。
夫も子どもの様子を伝えてくれる。
昨日はすぐにこてんと寝て、今朝もいつも通り元気だそう。
よかったよかった。

8:00
陣痛促進剤(オキシトシン)点滴開始
1時間に12mlのごく微量からスタート。
1時間ごとに量を増やしていく。
これから先は、モニターは基本つけっぱなし。

どれくらいで効果があるか、助産師さんに質問。
効く人はすぐにでも、効かない人は1日かけても効かない、効果はまちまち、とのこと。
そりゃそうか。
自然に軽い陣痛がきているし、今日がお誕生日になるかなと思います、と担当の助産師さんが言ってくれる。

緊張してます? と聞かれて、はい、と答える。
2度目とはいえ、それはそう。
怖さは常にある。
じわじわと、訪れることが決まっている痛みを待つほうが、いきなり陣痛が来るより、わたしは苦手みたいだ。
とにかく、頑張ろう。

8:30
投薬の量を6mlから12mlへ。
しばらくして、ずーんと腰の重みが増す。
陣痛、はじまったかも。

9:00
担当の助産師さん交替。
物腰やわらかな助産師さん。
みなさん素敵なかたばかりで、心がなごむ。

9:30
あー明確に痛いかも。
陣痛アプリで記録開始。
助産師さんが湯たんぽを持ってきてくれる。
ありがたい。
痛みの間隔、はかったら5分を切っている。
でも、痛さ自体はさほど、という感じ。
そんなことあるんだ。
子宮口が開いてくれてるといいんだけど。

夫に飲み物やおやつをLINEで依頼。
あぐらをかいた姿勢で、体の力、特にお尻の力を抜き、腰を丸め、手のひらを上に向け、息を吐くことを意識。
この方法がとてもよくて、落ち着いて痛みに向き合えた。

10:00
4分間隔。
痛みは耐えられるレベル。
話もできる。
湯たんぽを腰に当てる。
あったかくて癒される。

人間は、息を吸うことは反射的にできるけど、息を吐くことはそうでもないらしく、酸欠にならないためには(母体の酸素が不足すると、赤ちゃんも酸欠になって危険)吐くことを意識するのが大事、とYouTubeで予習した。
呼吸に集中する。
痛みがきたら、ベッドの上であぐらをかいて、息を細く細く吐く。
たぶんはたから見たら修行僧みたいな図なんだろうな。

促進剤追加。
バルーンはまだ取れない。
骨盤は開いてきてるけど、子宮口はまだみたい。
陣痛が順調なわりに、子宮口があまり開いてこないのはなぜなのか知りたくて、助産師さんに、陣痛の痛みはなぜ起こるのか、質問してみる。
助産師さん、ていねいに教えてくれる。
子宮が収縮することで骨盤がひらいて、圧迫された神経が痛むのらしい。
同時に、子宮が収縮すると赤ちゃんの頭が下に降りていき、子宮口が開いてくるらしい。
陣痛と子宮口の開きは、連動してるけど直結していないんだなあ。
勉強になった。

などと考えているうちに、痛みの間隔が4分を切る。
ゆっくり息を吐いて、力を抜いて、赤ちゃんに酸素を送るのを、繰り返す。
じょうずですよーと褒められる。
大人になるとほめられる機会が少ないので、なんでもうれしい。

陣痛の痛みは、わたしにとっては、苦しみを伴わない。
いや痛いんだけど。すごく痛いし、痛いことは嫌ではあるんだけど。
それでも、感情的な苦しみはない。
骨盤が広がっていっている、お産が進んでいる、もうすぐ子どもに会える、そう実感できる喜びを伴っている。

お手洗いが近くて、モニターをつけては外し、つけては外し、トイレとベッドを往復する。
膀胱は産道のそばにあって、おしっこがたまっていると赤ちゃんが出てきにくいらしい。
逆に考えると、膀胱がしょっちゅう圧迫されているということは、お腹のなかの人がおりてきている、ということでもある。
モニター着脱の手間を助産師さんにかけてしまうけど、どんどんトイレに行こう。

10:50
痛み、3分間隔を切る。
内診。
内診がばりむちゃ痛く、いててて、と言ってしまった。
陣痛のほうが、個人的にはしのげる痛み。
内診の結果、子宮口、3〜4センチ。
よし!

バルーン、子宮口から外れていたので、もう抜くことに。
太ももに張り付けていたテープをピリピリと剥がされる痛みが、陣痛や内診の鈍い痛みと違って鋭角な痛みで、新鮮みがあっていっそ気持ちよかった。

11時
夫が到着。
ペットボトルのストローをいそいそと取り付けてくれる。
助産師さんから現状共有。
この調子でいけば、15時くらいには会えるかも、とのこと。
うれしい。
夫、無力……とつぶやいていて面白い。


11:30
痛み、一段階強まる。
それでも振り返ってみると、まだこの頃は、スマホで『宝石の国』最終話の感想をあれこれ読み漁る余裕があった。

夫にも、体の使い方、意識の仕方がうまい、と褒められる。
子どものときから演劇やってたからかな、と言われたけど、役者としては全然体をうまく使えてなかったので、たぶん無関係。
30代前後でマネジメントの仕事をするようになって、マインドフルネスとか内観とかの考え方に触れたことのほうが大きい気がする。
転職する際に、マネジメント方面でキャリアを積むことは選ばず(どう考えても向いてるとは思えないし)、あくまで物書きで居続けられる環境を選び続けてきたものの、試行錯誤しながら必死に学んだことは、思わぬ形で役にたつ。自分に返ってくる。
人生のなかで出会うこと、味わうことは、なんだって無駄にはならないのだなあ。
それは自分の想定した通りの役に立ち方じゃ全然ないことが多いかもしれないけど、不意にこうして、いい風を吹かせてくれる。


12:00
昼ごはん!
鶏肉のパン粉焼き、ポテトとひき肉のグラタン、サラダ、白米、コンソメスープ、フルーツヨーグルト。

 

陣痛の隙間をぬって、ひと仕事終えた山賊のように、わっしょいわっしょい食べまくる。
お腹がぱんぱんの状態で産むのはきつそうなので、ひと口ずつ残し、残りは夫に食べてもらった。
15分で食べ終えていて、助産師さんがびっくりしていた。
食い意地がすごい。

12:30
内診。
赤ちゃん、まだ頭が遠そう。
刺激を与える処置(卵膜剥離)をしてもらう。
激痛。
うめきつつ、深呼吸に集中して、なんとかしのぐ。
子宮口は十分やわらかくなっている。
破水したら一気に進みそう、とのこと。
ずっとあぐらの姿勢を取っていたけど、内診で疲れたので、ちょっと横になっていることに。
痛み、さらに強くなる。
お腹のなかの人、がんばっている。

13:00
この日、ほかにもお産のかたがいた。
おとなりのかたは分娩室に移動したと助産師さんに聞き、がんばれ! と思う。
勝手に連帯感。
間隔、ちょっと遠のく?
足湯してくださるとのこと。

13:20
ベッドに腰掛けて足湯。
気持ちいい。
陣痛をうながすアロマを使っているそう。
痛みの間隔、1〜2分台に戻る。
足のむくみがはんぱない。

13:45
壁越しに元気な泣き声が聞こえてくる。
おとなりの陣痛室にいたかたの子が生まれた!
よかった!
かわいい声。


13:50
内診。
卵膜剥離。
ちなみに卵膜剥離とは、子宮口のまわりを指でグリグリとなぞり、子宮の下部に張り付いている卵膜(胎児と羊水と胎盤を包んでいる膜)を物理的にはがす処置のことらしい。

痛すぎて少し叫ぶ。
助産師さんのアドバイスで、触診のときに力を入れると少し楽になった。
なんとか剥がれたっぽい。
このまま続けるかどうか、あと1時間で判断。
うみたい。

15:00
内診。大変痛い。
助産師さんの人数が増えて、ざわついている。
このまま今日産んでしまうか、明日に持ち越すか、相談している模様。
ここまできたら、今日、産みたい。

と、そこでお医者さんが登場。
チェックのシャツにTシャツというラフな服装の男性。
眼鏡がおしゃれ。
あまりにラフに入ってこられたので、十中八九、産科医さんだとは思うけど、ワンチャン部屋を間違えた立ち合いのかたの可能性も? とちょっと疑った。

お医者さんは医療用ゴム手袋をさっとはめ、内診を開始。
身構えていたら急に、ライターやってるんだって? すごいねー、などの世間話を振られ、動揺。
ほかにできることがなかったんです……と息も切れ切れに返答する(事実だけど卑屈……)。
なぜ今その話題?? とふいをつかれて痛みから意識が逸れ、なんかよかった。
このお医者さん(あとで調べたら院長だった)の、ただものじゃない感。

しかし、内診、ものすごく痛い。しかも長い。
陣痛の波に合わせて(痛いときに触れるものらしい)お腹のなかを探られる。
長い。
痛すぎる。
うめく。
涙がだーだー勝手に流れる。
力を入れてごらん、と言われ、やってみると、少し痛みを相殺できた。
ぶつん、という感覚がお腹の内側で起こり、熱い水がじゃばっと溢れだす。
これが破水!
第一子のときは気づいたら破水してたので、新鮮。
一気にお産が進む。
どうやら医師の判断で、破水させて出産続行となったらしい。
先に言ってくれーと思ったものの、破水させますよーと言われたらガチガチに身構えただろうし、一長一短。

お医者さんに、もうほかに出産ないから思い切り叫んで大丈夫だよ、と言われ、気が抜けて、うー、あー、とうめきまくる。
このあたりで陣痛アプリの記録を放棄。

「痛くないときは、痛くない」と何度も心の中で唱える。
そう、陣痛は、波が来てるとき以外は、ほんとに痛くない。
数分でも数十秒でも、痛みのない時間に、体も心もしっかり休める。
今この瞬間だけに、全神経を傾ける。
(とはいえあとで振り返ると、内診ぐりぐりの痛みがあとを引いていて、陣痛がおさまっている間も、痛かった気がする)

15:30
痛み、最高潮に。
分娩室に移動。
ベッドを降りるときスリッパ履きそびれたけど、そんなのもうどうでもいい。
ついに分娩だ!
分娩台になんとか寝そべる。
ひとりめのときはLDRで、畳の上に布団をしいてお産をしたので、分娩台は初めて。

呼吸法を意識してここまできたけど、さすがに息が乱れてくる。
酸素マスクを装着される。
これも人生初。

お医者さんに、分娩台の横に設置されたバーをつかんで、ぼくの足思い切り蹴ってー、と言われる。
分娩台の足もとに乗せられたお医者さんのひざを、全力で蹴りながらいきむ。
アテンドがスムーズでわかりやすい、と、うなりながらも頭の芯は冷静なまま話を聞く。
お医者さんはいつのまにかシャツを脱いでTシャツ一枚に。
このラフさがベテランの余裕を醸していて、するっと信頼できた。

このあたりで分娩台が変形。
足場ができたので、足をそっちに移動させる。
上のほうのバーを握っていたけど、ここからは下の方にあるバーをつかむ。
お産の予習を思い出し、背中を丸め、目を閉じないようにして(目を閉じると力みすぎて、目のなかの血管が切れることがあるらしい)、視線を自分のまたのほうへ向ける(赤ちゃんが出てきやすい姿勢になる)。

痛い、息を吸って止める、いきむ、痛い、息を吸って止める、いきむ、どうにもならないくらい痛い、それでも息を吸って止める、渾身の力でいきむ。

痛くて叫びつつも、頭は妙にドライ。
もう会える、もう会える。
いきむ、いきむ、いきむ。

15:51
はりつめてひりつく腟口から、やわらかくてたしかなかたまりが、ずいんと外へ出た。
生まれた!
がんばった……!
すぐに泣き声が聞こえた。
かわいい。
痛み、一気にやわらぐ。
涙が止まらない。
えらいね、かわいいね、会えてうれしい、大好きよ。
取り急ぎ、抱っこする。
というか、タオルでくるまれた赤ちゃんを胸にのせてもらう。
やわらかくてあったかい。
ほっぺにキスする。
がんばったね、えらいね、会えてうれしい、大好き、などと言いまくったあと、助産師さんに預ける。

会陰は裂けずに無事! と助産師さんに聞いて喜ぶ。
会陰マッサージをしっかりした甲斐があった。
字面のインパクトもあいまって、陣痛より会陰切開に怯えていた。
ひとりめのときもマッサージをしていて、その効果あってかちょっと裂けただけだったので、縫わずに済んだ。
今回はノーダメージでうれしい。

それにしても分娩台、できれば避けたいなーと思っていたものの、使ってみると、なるほど合理的じゃん、とわかったのもよかった。
後産が控えているので、赤ちゃんは夫とともに、一旦別室へ。

16:00
後産が長引く。
なかなか胎盤が出てこない。
げんなり。
お腹を押されたり、またのなかを探られたりするけど、剥がれず。
地味に痛い。
痛いのはもういいよー。
出血も多めらしく、不安がよぎる。
今、絶対に死ねん。

しばらくあれこれしてもらうも、やっぱり胎盤が剥がれないため、出産の疲労を考慮して、麻酔で眠っている間に処置してもらうことに。
もうへろへろなので、ありがたい。
第一子のときは気づいたら胎盤も出ていたので、この体験も新鮮。
薬ですっと眠る。


17:00
自分の豪快ないびきで覚醒。
恥じる体力もなし。
胎盤の処置、無事に終わっていた。
出血、1000mlと多めだったので、血を止める点滴を打たれ、しばらく分娩台で休む。
生まれた子がコットに入って戻ってくる。
横になったまま、だっこする。
かわいい!
笑いながら泣く。

そこへ、ひとりめの子が面会にやってくる(両親が保育園からクリニックまで連れてきて夫に引き渡してくれた。両親たちはクリニックの決まりで、まだ面会できず)。
ふたりめの子を見た、ひとりめの子の第一声、「かわいい!」
きゅんとくる。
きみもべらぼうにかわいいよ。
夫と子どもたちとみんなでくっついて、写真を撮る。
ひとりめの子は、再び両親に預かってもらうことに。

18:00
夜ごはん
ブリの南蛮漬け、ほうれん草のごまあえ、手羽元と玉子とだいこんと厚揚げの煮物、白米、おみそ汁。


分娩台で休みながら、夫に見守られ、もりもり食べる。
しっかり完食。
やりきった!
ふたりめの子どもは、コットのなかでよく眠っている。
出血は無事に止まり、お手洗いにも行けたので、ゆっくり歩いて部屋に戻る。

コットと一体になったベビーカーに子どもを乗せて、押しながら廊下を歩く。
暮れかけの淡い青い光が差し込んでいる。
幸福。
わたしたちは生き延びた。

19:15
おやつ。
いちごとマスカルポーネのカップケーキ、クッキー。
夫にコンビニで買ってきてもらった。
デカフェのコーヒーを淹れ、ひと息つく。
最高においしいおやつとコーヒーだった。
ふたりめの子、すやすやと静かに眠り続けている。
お腹のなかではあんなにドコスコ動いてたのに。
呼吸を何度か確かめる。
頬をつつくと、ふにゃ、と声を出してまた寝る。

あー、つかれた! と言ったら、つかれたで済むことじゃないのでは、と夫につっこまれた。
それはそう。
前回よりも痛かったし、ハードに感じたけど、頭の奥は冴えたままで、冷静に出産を味わえた。
妊娠出産、満喫した!

これからがんばらなきゃなあ、お金とか、と夫が、まだ放心した顔でぽつりとつぶやいていた。
まじでそれな。
まあなんとかなるよ、と、ひとまず返した。
なんとかする。できるよ。
うれしさが溢れかえるなかで、そんな話もちょっとした。

19:30
夫が帰る。
ひとりめの子どもは両親の家にお泊まり予定。
ひとりで泊まるのは初なので、どうなるか。
ふたりめの子どもは、コットですやすや。
ベッドに寝転がり、本を手に取る。
どんなときでも、そばには本がある。
本がなくちゃ。

20:00
助産師さんが部屋にやってきて、検診。
微熱はあるけど下がってきた。
血圧も落ち着く。
出血もおさまってきた。
子宮復古も順調とのこと。

お試しで、ふたりめの子、初授乳。
ぱくっと吸いつき、ぐいぐい飲みはじめる。
上手!
どこかで習ったん?
しっかり左右10分ずつ飲ませて、ゆっくり口を離す。
なかなか離れようとしないので、手間取った。
手間取ることも、とてもうれしい。
これからたくさん飲んでくれ。
今夜はクリニックに預かってもらう。

20:30
おやつ。
プリン。
夫が買ってきてくれたおやつをさらに食べる。
うまー。
あっという間に食べきる。
ほうじ茶とレモンスカッシュも飲む。

洗面所でパジャマをめくり、鏡の前で、突き出たままだるんと下がったお腹を撫でた。
妊娠してから今日この日まで。
わたしの子宮、よくがんばった。
わたしの股、よくがんばった。
わたしの体、本当に本当によくがんばった。
臓器、肉、骨。自分の身体のすべてが今は愛おしい。
ありがとう、お疲れさま。

夫からLINEがあり、実家で預かってもらっていたひとりめの子が帰ると言いだし、父に送られてうちへ帰ってくるとのこと。
やっぱりそうなるか。
夫も、本当におつかれさま。

お産するにあたり、まわりの人に頼りすぎず、自分が産むんだ、その役割を120%で引き受けるんだ、そうすれば痛みを受けいれて、乗り越えられる、と覚悟を決めていた。
ひとりめの子どものお産がコロナ禍の緊急事態宣言発令直後で、立ち合いも面会もできず、ひとりで臨むしかなかったので、その経験から、そんなふうに考えていたのだ。
でも今回のお産は、いい意味で、自分ひとりでやりきるんだと思い詰めすぎなくてもいいんだな、と最終的に思えた。
世界でもっとも信頼する人である夫が、出産にフルで立ち合ってくれて、わたしの腰をずっと撫でてあたため、一緒に呼吸を合わせてくれた。
助産師さんたちが、休まずに腰をもみ、さすり、励まし続けてくれた。
お医者さんが冷静かつ余裕ある態度で、分娩の道しるべになってくれた。
大勢の人が、骨身を惜しまず、助けてくれた。
本当にありがたかった。
出産はほかの誰でもない自分の仕事、医療に丸投げせずに、自分主体でお産の過程を進めていく、すべてを引き受ける、そう自分に言い聞かせ続けてきたので、落ち着いて出産に臨めた。
だからこそ、そんなわたしとお腹のなかの人に、とことん並走してくれた夫、労を惜しまず助けの手をさしのべてくれた人たちの、親切さ、優しさ、あたたかさが、骨身にしみた。

それから、全身全霊でがんばってこの世に生まれてきてくれた赤ちゃんへの、感謝が溢れて尽きない。
みなさん、ありがとうございました。
めちゃくちゃ痛かったけど、すごくいいお産だった。
めちゃくちゃ、めちゃくちゃ痛かったけど!!!
それでもわたしにとっては、楽しくて明るい、人生に訪れてくれてよかった出来事だった。

読んだ本
『暮らしのヒント集』
陣痛室にてパラパラとめくる。
ちまちま読めるからちょうどよかった。
しかし、午後からは読む余裕がなくなった。

『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』
出産後の夜、すべてを終えて、ベッドに寝ころんで、続きを読む。
読むの今かよ、という気持ちと、今こそ、という気持ちが半々。

なかなか寝付けず、音楽を聴きながら本をゆるゆると読み、23時過ぎにやっと眠る。



この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切: