浸る。 【føroyskt #1】
フェロー語の勉強を始めました。
■学習メニューを決めよう
StoryLearning Method
前回でも述べたように,今回のフェロー語学習は基本的に独学。教材に手を出す前に,まず学習メニューを決める必要がある。
学習メニューを作るうえで,Olly Richards さんの「新しい言語をストーリー付きで習う方法」という動画を参考にした。これは語学系YouTuberの動画を見漁っていた時にたまたま見つけた動画だが,なかなか役に立ちそう。
本人のウェブサイトの情報によると,Olly さんはマルチリンガルにして語学教師兼作家。これまで30以上の言語で本を執筆した経験もある。
この動画で Olly さんは,子供が生活の中の文脈や絵本の読み聞かせで言葉を覚えるのと同じように,新しい言語はストーリーを通じて学習した方が断然定着が早いと説いており,語学でそれを実現するメソッドとして,次の3段階のサイクルを繰り返す "StoryLearning Method" を紹介している。
Immerse(浸る。文章や音声をひたすら浴びて,言語の音や雰囲気に自分を順応させ,大まかなストーリーを理解する。この時点でまだ文法解説・訳文に頼らないことで,教えられるより先に単語の意味や文法規則に疑問を持つことができる。一番時間をかけて行う。)
Learn(学ぶ。疑問点を教科書や辞書で調べる。この段階を踏んでストーリーの流れを理解することで,ストーリーと一緒に記憶を定着させることができる。)
Activate(活かす。言葉は習っただけではすぐに使いこなせない。自分の持ちうる全ての知識を活かしてストーリーを作る練習をする。作文,会話,読んだ文章の要約など。自信がついてきたら実生活で使ってみる。)
話が若干逸れるが,僕がこの動画を見ていて一つ思い出したことがある。
僕は若い時から英語の成績だけは飛び抜けて高く,センター試験の英語の正答率は9割弱,大学3年で初めて受けたTOEIC L&Rの成績も935点という高得点を叩き出した。
自分がなぜ今までこれほどに英語に長けてきたのかといえば,ディズニー映画やセサミストリートを幼少の頃に英語で頻繁に観ていたのが一番の要因ではないかと思っている。もちろんまだ幼かったので言葉の意味も完全には理解していなかったが,それでもストーリーを通じて英語に浸っていたので,ある程度の文脈や英語の発音,簡単な単語の意味くらいは理解できていた。特にディズニー映画はテーマソングが付き物だし,セサミストリートでは道徳も学べるから,それらがなおさら定着を手助けしていたのだろう。
実体験と照らし合わせてみても,僕はこれまでストーリーを通じて英語を勝手に学んでいたのだと気付かされる。
ワタクシの学習メニュー
ということで,上記のメソッドを参考にして自分が作った学習メニューがこちら。
Immerse.
テキスト本文をノートに写し,単語の一つ一つを聞き取って発音できるようになるまで,ひたすら音声を聴いて音読しまくる。英訳・和訳は書き込まない。(文法セクションでは訳を書いてもいいが,その場合は訳語をイラストで代用するなどして極力避ける。)
本文をじっくり眺めて,単語の意味や文法などについて推測してみる。疑問も残しておく。
空き時間にフェロー語の動画などを見て音声に慣れる。
Learn.
教科書の訳文や文法を確認して,推測の補強・修正をしたり,疑問点について調査したりする。
文脈や文法を理解したうえで本文の傾聴・音読を繰り返す。
Activate.
練習問題を解く。
習った単語と文法で色々な表現を試してみる。(知人にフェロー語を話せる人がいないので会話の練習は難しそうだが。)
Repeat.
学習のペースについてだが,これは大学での学業の忙しさに左右されるので,いつまでに何ページ進めるとかいった具体的な目標を設定するのは難しいと考えられる。したがって,テキストを使った学習は時間を見つけて行う程度に留めておいて,その代わり少なくとも毎日1回くらいはフェロー語の動画を見たりラジオ番組を聞いたりするなど,柔軟な学習をしようと思う。
準備が整ったところで早速テキストを使って学習していこう。
■アルファベットを覚えよう
ð。
最初のステップは本文をノートに書き写して音読すること。
本文は,スコットランド出身の Claire が家族に会いにフェロー諸島を訪れ,空港発のバスに乗っている場面から始まる。
しかし,ストーリーも何も,
知らない文字がある!
("æ" とか "ø" とか "ð" とか。いまいち書き方も分かっていなかったので,たまに誤字って修正している。)発音しない文字がある!
("g" とか "ð" とか。特に "g" は発音する時もあればしない時もある。)発音がコロコロ変わっている!
(例えば画像中の "Kann" は「カン」と発音するのに, "upptikið" は「ウプティチ」のように発音するし, "skilji" では「シリィ」となる。)
いきなりフェロー語の文章に出会うので戸惑うことだらけ。訳文を読んでいないので話の内容も全く分からない。しかし,発音に慣れていくしかない。今はとりあえず音声を聴きながら音読する練習を繰り返す。
まずはフェロー語の発音の海に我が身を沈める。
ある程度繰り返して疑問が沢山浮かんだところで,次のセクションに取り掛かる。
アルファベット
どんな語学でも必ず初めに習うのが,文字の名前と発音である。
フェロー語にはアルファベットが29種類ある。特に子音などはドイツ語アルファベットなどと似たような名前のものが多い。しかし他の言語では見られないような文字も含まれているので,幾つか明らかに異なる点もある。
アルファベットと発音について,テキスト以外にOmniglotやWikipediaでも調べてみた。ざっとまとめてみると以下の通り。
母音字には長い発音と短い発音がある。長い発音はアルファベットの名前とほぼ同じ。
母音字には文章中で全く同じ発音をするペアがある。その場合は "fyrra", "seinna" をそれぞれの名前の頭に付けて区別される。
A & Æ …長い発音は「エア」。短い発音は「ア」。
I & Y …長い発音と短い発音は,英語の "seat" と "sit" の関係に似ている。フェロー語では "Y" は母音字という括り。
Í & Ý …長い発音は「ウイ」。短い母音は「ウィ」。
Á …長い発音は「オア」。短い発音はノルウェー語の "å" とほぼ同じで,口を開いた「オ」。
Ó …長い発音は「オウ」。短い発音はフランス語の "œ" とほぼ同じで,口を丸く広げた「エ」。
Ú …長い発音は「エュ」。短い発音はドイツ語の "ü" を緩めたような発音で,口を尖らせた「エ」。
Ø …ドイツ語の "ö" とほぼ同じで,口をすぼめた「エー」。
Ð …子音字。名前はあるが,古代の綴りの名残でしかないためか,基本的に発音されない。同じ文字を持つアイスランド語ではしっかり発音する。
H …子音字。フランス語やドイツ語では黙字になりがちだが,フェロー語では英語同様に明確に発音される。
J …子音字。ドイツ語やオランダ語と同じでヤ行の音を表す。
R …子音字。英語の "r" に似ていなくもないが,舌先は反らさず上歯茎に近づけて発音する。ドイツ語やデンマーク語の "r" のように喉を鳴らす必要はない。
C, Q, W, X, Z は海外の名称を表す場合にのみ用いられる。
テキストにアルファベットの読み方の音声も付属していたので,自分の口を動かしながら正しい発音を体に叩き込んでいく。特にフェロー語の母音は英語と同じくらいに細かく区別されているため注意が必要。
ここまで調べた後で,文字の発音に注意してもう一度本文を読み返す。
■視界が開けてきた。
繰り返し読んでいるうち,少なくとも母音の発音にはかなり一貫性があることに気づく。これは英語とは大きく違う点である。英語は外来語の受け入れや大母音推移の所為で発音の一貫性を失ってしまっていて,それが多くの英語学習者を悩ませてきた。
それ以外の発音ルールについてはまだ十分に理解できていないけれども,なんとなく法則が見えてくる。少しずつではあるが,フェロー語らしい音の何たるかを獲得している実感がある。
"hvaðani", "hvussu" などの "hv" は必ず「クヴ」と発音される。
語末の "g" は必ず黙字になる。
"ei" は必ず「アイ」と発音する。
"oy" は必ず「オイ」と発音する。
それから,人名や地名などの固有名詞があるお陰で,話の内容や言葉の意味も何となく推測できる。
"Eg eri úr …" という文章の後ろには地名があるから,これは自分の出身を紹介する文。
"Eg eiti …" という文章の後ろには自分の名前があるから,これは自分の名前を紹介する文。
ということは,Claire と Jógvan は今初めて知り合った。
"Góðan dagin" は「初めまして」という意味の挨拶。
自分のことを説明するときに現れる "eg" は「私」という意味。
相手のことを質問するときに現れる "tú" は「あなた」という意味。
ストーリーをもとに学習しているので,何かが一つ分かった瞬間にストーリーも同時に理解できるようになり,自分の視界が一気に開けるような快感が脳内に走る。
語学って,教え込まれるよりも独学の方が案外面白いのでは?
と思った。
まだ1ページしか進んでないのだが。
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