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バズ・ストーリーは突然に?~Twitter×美容マーケティングの勝ち筋②~韓国コスメ『innisfree ノーセバムミネラルパウダー』

こんにちは、MimiTV編集部の添田裕女です。今回は、Twitterバズストーリー第2話をお届けします。これは2019年下半期で、「Twitterで話題になった(=バズった)コスメたち」の、バズの秘密を紐といていく企画です。

「モノを売るためには、SNSマーケティングが不可欠「バズる企画をお願いします!」と言われているものの、「どうやってバズらせればいいの?」「バズるだけで本当にモノが売れるの?」なんて疑問に思われている、全てのマーケターの皆様にお届けします。

前回のnoteはこちらから

前回のnoteハイライト
❶ここ最近「Twitterでバズったらコスメが売れる」現象が発生している。
❷背景には、Instagramとの違いである「拡散性」「検索機能」が影響。またTwitter独自の「美容垢」と呼ばれる美容情報の発信に特化したTwitterアカウントも影響している。
❸「バズツイート」と呼ばれる拡散されたツイートは、規模感により「プチバズ(500~5,000RT)」「ミディバズ(5,000~10,000RT)」「グランバズ(10,000RT~)」と判定できる。
❹バズツイートの中でも「グランバズ(10,000RT~)」は、有名美容垢が生み出すことが多いが、フォロワーが数百人くらいの美容垢や普段美容の発信をしない有名ツイッタラーによる発信であることもまれにある。
❺バズったら必ずしも売れるわけではない。バズによって「評判形成→拡散→評判定着」の3ステップを形成することでコスメが売れるようになる。
❻バズコスメは「モノ・ヒト・ワダイ」の3軸でバズった理由を分析できる。

「評判形成→拡散→評判定着」の3ステップ&バズツイートの大きさの定義はバズストーリーを読み解く上でかなり重要です!ぜひ詳しくはぜひ前述のnoteを読んで欲しいのですが、簡単にまとめた画像を貼っておきます。

バズ種類&評判psd

今回は、「2019年下半期 MimiTVバズコスメ大賞※」では3位に輝き、夏に大活躍したであろう、「innisfree(イニスフリー) ノーセバム ミネラルパウダー」のバズのついて分析していきます。

※2019年6月〜2019年11月に「Twitter上で話題になった(=バズった)コスメ」のこと。MimiTV編集部の精鋭美容オタクメンバーと、厳選されたMimiTVユーザー150名(フォロワーが100名以上で、日頃からアクティブに美容情報の収集・発信を行っている美容垢が対象)の投票で決定。発売時期は問わず、限定品は除く

バズコスメ受賞アイテムは以下の通りです。

【2019年下半期バズコスメ大賞】
大賞 excel(エクセル) | ネイルポリッシュ N
2位 MAJOLICA MAJORCA(マジョリカ マジョルカ) | シャドーカスタマイズ
3位 innisfree(イニスフリー) | ノーセバム ミネラルパウダー
4位 CANMAKE(キャンメイク) | メルティ—ルミナスルージュ
5位 MISSHA(ミシャ) | ミシャ グリッタープリズム シャドウ
6位 CEZANNE(セザンヌ) | セザンヌ パールグロウチーク
7位 NARS(ナーズ) | ナチュラルラディアント ロングウェア クッションファンデーション
8位 BioreUV(ビオレUV) | アスリズム スキンプロテクトエッセンス
9位 REVLON(レブロン) | レブロン キス シュガー スクラブ
10位 hince(ヒンス) | トゥルーディメンショングロウチーク

バズコスメ大賞の特設ページはこちら。

バズストーリー2

▼目次
■バズったのは…innisfree(イニスフリー)ノーセバム ミネラルパウダー
■バズプロセス
┗<評判形成期>:韓国好きの間で認知される
┗<拡散期>:パワーワード×季節性
┗<評判定着期>:メイク崩れ防止の鉄板品という評判獲得
■バズの立役者 『ビューティーアイコン』と美容垢というスプレッダー
■なぜ
innisfree(イニスフリー)ノーセバム ミネラルパウダーはバズったのか?

■バズったのは…innisfree(イニスフリー)ノーセバム ミネラルパウダー

画像1

公式サイトより引用

innisfree(イニスフリー)とは、アモーレパシフィックの化粧品ブランド。同社の代表ブランドはETUDE HOUSE(エチュードハウス)やIOPE(アイオペ)など。韓国最大の化粧品会社です。

ブランドコンセプトは「Natural Benefits from JEJU island(チェジュ島の自然の恵みをそのままに。)」

ブランド名“イニスフリー”は、ウィリアム・バトラー・イェイツの詩「innisfree」に由来し、「肌に休息を与える島」を意味しています。(中略)チェジュ島の豊かな自然を表現し、すこやかな美しさをお客様にお届けすることを目的にブランドを展開しています。。 ―innisfree公式ブランドサイトより引用

自然派コスメながら、お手頃な価格でミレニアル世代にウケている韓国コスメです。スキンケア~メイクアップまでを取りそろえており、各分野で大人気のアイテムを持っています。

ノーセバム ミネラルパウダーは、フェイスパウダーで、メイクの仕上げに顔に塗るお粉です。皮脂をコントロールしてサラサラ肌を保ちます。今回のアンケートにて「実際に購入し最も気に入ったアイテム」として回答した人が一番多く、その実力はユーザーのお墨付き。MimiTV内でも愛用者が多いです。

MimiTVユーザーからのコメント
「イニスフリーのパウダーはサイズが小さくて持ち運びに便利な所が良かったです!付けすぎると少し乾燥してしまうので、鼻などテカリやすい部分のお直し用に使うことが多いです。前髪がベタついてしまった時にパフで付けて手ぐしで馴染ませるとサラサラになるので重宝しています。」
–amo🍒 さん@Rapull24

「オイリー肌でTゾーンや頬あたりがすぐにテカる私は本当に重宝しています。全顔に使うとマットになり過ぎる&乾燥するので、ファンデのあとにテカりやすい部分にだけ乗せていますが、本当にかなり皮脂が軽減されます。
テカってもくずれまでいかず、ツヤといえる程度。加えてかなりの敏感肌なので、ベースメイクをなるべくミネラルコスメにしようと一新中なので、その点に関しても、イニスフリーは非常に信頼がおけて安心して使えており、どのミネラルファンデとも相性が良く、これによって肌が荒れた事はありません。その上この価格にこのサイズ感は本当に使いやすいです。イニスフリーの店舗が日本に出来てからますます買いやすくなったのでリピ決定です。」
–ゆりみあ🍓冬ビビファッグレ顔エレ さん @Mia_Lily9

ユーザーからも熱いコメントがたくさん集まりました。

■バズプロセス

こちらの図は、Twitter上で「innisfree (イニスフリー) ノーセバム ミネラルパウダー」について、Twitter上で呟かれた回数の増減をグラフで表したものです。※リツイートも含みます

innisfreeバズ分析

こちらのグラフを元に、評判形成・拡散・評判定着のプロセスを説明していきます。

<1>評判形成期(~2019年6月)」:韓国好きの間で認知される

商品の名前が知られるようになったのは、2018年の秋ごろ。日韓合同オーディション番組『PRODUCE48※』から誕生したガールズグループ、IZ*ONE(アイズワン)のメンバー入りを果たしたHKT48の宮脇咲良さんが、VOGUE GIRL『人気アイドルに学ぶ!崩れないメイクTIPS』という企画内のインタビューにて、自身の愛用品として紹介しました。

※『PRODUCE48』とは、韓国の音楽専門チャンネルMnet企画・AKB48グループ協力による日韓同時放送の公開オーディション番組のこと。Mnet並びにBSスカパー!で2018年6月15日から2018年8月31日まで放送。前身の『PRODUCE101』番組にてデビューしたアイドルグループも人気を獲得、韓国内では社会現象を巻き起こした。オーディション落選者の中からも、その後別ユニットとしてデビューする者が現れるなど、多くのスターを輩出している。『PRODUCE48』には、AKB48グループ所属者39人、韓国側は中国籍、米国出身者を含む57人の計96名が参加し、最終合格者12人(うち48グループからは3名)がアイドルグループ「IZ*ONE(アイズワン」としてデビュー。

「本当にメイクを崩したくないコンサートのときは、イニスフリーのノーセバムパウダーを重ねています。『PRODUCE48』で韓国の練習生がみんな使っていたので、気になってゲットしてみたらとっても良くて。1,000円以下で購入できるプチプライスなのに、汗や皮脂に強い優れものです!」汗をかいたあと前髪につけると、即サラサラヘアに戻るそうでレッスン中も欠かせないのだとか。―引用元 :VOGUE GIRL『こだわりの色選びに注目! 人気アイドルが教える崩れないメイク。【Vol.3 HKT48 宮脇咲良】』


インタビューがきっかけで「イニスフリー ノーセバムミネラルパウダー」の存在がコアなK-Popファンや、美容好きの間で知られるようになり、Twitter上でも「優秀なメイク崩れ防止パウダー」という投稿が見られるようになります。

<2>拡散期(2019年6月~2019年9月):パワーワード×季節性

有名美容垢(※)によって「宮脇咲良ちゃんが愛用している」というパワーワードで発信されたアイテムの魅力が、Twitter上で爆発的に拡散されました。中には1.7万RTを超えるグラン(大)バズツイートも見られます。PRODUCE48の放送が終了し、VOGUE GIRLの記事が出てから約1年後のタイミングで大きなバズが起きたのは、宮脇咲良さんの影響力に、「季節」という要素が掛け合わされたからではないかと考えています。

※美容垢…美容情報の発信・収集に特化したTwitterユーザーのこと。フォロワーを万単位で抱え、影響力を持つ有名美容垢も存在する。詳しくは前のnoteを参照してください。

6月~9月はちょうど梅雨や夏の高温多湿で、肌質に関係なく誰しもがメイク崩れに悩まされる時期。そんな中で、激しく歌い踊りながらも、決して髪型とメイクが崩れない人気アイドルの秘密兵器は、誰にとっても魅力的に見えたのではないでしょうか。750円(税抜)と、美容関心度が高くない層にとって手が出しやすい価格であったこともバズの要因として大きいです。

MimiTVが8月に実施したキャンペーン企画でも、1.9万RTを記録。数々のキャンペーンの中でも最大級の反響があり、話題になっていることを実感しました。

<3>評判定着期(2019年10月~):メイク崩れ防止の鉄板という評判獲得

9月以降は気温と湿度の高さも落ち着くため、拡散期の勢いは落ち着きますが、マット肌派(さらさら・ふわふわなマシュマロのような質感の肌を好む人のこと)や皮脂によるテカりに悩まされている人から、「普段の愛用品」として紹介されるようになります。美容関心層でなくてもメイク崩れに悩まされる時期に「崩れない」パウダーとして認知を得たことで、「メイク崩れ防止の鉄板品」という評判が定着しました。

■バズの立役者:『ビューティーアイコン』と美容垢というスプレッダー

innisfree ノーセバム ミネラルパウダーを誰がバズらせたのか。バズツイート自体を生み出したのは美容垢ですが、このアイテムのバズを考える上での最重要人物は宮脇咲良さんという「ビューティーアイコン」です。

ビューティーアイコンとは、ファンからの「憧れ」や「共感」を得ている、美容に精通している人のこと。美容家や美容雑誌によく登場する芸能人を指すことが多いです。

宮脇さんは元々、HKT48の主力メンバー。メディア露出が多く知名度は高いものの、「日本のアイドル」つまり男性ウケする存在として認識されており、現在のようなビューティーアイコンとしてのポジションを確立してはいませんでした。『PRODUCE48』への参加により、世界に通用するアーティストになるためストイックに努力をする姿勢が注目されるようになります。IZ*ONEデビューの前後で、ファッションやメイク、髪型を大幅に変更し、10代20代女性から見て、より洗練されたルックスに進化したことで人気や影響力を確立しました。(最近だと、同じく日本人の最終合格者でAKB48チーム8出身の本田仁美さんの垢抜けぶりも話題です)

そんな宮脇咲良さんの愛用品というパワーワードを広めたのが美容垢です。誰もがメイク崩れに悩む夏という季節性もあいまって、大きなバズを獲得することになりました。innisfree(イニスフリー) ノーセバムミネラルパウダーの評判定着においては、多くの美容垢は情報発信源ではなく、「スプレッダー(拡散者)」という役割を果たしていたと言えます。

余談ですが、男性ウケの象徴的な存在から女性たちのビューティーアイコンへと変化する例としては、吉田朱里さんや田中みな実さんがあげられます。

吉田朱里さんは、宮脇さん同様48グループ所属ながら『女子力おばけ』と呼ばれるほどの美容マニアっぷりをYouTubeで発信し人気を獲得。今やコスメブランド「B IDOL」をプロデュースするほどの影響力をもっています。

田中みな実さんは、TBSアナウンサー時代は”ぶりっ子キャラの女子アナ”として知られていましたが、ストイックな美容への姿勢や、自虐的な恋愛ネタなどが憧れや共感を呼び、同年代の女性たちに支持されるようになりました。フリーへ転身されてからも、メディアで見ない日はないくらいの大活躍ぶりで、Amazon Prime Videoで配信中の美容番組『BEAUTY THE BIBLE』ではMCを務めるなど、ビューティーアイコンとして広く知られるようになります。今美容業界が最も注目している人物の一人であることは間違いないでしょう。

『BEAUTY THE BIBLE』の公式Instagramアカウント。SNSから番組への導線づくりが上手だなあと思います。(MimiTV編集部でもかなり話題です)

■まとめ:なぜ、innisfreeのパウダーはTwitterでバズったのか?

今までの流れから、excel ネイルポリッシュ Nを、モノ(商品性) / ヒト(情報発信源)/ワダイ(話題性)の3要素に分解してみます。

innisfreeバズ要素

・モノ:韓国で若年層に人気のブランドの優秀アイテム

・ヒト:ここがちょっと複雑。発信源は、宮脇咲良さんという強力なビューティーアイコンで、『宮脇さんの愛用品で、本当にメイクが崩れない」アイテムであることを美容垢が発信することで、美容好きTwitterユーザーの間で認知が広がった

・ワダイ:大人気アイドルの愛用するほどの機能性。誰もが汗や皮脂によるメイク崩れに悩む夏に、「塗るあぶらとり紙」と呼ばれ拡散されたことで話題を呼んだ

韓国好きの間で強い影響力のあるビューティーアイコンの愛用品として話題になり、Twitterの投稿によって、アイテムの需要が最も高まる高温多湿な時期にバズが生まれ、機能性に関する話題が継続的に続いたことで、innisfree(イニスフリー) ノーセバム ミネラルパウダーは、バズコスメの仲間入りを果たしたと言えます。

今回のバズストーリーは以上となります。最終回となる3回目は、今年売れに売れた日焼け止め「BioreUV(ビオレUV) アスリズム スキンプロテクトエッセンス」のバズの秘密に迫ります。

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