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思ってたのと違う

息子の定期テストが近いです。
子どものテスト前というのは親もなんだかソワソワするもので。
「私もなんらかのお役にたちたい!」と思い、頼まれてもいないのに毎度漢字の問題を作ったりしています。

今回もせっせとテスト範囲の漢字を調べ、問題を自作しておりました。
息子は現在中学2年生。
中2ともなれば、習う漢字も難易度高し。
書くのはもちろん難しいのですが、なんとか書けたとしても送りがなを間違えそう。
読みも一度頭に入っていないと読めない可能性大。

いつもは書き取り用のテストだけ作っていた私もこの難しさにぼーっとしてきたので、
「楽しみながら勉強にもなって、気づけば漢字を覚えてました」みたいな方法はないものかと考えました。

結果、
「テスト範囲の漢字が沢山出てくる小説」を自分で書いてみることにしました。

その小説をテスト勉強に疲れた息子にパッと渡して、
「ちょっと小説を書いてみたんだ。これを読んで息抜きでもしない?」と読ませ、
それを読んで楽しんだ息子に
「実はその小説の中にはテスト範囲の漢字が沢山入っていたんだよ!それが読めたということはもう読みはバッチリだね!」と種明かしをする。
「さすが、ママ!面白い小説を読んだだけなのに知らない間に漢字のテスト勉強もできていたなんて最高!天才だね!」と、息子が感動して母を絶賛。
そうなったら最高!!
ナイスな妄想で胸がいっぱいになった私は
「よし!それでいこう!!」と小説を書き始めました。

テスト範囲の漢字をできるだけ多く使って、読んだり覚えたりできるように。
日曜日の昼下がり。
昼食後で眠くなりながらも頑張って考えて書きましたよ。
テスト範囲の漢字って大体バラバラですからね、それを散りばめて即興で書いたにしてはなかなかの出来!(だと自分では思いました)
中学生男子に読ませるには、ちょっとユーモアもまじっている方が良いと思って、
話の流れも少年マンガっぽく!

ちょうどそこにテスト勉強に疲れた息子が転がっているではありませんか!
私は意気揚々と出来上がったばかりの手書きの小説を渡しました。
ノートを3枚やぶいて書いた小説。

それがこれです↓

ある日、友人のKから手紙が届いた。
彼は僕の親友で唯一無二の存在だ。手紙にはこう書かれていた。

親戚のおじさんに聞いた話なんだけど、学校に徳川埋蔵金眠っているらしいんだ。財宝等の他にも眠っているという。古い懐中時計も!それを僕と君とで一緒に探さないか?〉

すごく面白そうだったので、僕はKと学校に眠る徳川埋蔵金探しに行くことにした。
待ち合わせ場所に到着したら、Kのほかに宇宙人と叶姉妹がいた。
筋肉ムキムキの宇宙人と叶姉妹
Kが言うには
宇宙人は月面の探査に慣れているし、埋蔵金がどこに埋まっているかにも詳しいと思うんだ。その智恵を貸してもらおう。情報はあればあるだけ良いし、叶姉妹はお金持ちだから、金目の物のありかを見つけだせそうだろ!」
宇宙人と叶姉妹とKと僕。
仲間や情報を得たかったKの気持ちもわかるが、はたから見ると怪しい組織だ。
「セッカクダカラキネンサツエイシタイ」
宇宙人が急に喋った。意外にも友好的な宇宙人にほっこりしてみんなで記念写真を撮った。
「さぁ!出発だ!」
Kがにヤル気満々の声をあげると、突然、激しい雨が降りだした。
「こんなに雨が降っているんじゃどうしようもないわ。ちょっと休憩していきましょう。すぐそこに渋くておいしいおを出すお店があるの。すごく癒やされる空間よ」
姉妹の姉がそう提案した。
まだ集合して記念撮影をしただけだというのにいきなり休憩かよと思ったが、これだけ激しい雨では仕方ない。
みんなで歩いて店へと向かう。
途中、宇宙人が犬の糞を踏んだと言って騒いでいたが、無視して店へと急いだ。
姉妹の姉がすすめる店に到着すると、Kがいち早く5人分の席を確保した。
みんなで着席し、店員さんを呼ぶ姉妹の妹。てっきり渋くておいしいおを注文するのかと思ったら、
「私今日が誕生日なんです。だからみんなでケーキでお祝いしてくれませんか」と言い出した。
すると店員さんが
誕生日にとても残酷な話なのですが、今うちの店にはケーキもおもないんです。あるのはこれだけです」と冷凍みかんを差し出した。カチカチの冷凍みかんがテーブルに山盛り
みんなで冷凍みかんを食べる。
雨で濡れた体に冷凍みかんを食べすぎて僕たちは凍えた。
そこで宇宙人が
「なんだかとても眠くなってきた。もう星に帰って眠りたい」と言い出した。
宇宙人は、自分の分の冷凍みかん代にと小銭をKに渡して帰っていった。
「せっかくの誕生日なのに、冷凍みかんだけ出されても……」と、叶姉妹の妹が渋い表情を浮かべながら発したと思ったら突然Kのを殴った。
Kは最初のうちは我慢していたが、
「喧嘩はいけないよ」と、僕が慌てて喧嘩の仲裁に入ったところで、を真っ赤に染めて、机や椅子をに向かって放り投げた。
ガラスがわれる。気持ちが爆発したらしい。

僕と叶姉妹の姉は店員さんには謝りながら割れたガラスや転がった机で荒れた店内をきれいに掃除した。
この店には休憩癒やされに来たはずなのに誰も何も癒やされていない。

僕たちは店を出た。
雨はもう上がっていた。
そこに僕の部活の顧問の先生が自転車で通りかかり、僕に気づくと
「ちょうどよかった。ここらで宇宙人を見なかったか?は150センチくらいで、鍛えているから筋肉がすごいんだ。たしか藍色のTシャツを着てる。俺の親戚なんだけど、帰ってこないんで探しているんだ」と言った。
先生の声はよく響く
みんなちょっとだけ寂しい気持ちになって
「あいつは眠くなったので星に帰りました」と伝えた。
気づけばが長く伸びていた。
運動場に砂が堆積した、いかにも埋蔵金眠っていそうな場所を見つけたが、
もうどうでもよかった。

(太字になっている漢字がテスト範囲の漢字です)


この小説を読んだ息子が、
一言、
「これ……なに?」と私に聞いてきました。
なんかちょっと怒ってる?という雰囲気の声です。

「面白かった!」とか「良い気分転換になったよ!」と笑顔で言われると思っていた私は少しうろたえながら、

「その小説、読めた?わからない漢字とか読めない漢字とかなかった?」
と聞き返しました。

私のその言葉を受けて、もう一度じっくりと小説に目を落としていた息子が
「読めない漢字はなかったけど、意味がわからない。何?これ?」と、もう一度暗い声で問うてきました。

思っていたのと違う!!!
こんな反応がかえってくるなんて!!

私は慌てて、
「なんと!!テスト範囲の漢字をふんだんに使って書いた小説なんだよ!この小説を読むだけで、漢字を覚えたり読んだりできる優れものの小説!!」と明るく説明すると、

息子は
「ああ…たしかに。冷凍みかんとか、掃除とか、組織とか、埋蔵金もか…全部テスト範囲の漢字だね」と言ってくれたのですが、
さらに暗い声で、
「漢字を沢山使ってくれたのはわかったけれど、この話は何??最初は徳川埋蔵金を探しに行くミステリーかと思って読んでたんだけど、宇宙人が出てくるし、記念撮影して、お茶屋さんに行って、ケンカして、宇宙人が帰って、先生が通りがかって、終わったよね。これ、なんなの?埋蔵金はどこいったの?叶姉妹のことも僕はあんまり知らないんだけど」

「……えっ??」
まさか、こんなにも小説の内容につっこみが入ると思っていなかった私はその場でかたまりました。
息子はとても疲れた様子。
それはそうでしょう。
大事なテスト勉強中に、謎の小説を渡され「読め」と言われて、読んだらてんで意味がわからない小説だったんですから。

何のお役にもたてなかったどころか、
息子を疲れさせてしまった!!
頑張りどころを間違えた!
方向性とか、もう、いろいろ間違えた!
私のバカ!おバカさん!!

途方にくれていたら、もう夕方です。
こんなことで休日を台無しにしてしまった、トホホな私の気持ちをどうにかしたくて、
今こうしてnoteに書いています。



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