妄想スクール通いの力
私は卓球ができる。
最初から太文字で堂々と「できる」と書きましたが、強いんじゃないんですよ。「できる」です。
それも中高生時代に卓球部に入っていた、とかではなく、
大人(30手前)になってからできるようになりました。
きっかけは卓球部の顧問になったから。
卓球の経験はなかったのですが人数調整で副顧問になりました。最初は「できなくていいから」「見てるだけでいいから」「試合の日もたまにでいいから」みたいな感じで引き受けたんですけど、
一緒に顧問になった先生がものすごーくやる気満々の先生で。(彼の名前はT先生ということにします)
「卓球はやるのも指導するのも大好き!前の学校では卓球部になれなくてバドミントンだったからようやく俺の念願が叶った!!よーし、この学校の卓球部を強くするぞ!!」と、目を輝かせながら大声で言うT先生。
私はビビりました。
「できなくていい、見てるだけでいい、試合もたまにでいい」ということで引き受けた卓球部。
嫌な予感しかしません。
「ミーミー先生、卓球のご経験は!?」
「ありません。できないです。私、運動神経も悪いですし。特に球技はまったく…」
「あらら!そうですか!せっなくならできたほうがいいですよね!!」
「いえいえ!できなくていいんです!私、見てるだけのつもりなので、全然、本当に…」
「なーにをおっしゃってるんですかー!絶対一緒にできた方が楽しいですよ!!僕がお教えしますから!!明日からラケット買って一緒に練習しましょう!!」
「…え?」
途中何度も「いえいえ、結構です」と辞退の言葉を発したのですが、
何かに漲っているT先生には届かず。
私は本当に副顧問になった翌日から新入部員たちに混じって、ラケットやお手入れグッズを購入。
基礎練習から始めることとなりました。
男子中学生に混じって卓球の練習をする30女の私。
まだ個人で練習する分には良いんです。
1人黙々と練習していたら部活の時間もあっという間に過ぎますし、誰にも迷惑をかけませんし。
でも、2人1組の練習。台の上で「短いラリー、中くらいのラリー、長いラリーをミスらずに100回ずつ続けないと終われない」みたいな。そんな練習の時に私と組んだ部員は…私がミスをするせいで終われないわけですよ。可哀想に。
もう、申し訳なさでいっぱいで。
生徒も私に気を遣いますからね、怒ったりもしないですし。「お互い気を遣いまくって、ミスをして終われない」という地獄の時間が流れていきました。
練習を始めて1ヶ月が経った頃、T先生が私の相手ばっかりしてくれていることに気付きました。
最初のうちは(生徒が気の毒だからT先生が私の相手をしてくれてるんだろうなぁ)と思っていたんですが…
ある日、先生がこう言ったんです。
「この部はミーミー先生がどれだけ強くなるかにかかってるんだ!だから僕はミーミー先生を立派なカットマンにするために頑張る!!僕を信じてついてきて!!」と。
「は??」
本当にその時、年上の先生に向かって失礼を承知で
「は??」と発してしまいました。
まず「カットマン」とはなんぞや?ということで、こちらカットマンの説明です↓
話を聞いた時にはよくわかりませんでしたが、要するに「相手の球を下回転をかけながら打ち返して粘る」という、非常に地味というか、わりと難しいというか、そういう戦略です。
「いやいやいや、ご冗談を」とT先生に言ったのですが、
先生は本気なようで。
私に宣言してからは本格的に私を「立派なカットマンにするため」の練習が始まったのです。
T先生がいうには、
⭐︎部内に1人カットマンがいると、部員たちが全員カットマンに慣れたり対策ができたりする。
⭐︎強いカットマンに慣れた生徒たちのレベルも自然と上がっていく。
⭐︎部員が奇数の時にミーミー先生(私)が入ってくれると偶数になって練習が助かる。
⭐︎部員が偶数の時は見てていいから、奇数の時はよろしく頼む。
ということでした。
その言葉通り、部員が奇数の時には私も中に入って(人数合わせで)練習や試合をし、
偶数の時には見てていい…
はずだったんですけど、
偶数の時には生徒そっちのけでT先生による個人特訓が待っているのでした。
自分で言うのはなんですが、
私はわりとできるようになりました。
運動神経がなく、学生時代に運動系の部活にも入っていなかった私が、
部内で練習試合をすれば面白いくらいに結構勝てるようになりました。
考えてみてください。あのぴょんぴょん飛び跳ねるように元気で血気盛んな男子中学生に勝つんですよ。
まあ、大体、中学生は私に負けるのを恥ずかしいと思って1点でも取られるとカッとなるので、そこのメンタルをついていけば自爆してくれます。卓球は11点制ですから、相手がイライラしてミスをし始めたらそのまま勝てます。ふふ。
なぜそんなに強くなれたのか。
もちろん、T先生の特訓のおかげだというのが大前提としてあるのですが、もう一つ。
妄想スクールの設定をしました。
自分に暗示をかけ、
「私は良い感じの卓球スクールに放課後通いだしたのだ」と。決して、部活の副顧問ではない。自分で放課後の空いた時間に卓球スクールを見つけて通っているのだ…。
仕事場のすぐ近く(敷地内)にその卓球スクールはあって、
私にマンツーマンで教えてくれる先生がいて、
可愛い中学生がいて、
スクール内での試合に出させてもらえて、
それに勝てて楽しくて、
土日もそのスクールに通ったりするけど月謝は払わなくていい、
月謝を払わなくてよいどころか交通費とかちょこっとお金がもらえたり。
たまに男子中学生の大会も見学できて感動もできて弁当も出る。
こんな夢のようなスクールがあるだろうか。
と、顧問の仕事を勝手に「卓球スクールに放課後通いだした私」という妄想にすりかえてみたんです。
いやぁ、
勝手な妄想すりかえって、すごいですね!!
本当に卓球ができるようになりましたもんね。
「強い」かどうかはわかりませんがカットマンなるものにもなれました。練習中は球も擬人化させて(この球は私のラケットに回転をかけられるために私のところにやってくる。今日もたくさん下回転をかけてやるぜ!)と思いながらやってたら打ち損じないんですよ。
部員たちは私がくりだす回転球に四苦八苦しながら練習しておりました。ニヤリでした。
この技?戦法?がうまくいってからは、
日常生活でもよく使います。「妄想すりかえ」を。
すると、あら不思議。
なんでもわりと楽しめますし、嫌だと思っていたことも嫌じゃないし。
皆さまも是非一度お試しください。(最近の妄想設定ブームはマスク生活を「私は女優だから顔を隠して歩くの!」という妄想です。楽しいです)
10年以上前のことではありますが、
私の「妄想スクールを設定してやってみたらうまくいった」お話でした。
こんなところまで読んでいただけていることがまず嬉しいです。そのうえサポート!!ひいいっ!!嬉しくて舞い上がって大変なことになりそうです。