ただただ甘いだけの優しいケーキ
私は酸っぱいフルーツが苦手です。
酢の物とか酢豚とか、そういう酸っぱいおかずは好きなのですが、甘い物の酸っぱいのが苦手なのです。
パフェにフルーツがいっぱい乗っていたら、酸っぱかったり苦かったりするフルーツから先に食べて最後に甘い物でしめようとします。
朝は家族の健康を考えてヨーグルトにフルーツを乗せたのを出しますが実は辛いです。ちょっとした苦行だと思っています。
苦手なだけで食べれないわけではないし、酸っぱいフルーツが好きな母や弟と一緒に楽しく食べたくて、小さい頃から「嫌だ」とか「苦手」とかの好き嫌いを言わずに食べ続けてきました。私は「姉」という立場だし、そういうわがままを言ってはいけないんだとも思っていました。
でも本当は「甘い」ならあま〜い、どこにもすっぱさのないフルーツが好きなのです。
先日、私の誕生日を前に、夫がバースデーケーキを予約してくれている声が聞こえてきました。
「ちょっとお願いがあるのですが…食べる人が酸っぱいのが苦手な人で…」
「…いや!ちょっと、いちごは危ないですね。すみません、柑橘系もちょっと…。はい、え?フランボワーズ?!…ああ、フランボワーズもちょっとやめておいたほうが…」
「ええ、ええ、そうですね。それが1番かもしれません。はい、そうですね。それでお願いします。」
「…」
疲れた様子で電話を切り、困ったような笑顔で振り向く夫。
「ミーちゃん、ごめん。イチジクだけのケーキになるかも」
酸っぱいのを乗せないように頼んだら、イチジクだけになってしまった。もしかしたら、すごく地味なケーキになるかもしれないから、と謝るのです。
いや、そこじゃないのです。
40をとうに過ぎた私のケーキなのに、上に酸っぱいのを乗せないでほしいとお願いしてくれたのが…
ちょっと…
恥ずかしい!!
我慢すれば酸っぱいフルーツだって食べれるのに!!
「上に酸っぱいの何も乗せないでケーキ作ってください」だなんて恥ずかしい!!
お店の人にもわがまま言って…上にイチゴとかフランボワーズとか乗せなかったら飾り付けしにくいんじゃないだろうか?
どうしよう…さすがにロウソクの数は伝えてないようだけど…
「わがまま言ってすみません!やっぱり、酸っぱいのも食べれます。好きなの乗せて作ってもらっていいです」って電話しようか…。
私は焦りました。
ケーキは嬉しいけれど、そんなわがままなケーキを欲したことがなかったから。「苦手なもの乗せないでください」なんて、言ってもよいものかどうかもわからないから。
そして今日。
私の大好きなあまーいフルーツ。イチジクだけのケーキが届きました。
そこには私が普段苦手としているフルーツのかわりに美しいお花や粉砂糖が乗っていました。
イチジクだけでもこんなに綺麗に飾りつけしてもらえるんですね。
この美しいケーキを見たときに心がふっと軽くなったような気がしました。
「自分の誕生日に何も我慢することないんだよ。好きなものを頼めばいい。嫌なことは嫌だって言って我慢しなかったら、ちゃんとこんなに綺麗なケーキを作ってもらえたよ」って、夫に言われました。
この甘いフルーツだけが乗ったケーキが優しさのかたまりのように見えます。
40過ぎて、わがまま発動です。
ただ、ケーキが美しすぎて、今度は食べるのがもったいないです。
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