窓辺のガガンボ

人がまばらの電車の中

窓の外をじっと見ているガガンボがいっぴき

逃してやろうか、どうしよか、

電車は揺れる、ガガンボは動かない


雨上がりの帰り道

窓の外は砂つぶ色に憂鬱な雲

外に出たいな、帰りたいな


点と線で描いたような簡単な体

触ったら足がとれる

手がとれる

些細な力が全てを崩し

風にゆられて、雨に打たれて

しまいには

本当に点と線になってしまうのではとハラハラする


窓辺のガガンボ 

きみはどうされたい

逃してやろうか、どうしよか

窓辺で死ぬのが運命か

手足が取れても自由がほしいか

お前はいったいどうしたい






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結局なにも選べなかったわたしは

ガガンボを乗せた電車を見送ることしか出来なかった





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