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研究と実践を往復し、コミュニティで「知」が循環する仕組みをつくる(メンバーインタビュー・東南裕美)

本インタビュー企画では、ミミクリデザインのメンバーが持つ専門性やルーツに迫っていくとともに、弊社のコーポレートメッセージである「創造性の土壌を耕す」と普段の業務の結びつきについて、深掘りしていきます。

第三回はミミクリデザインで主にリサーチャーとして所属しながら、コミュニティデザインから地域活性化に関するクライアント案件や研究活動など、マルチに活躍する東南裕美( @yumitonan )です。インタビューを通して、研究と実践の間で生み出される気づきや学びを形にし、組織で循環させるための取り組みについて、詳しくお話しいただきました。ぜひご覧ください。(聞き手:水波洸)


現場とアカデミズムを軽やかに往復し、結びつける


ーよろしくお願いします。東南さんはミミクリデザインでリサーチャーとして関わる一方で、東京大学の特任研究員として、アカデミックにも籍を置かれていますよね。まずはその辺りのキャリア的な変遷について、お伺いしてもよろしいでしょうか?

東南 はい。大学卒業後、そのまま立教大学の社会人大学院に進学し、修士課程2年目の2017年の夏ごろ、ミミクリデザインへと参画しました。翌春、大学院を無事修了したのち、東京大学大学院 情報学環特任研究員に着任しまして、現在ではミミクリデザインでリサーチャーとして働きながら、いち研究者として、東京大学と企業との産学協同プロジェクトにも取り組んでいます。

ー修士課程時代はどのようなテーマで研究されていましたか?

東南 「まちづくりに人が参画する過程」について、実践共同体とよばれる学習理論の観点から分析・研究をしていました。例えば、ある地域に移住したばかりの人が、その地域のコミュニティと関わりを深くするうちに、自然とそのコミュニティ独自の立ち居振る舞いを身につけたり、地域住民としてのアイデンティティを確立させていったりする過程があるとしますよね。修士課程では、そうした人の行動や態度がどう変化して、まちづくりに関わっていくようになるのか、というテーマで研究活動に取り組んでいました。

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ーなるほど。他方で、研究活動と並行してミミクリデザインでのお仕事にも取り組まれていたわけですが、これまでの業務について、全体像をざっくりとお聞かせください。

東南 主な業務は二つあります。一つ目が、ワークショップデザインについて学べるオンラインコミュニティ「WORKSHOP DESIGN ACADEMIA(以下WDA)*」の運営。そしてもう一つは、ミミクリデザイン内のリサーチチームの一員として取り組んでいる研究活動です。少し前までは地域活性化や人材育成を目的としたクライアント案件にもいくつか携わっていたのですが、組織体制が変わったこともあり、今はこの二つが主要な業務となっています。また最近では、全社的な広報も担っています。

*「WORKSHOP DESIGN ACADEMIA(WDA)」とは
ミミクリデザインが提供する、最新のワークショップデザイン論が体系的に学べるファシリテーターのためのオンラインコミュニティ。様々なイベントに加えて、毎週配信される動画コンテンツやメルマガ、また会員専用のオンライングループ内で交流を通じて、ワークショップデザインや周辺領域について学べる環境を日々提供している。


ー研究活動を専門としたリサーチチームが独自に存在しているのは、ベンチャー企業としてはかなり珍しいように思えます。リサーチチームはミミクリデザインにおいてどのような役割として位置付けられているのでしょうか?

東南 ミミクリデザインでは、根本的な組織風土として、理論と実践が結びついていることを重要視しています。その中でリサーチチームは、WDAに最新の理論を学習コンテンンツとして提供したり、クライアント案件の実践データを分析し、生成された新たな学びを論文にまとめて発表したりと、理論を専門的に扱うチームとして、「知」にまつわる様々な活動を展開しています。私が広報を担うことになったのも、そうした「知」をいち早く外へと発信し、組織内外を通じて「知」の循環を行なっていくことを目的としています。

ーそうしたミミクリデザイン独自の組織体制について、どのような印象を抱いていますか?

東南 まず第一に、研究活動に理解があること自体がすごく有り難い環境だと思っています。あとは、例えば最近読んだ本や論文の中で、今取り組んでいるプロジェクトに関連しそうな理論が新たに提唱されていたとして、「最近はこうやった方がいいって言われてるみたいですよ」と何気なく提案したら、「じゃあそれやってみよう」と、すぐにWDAやクライアント案件で試してみる流れになることがよくあるのですが、そうした意思決定の早さや、試験的な取り組みが許容される雰囲気は個人的には楽しいですし、居心地の良さを感じますね。

理論と実践の間から浮かび上がる、新たな課題と気づき


ーここからは東南さん個人とミミクリデザインとの関係性についてお伺いしていきたいと思っています。まずミミクリデザインにジョインしたきっかけを教えてください。

東南 修士に入る前の大学生の頃から「実践できる研究者になりたい」という漠然とした気持ちがありました。そんな中、大学生として最後の年にFLEDGE**に参加した時に、安斎さんの研究しながら実践も行なう生き方に触れて、「あ、私、こういう研究者になりたかったんだ」と強く思ったのを今でも覚えています。「ロールモデル、いた!」みたいな。

**FLEDGEとは
ミミクリデザイン代表の安斎が講師を務める大学生向けのワークショップデザイン勉強会。NPO法人Educe Technologiesの社会貢献事業として、これからの社会で求められる学びと創造の場作りの担い手の育成をミッションとしている。

東南 その時には「安斎さんと一緒に仕事がしたいです」と伝えていました。それから少し経ってから、安斎さんから「地域コミュニティを専門としてるなら、こういう事業に関わってみるのはどう?」と、東京大学と京急電鉄の共同研究「三浦半島の魅力を再定義する」プロジェクトに誘っていただいて、プロジェクトマネージャーのような立場で関わりはじめました。

東南 その三浦半島のプロジェクトが本格的に始動する直前の、2017年3月に安斎さんがミミクリデザインを創業されました。そして、それから少し経った夏ごろに、ワークショップデザインを学ぶためのオンラインコミュニティ、つまり今のWDAの構想を安斎さんから聞きました。その時に、「それまで培ってきたコミュニティデザインの知見やプロジェクトマネージャーとしての経験を活かして運営をやってみない?」と安斎さんから言っていただいたのが、ミミクリデザインに加入した直接のきっかけです。

ー加入してからの約2年間、WDAやクライアント案件に取り組んでいく中で、新たな発見や印象的だった出来事はありましたか?

東南 まずWDAの運営に関して言うと、「セオリー通りにやってみても、実際にはうまくいかない部分がかなりあるな」と感じたのが、ある意味で発見であり、大きな学びでしたね。今後の課題でもあります。

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ー具体的にどういう部分がセオリー通りにいかないと感じたのでしょうか

東南 例えば、コミュニティにおいて、メンバーが相互に交流することで学びが生まれ、深まっていくという理論があります。そういった学びのあり方を目指そうと、講座や研究会だけでなく、メンバー同士で学び合えるよう、まずは互いの関係性づくりのための交流会を企画したことがありました。だけど、メンバー同士が知り合い、仲良くなることの具体的なメリットをうまく提示できなくて、思うほどうまくいかなかったんですよね。学べる対象がはっきりしている、個人でガンガン学んでいけるタイプの講座のほうが、WDAでは集客の上では圧倒的に人気がありました。そんなふうに理論と実践の間にある溝に嵌ってしまった時は、セオリーを取り入れるのもなかなか難しいと感じますし、実践に活きるように理論をアレンジしていく必要があるな、と思います。あるいは、新たな仮説を立てて、試行錯誤しながら取り組んでいく姿勢も大事で、先ほど話した交流会も、現在ではいきなり大々的に人を集めるのではなく、興味・関心が近い人や同じ研究会に参加した人同士が小さく密に関わり合えるような仕組みづくりにシフトするなど、違うアプローチに切り替えていて、それなりに手応えを感じていますね。

ーなるほど。話を聞きながら、そのように“セオリー通りにいかない”と思うこと自体が、理論と実践の往復を大事にするミミクリデザインならではの気づきではないかと思いました。クライアント案件ではいかがでしょうか?

東南 失礼な言い方になってしまうかもしれませんが、地域活性化の案件で住民参加型のワークショップを実施した時に、「こんな斬新な意見が出るんだ!」と驚かされた場面は、正直何度もありました。例えば新潟県長岡市の依頼によって実施した、地域住民の意見を取り入れながら新たな地方創生拠点のコンセプトを作っていく案件では、この地域からノーベル賞を受賞する人が出てくる10年後を描いた架空の新聞を作ろうとする人や、東京に出て起業し成功した人が地元に帰ってきて商店街を一気に活性化させるストーリーを紡ぐ人など、固定観念にとらわれない柔軟な発想で、地域を良くしていくアイデアを出し続ける人たちが本当にたくさんいました。

安斎さんも似たような話をブログに書いていましたが、まちづくりは、成果が見えにくいという点で、なんとなく上手くいっているふうに見せかけやすい領域なのだと思います。また、自治体などから依頼される時に、担当の方が「うちの地域ってなんにもなくて…」と過度に謙遜される場合が多いのですが、しっかりと設計されたワークショップを実施することで、住民の方々が次々に面白いアイデアを発案したり、たくさんの魅力的なポイントを新たに見つける場を作ることができたりと、地域に眠っているポテンシャルをワークショップによってここまで引き出せるんだと実感したのが、地域活性化の案件に取り組む中で、一番大きな発見でした。

ーそういった住民の人のポテンシャルを引き出すために、こだわっていることや心掛けていることはありますか?

東南 そうですね...。それはまさに現状の課題だと感じていて、私自身に関して言えば、ワークショップのファシリテーターを務め始めたのはミミクリデザインに入ってからだったので、まだ経験は浅いんですよね。そのため、必要な場を作るだけで精一杯になってしまっているところがあると思っています。参加者の人たちがさらに創造的になって、深く学んでいくために何ができるのかを、その場で即興的に捉えられる余裕をもう少し持てたらいいんですけど。

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東南
 ミミクリデザインに入るまではずっと、コミュニティや組織といった、日常におけるプラットフォームに目を向けてきましたが、ワークショップの場はそれに比べると、非日常的かつ一時的で、違うんだな、と思うところは多々あります。今はその特殊な場で生まれたアイデアや学びが、どのように日常に接続して、そのあと組織がどう変わっていったのか、そのプロセスをもっと長期的に、細かく見ていきたいですね。それが私のワークショップ実践におけるこだわりというか、本当はこだわりたいと思っているポイントです。

ーミミクリデザインは、地域コミュニティの仕事も請け負いますが、決してそれだけを専門にしているわけではないですよね。そうした環境下で、組織唯一の地域コミュニティの専門家として関わっていることについてどう思いますか?

東南 私が元々持っていた「まちづくりやコミュニティデザインの方法を探求したい」という思いを、正攻法で叶えようとしたら、やはりその領域を専門としている組織で働くのが一番だと思います。だけど、ミミクリデザインに入って、様々な領域に広く関わる環境だからこそ得られる学びもたくさんあるのだと気づきました。例えば商品開発の案件で用いられた方法が地域活性化の案件でも転用されることも珍しくありません。その際に、私は全く馴染みのなかったデザインの領域に造詣の深いメンバーから「こういう理論があって...」と教えてもらえたり、そこから「この分野だとこう言われている一方で、この分野だとこう言われていて...」といった議論に発展したりするのは、いろんな分野の研究者が在籍しているミミクリデザインならではの光景であり、実践の幅が日々広がっていく感覚があって楽しいですね。また、クライアントに対して提供できるミミクリデザインならではの価値や強みも、その辺りにあるのだろうと思っています。

ー学際的ですよね。

東南 そうですよね。様々な実践を行うなかで、基本的には一つの領域について深く探究しながらも、他方で多種多様な領域の最新の理論に気軽に触れられるのも、個人的に嬉しいポイントの一つです。良い意味で、研究と仕事が境目なく結びついている感覚がありますね。決して最短ルートではないのかもしれないけれど、いろんなヒントをもらいながら、自分だけの視野じゃ届かないような本や理論にすぐアクセスできるという意味で、非常に恵まれた環境だと思っています。

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ー最後にミミクリデザインとして東南さんが今後取り組みたいことや、成し遂げたいことについて、教えてください。

東南 先ほどの話とも重なりますが、一緒にワークショップに取り組んだ人や組織がどう変わったのかをしっかりと調査していきたいです。それは、クライアント案件だけでなく、WDAに対しても同じことを思っています。継続的な学習のためのコミュニティとして、参加していただいている方々がどんな問題意識を持って参加しているのか。そこから何を学んで、どんな実践をしていくのか、考え方の変遷を追って、コミュニティの中で知が循環するようにデザインしていきたいと思っています。

ワークショップを1・2回やる程度では、得られる効果にどうしても限りがありますし、「創造性」や「学び」という深いテーマにアプローチしていく以上、ワークショップ以外の時にどう過ごしているのかについても、細かく見ていく必要があると思っています。そしてそれはミミクリデザインに関しても同じように思っていて、3年くらいのスパンの中で、ミミクリデザインという組織がどのように変わっていくのか、個人的にはすごく興味があります(笑)あとはその結果積み上げられたナレッジや、組織が変化していく様子を、広報としてうまく外部に伝えていきたいところです。

ー楽しみです。本日はありがとうございました!

東南 ありがとうございました!

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▼プロフィール
東南 裕美/Yumi Tonan(ミミクリデザイン ディレクター/マネージャー)
Twitter: @yumitonan
note: https://note.mu/yumitonan

東京大学大学院 情報学環 特任研究員。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士前期課程修了。山口県出身。在学時より人間の行動変容や組織マネジメントに関心を持ち、NPO法人の立ち上げと経営に参画。地元山口に帰省した際、地域コミュニティのあり方について問題意識を持ち、現在は学習論と組織論の観点から「まちづくりに人が参画する過程」についての研究を行っている。ミミクリデザインでは、人材育成プロジェクトのマネジメント、地域活性化プロジェクトのリサーチを担当している。

ミミクリデザインホームページでは、過去のクライアント案件の事例が多数公開されているほか、「ワークショップデザイン・ファシリテーション実践ガイド」を無料配布中。ワークショップの基本から活用する意義、プログラムデザインやファシリテーションのテクニック、企業や地域の課題解決に導入するためのポイントや注意点について、最新の活用事例と研究知見に基づいて解説しています。

また、現在ミミクリデザインでは、以下のページから新たなメンバーを募集しています。興味のある方は詳細をご確認のうえ、お気軽にお申し込みください。


▼東南が参画したプロジェクトの対談記事はこちら。

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文・水波 洸
写真・猫田 耳子

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