一冊めの仕事は、どのようにしてやってきたか?
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一冊めの仕事は、どのようにしてやってきたか?

どんなブックライターにも最初の一冊がある

鹿児島でブックライティングをしていると言うと、よく聞かれることがある。

「最初の一冊ってどうすれば依頼がくるの?」

自分のコンテンツを持っている作家と違い、ブックライターは他人の本を代わりに書く仕事だ。多くは、出版社からご相談をいただいて初めてお仕事が発生する。ゆえに、このような質問が出てくるのだと思う。

著者候補を見つけて企画持ち込みをして、初めてのブックライティング案件を自分でつくってしまうライターさんもいる。が、そういう人はごく少数だろう。大半の人は、出版社などから一冊めの依頼をいただく。

ところが、この“一冊め”をいただくのが難しい。

「ライター経験は豊富でも、ブックライティングは未経験」。そうなると、ハードルはとたんに高くなる。

なぜか。まるまる一冊10万字(実際は7〜8万字の仕事も多い)を取材して書く仕事。これを、まったくの未経験者に自分が発注することを想像してみればわかりやすいと思う。

未経験者であるがゆえのさまざまなリスク(一冊書ききれない、書いたものの原稿が一定レベルに達していない、など)を考慮するなら、すでに実績のある人に頼みたいのが人情だろう。容易に肩がわりできる仕事内容ではない。短期間でリカバリーするのも大変な仕事量だ。ハードルが高くなるのは、当然だと思う。

それでも、どんなブックライターにとっても、「最初の一冊」がある。
「書籍経験ゼロ」のライターに依頼してくださる方がいるのも事実だ。

このハードルを超えた人たちは、どのようにして最初の一冊をまかせてもらえることになったのだろうか?

もし自分に仕事を依頼したいと思う方が現れるなら、何がきっかけになるだろう?

とにかく動いてみることに

専門分野をつくるべきなのかとか、ウェブメディアや雑誌での執筆経験を積めばいいのかとか、いくつぐらい記事を書けば安心感を持ってもらえるかとか、わたし自身、ブックライティングを経験するまで、いろいろ考えた。

しかし、「これさえすれば間違いなく仕事をいただける」という答えは見つからない。他のブックライターの事例が自分にあてはまるとも限らない。

ならばどうするか。
結論は、「とにかく動いてみること」だった。

最初のご依頼をいただくのは、きっと長期戦になるだろうと思った。一年後なのか、五年後なのか、見当もつかない。ひょっとしたら、そういうチャンスが自分にめぐってこないかもしれない。待ちの姿勢でいるとどんどんネガティブ思考におちいってしまいそうだ。

だから、なんでもいいから動いて、忙しくしていようと思った。そのほうが不安にとらわれずにすむ。

そこで取り組んだのが、次に挙げる5つのことだった。

先入観や偏見を捨てて、思いついたこと、できること、興味のあることはやってみる。すぐに成果は出なくとも、動いたことは勉強にこそなれ、無駄にはならないだろうと考えた。

当時は会社員で食うには困らなかったから、わりと楽観的に、「長期戦でいくしかない」とすぐに覚悟だけは決めることができた。

独立して2年半が経った。いまなら当時の自分を少し客観的に見られるような気がしている。ブックライターとして初めてのお仕事をいただくまでどんなことを考え、何をしたかを思い出しつつ書いてみる。

 ①ブログを始める

「将来ブックライターになる」と決めて最初にしたことは、ブログを書き始めること。noteに登録していたものの、発信はしていなかった。noteは出版関係者がよく見ているらしいと聞き、ようやく書き始めた。
「自分には書くことなんかない」と思ったが、アウトプットしないと存在すら知ってもらえない。存在していない人間に仕事の依頼はこない。だから「書くこと自体」を目標にした。内容は後からみがけばいいと割り切った。

 ②本を読み、感想をアップする

ブックライターになりたいと思ったのは「上阪徹のブックライター塾」の受講がきっかけだった。この塾を修了するとたくさんの仲間ができる。みなさん、すばらしい仕事をしている。
塾のグループページに「書きました」と新刊のお知らせが出るたび、先生や塾生の手がけた本を読むようになった。もちろん、それ以外の興味ある本も読んだ。
ポイントは、「買って読む」こと。図書館で借りるより、元をとろうと思って真剣に読むようになる。それまで、ほとんどビジネス書や自己啓発書を読んだことがなかったため、ブックライターの仕事がどんなものか、学ぶ意味もあった。本の感想を書き、noteにアップしていった。
(追記: そういえば、時期を同じくして日経新聞の購読もはじめたことを思い出した。)

 ③募集案件にみずから手を挙げる

塾のグループページではときどき、お仕事紹介の投稿もある。書く練習になればと思い、できそうな仕事には手を挙げた。休日を使って経歴書をつくり、過去に手がけた記事のサンプルを用意した。
採用されたものもあれば、不採用だったものもある。採用された仕事については、そんなに力を入れる? といわれるぐらい時間と労力をかけた。塾での学びを実戦で試してみるイメージで取り組んだ。

 ④イベントやセミナーに参加する

なかなか依頼がこないなら、自分で本の企画を立てて出版社に持ち込んだらどうだろう? と考えたこともある。そうすれば自分でブックライティングできるのではないか、と。企画のためのネタ探しの一環として、気になるイベントやセミナーには時間の許すかぎり出かけた。

 ⑤プロフィール写真を撮影して顔出しする

存在を知ってもらうためには、SNSで顔出ししたほうがいいだろうと考え、プロのカメラマンにプロフィール写真を撮ってもらった。匿名で使っていたSNSも、顔出しを機に実名に変えた。撮影の顛末はnoteにも書いているので、よろしければどうぞ。
ライターとしてのプロフィール写真を撮影する その1
ライターとしてのプロフィール写真を撮影する その2

ついに一冊めのご依頼をいただく

初めてブックライティングのご依頼をいただいたのは、塾を修了して一年余り経ったころ。ほぼ同時期に、二冊のお話があった。

一冊めは、思いがけないところからやってきた。③でつながったクライアントさん(人材紹介会社)だった。出版社以外の企業からブックライティングの依頼をいただく場合もある、とはブックライター塾の講義で聞いていた。だが、まさか自分の一冊めがそうなるとは思わなかった。

二冊めは、①と②の合わせ技といおうか。noteにアップした本の感想に編集者さんが目をとめて「著者に取材して記事を書かない?」と声をかけてくださった。そこでつながった著者さんからお仕事の終了後、「本のライティングを手伝ってほしい」とお話をいただいた。

正直なところ、一冊めも二冊めも、計算していただける依頼ではない。⑤では「こうすればうまくいくかも」と浅知恵をめぐらせたわけだが、考えたようにはいかなかった。書きたいメディアの編集部にメールを送ったこともあるが、こちらもご縁を得るには至らなかった。

それでも、最初のお仕事は先の①〜⑤をしてみなければ生まれなかったと思う。一冊め、二冊めと直接的にはかかわりのない④も⑤も、無駄ではなかったと考えている。

④はいまこの時期にきて、本のお仕事へとつながっていきそうな局面にさしかかっている。最終的にはどうなるかわからないが、いろいろ考えて動いてみたことはいつか、どこかで役立つかもしれない。

確実ではないが「めぐり合わせはつくれる」

最初の一冊をいただくまで、自分にブックライティングの仕事がなかなかこないのは地方在住だからだ、と思っていた。鹿児島のライターに頼む人なんていない、と。

しかしいまは、それは間違いだったと思っている。意外とライターの居住地というものは関係ないのではないか。

一冊めをいただくまでに自分に起こったことを思い返してみる。すると、お仕事をいただけるかどうかはライターの個性や能力以外に、「めぐり合わせ」の要素も大きいのではないかという気がしてくる。

身も蓋もない言い方になるが、近くにいたとか、頼みやすそうな人柄だったとか、たまたま仕事のあるタイミングでライターのSNS投稿を目にしてピンときたとか、そういうものに左右される要素が多分にありそうだ。ブックライター塾塾長の上阪徹さんもおっしゃっていた。「仕事が発生したときに、思い出してもらえるかどうかが大事だ」と。

このめぐり合わせを、確実につくりだすのは難しい。それでも日々の行動や発信によって、めぐり合わせを生むための「点」をあちこちに、たくさんつくっておくことはできる。

「点」は、それ単体でお仕事を生むことはまれだろう。ただ、複数の「点」がつながったり、つながって「線」になり、思わぬ方向へ伸びていくことで、将来、めぐり合わせに発展する可能性がある。

三冊め以降のお仕事も、一見、仕事が発生しそうにない「点」が発端となって生まれている。自分の「点」をつくっておくことは、めぐり合わせの発生確率を高めてくれる。それは間違いなさそうだ。

「点」をつくるとは、自分の存在を可視化することだと思う。

ブログやSNSを使って情報を発信する。やってみたいこと、できることを考え、行動にも移す。願いや希望を胸にしまったままにせず、言葉にする。人に聞いてもらう。

そのときに大切なのが、結果や損得をあまり気にしないこと。無理な努力や向かないことは続かないから、あくまでも自分が楽しめる範囲で続けていくことも大切だろう。先に挙げた①〜⑤も、わたしは楽しみながらやっていた(noteを書くのは大変だったが)。

……とこんなことを考えていたら、スティーブ・ジョブズ氏によるスタンフォード大学での有名なスピーチを思い出した。

you can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backward. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something
(https://news.stanford.edu/news/2005/june15/jobs-061505.htmlより)

最初のお仕事をいただいた当時のことを思い出しながら、このジョブズ氏の言葉の意味をいま実感している。

わたしたちは、後からふりかえって「点」をつなぐことしかできない。

ならば、先ばかり見て浅知恵をめぐらすのはやめにして、毎日「点」をつくることを楽しんだほうがよさそうだ。

ありがとう!
鹿児島生まれ、鹿児島在住。会社員を経て独立。書籍やWEB記事のライティングをしています。仕事のことや本の感想など、日々のあれこれを書きつけます。上阪徹のブックライター塾第3期修了。