たまご焼きと紅しょうが
小さな頃のはなし。
妹が生まれる頃のはなし。
まだ、おじいちゃんとおばあちゃんが元気で、同じ家に住んでいた頃の話。
私は幼稚園児で、母は妹の出産のため入院していた。
その間、おばあちゃんが毎日ごはんを作ってくれていたんだけど、その日のお昼は何故だかおじいちゃんが作ってくれた。
とっても分厚くて、ふかふかの卵焼きを焼いてくれた。
おじいちゃんは卵焼きの上に細く切った紅生姜をつけてくれた。
私は小さな頃から自家製の梅干しと紅生姜が大好きだったので、ふかふかの卵焼きと、大好きな紅生姜が一緒に並んでいるのがとても嬉しかった。
卵焼きの黄色と紅生姜の紅色がとても綺麗で、食べるのがもったいない気がしたけれど、冷めないうちに食べなさい、と言われて食べ始めたのを覚えている。
お母さんがいなくて寂しいけれども、とても美味しくて幸せを感じた。
それからおじいちゃんが亡くなるまで、卵焼きを焼いてもらった記憶はない。
もしかしたら焼いてもらったのかもしれないけれども、覚えていない。
でも、何年経っても私は卵焼きを紅生姜と一緒に食べたいと思う。
そしてその度に、幼稚園児だった私に笑顔で卵焼きを差し出してくれたおじいちゃんの笑顔を思い出す。
この文章を書きながら、おじいちゃんの誕生日と命日が近づいていることを思い出した。
おじいちゃんが近くまで来ているのかもしれないな。
大きくてふかふかの卵焼きに紅生姜を添えて、おじいちゃんのことを思い出しながら食べようか。
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