三國青葉

小説家。2012年第24回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。お茶大SF研OG、池波…

三國青葉

小説家。2012年第24回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。お茶大SF研OG、池波狂、時代劇オタク。神戸市出身、徳島県在住。著作に「忍びのかすていら」「学園ゴーストバスターズ」「心花堂手習ごよみ」「黒猫の夜におやすみ」など。どうぞよろしくお願いいたします。

最近の記事

自著紹介 『黒猫の夜におやすみ 神戸元町レンタルキャット事件帖』

 自著紹介7日目は『黒猫の夜におやすみ 神戸元町レンタルキャット事件帖』(三國青葉 2019年4月 双葉文庫 カバーイラストレーション:toi8さん カバーデザイン:大岡喜直さん)です。  市原悦子さん主演のドラマ『家政婦は見た!』の猫又版はどうだろう。猫又がレンタルキャットに行った先のトラブルを解決するお話。と、考えたのがこの作品を書くきっかけとなりました(^^)  行き倒れの猫は記憶喪失の猫又(しかもイケメン)だった!?神戸元町で猫と人を幸せにするためのレンタルキャット店

    • 自著紹介 『心花堂手習ごよみ』

       自著紹介6日目は『心花堂手習ごよみ』(三國青葉 2018年6月 角川春樹事務所 時代小説文庫 装画:丹地陽子さん 装幀:かがやひろしさん)です。  三國が塾をやっているので、寺子屋が舞台の物語をと、担当編集さんにご提案いただきました。プロットを立てる際いろいろ調べていて、江戸時代の女子校を書こうと思ったのです。  時代小説初心者の方にも、お楽しみいただける作品になっております(^^)  日本橋の小松町にある「女筆指南心花堂(にょひつしなんこはなどう)」は、匂坂初瀬が師匠

      • 自著紹介 『学園ゴーストバスターズ 夏のおもいで』

         自著紹介5日目は『学園ゴーストバスターズ 夏のおもいで』(三國青葉 2018年10月 小学館文庫 キャラブン! カバーイラスト:トミイマサコさん カバーデザイン:西村弘美さん)です。  この作品は昨日投稿いたしました『学園ゴーストバスターズ』の続編となります。  望月冴子と一色恭夜は、特殊能力アリの中学生。冴子は自ら出現させた刀で「霊を斬って成仏させる」し、憑かれ体質の恭夜は「霊を説得して成仏させる」ことができるのだ。  ある日、ふたりは近所の病院の看護師から「院内に棲み

        • 自著紹介 『学園ゴーストバスターズ』

           自著紹介4日目は『学園ゴーストバスターズ』(三國青葉 2018年4月 小学館文庫 キャラブン! カバーイラスト:トミイマサコさん カバーデザイン:西村弘美さん)です。  私、映画『シン・ゴジラ』にはまりまして。DVDを買って5回くらい観たんですが、市川実日子さん演じる尾頭ヒロミの大ファンになっちゃったんですね。で、尾頭ヒロミの子ども時代ってどんな感じだったんだろうという妄想が、冴子というキャラの元になり、この物語が生まれたという…。  入学式の朝。中学生の一色恭夜は、例に

        自著紹介 『黒猫の夜におやすみ 神戸元町レンタルキャット事件帖』

          自著紹介 『忍びのかすていら』

             幼いころ父母を亡くして肉親の情をあまり知らずに育ち、死地を何度も潜り抜けてきた清十郎はクールでマイペース。そんな彼がかすていら作りに没頭。ああでもない、こうでもないと工夫を重ねます。スイーツ忍者、新米パパのとまどい、そしてアクション…。いろいろ詰め込んだお話です。  江戸時代初期が舞台なので資料が少なく、白砂糖の値段を調べるのに苦労したのも懐かしい思い出です(結局お米の値段とグラフから割り出しました)。  自著紹介3日目は『忍びのかすていら』(三國青葉 白泉社招き猫

          自著紹介 『忍びのかすていら』

          自著紹介 『かおばな剣士妖夏伝 人の恋路を邪魔する怨霊』

          自著紹介2日目は『かおばな剣士妖夏伝 人の恋路を邪魔する怨霊』(三國青葉 新潮文庫nex 2014年 カバー装画:染谷かおりさん カバーデザイン 團夢見さん)です。  この本は、1日目に投稿しました私のデビュー作『かおばな憑依帖』を文庫化していただいたものです。新潮文庫nexというレーベルの読者層に合わせて、うんちくをばっさり削る一方、キャラ立ちと読みやすさをUPさせました。かなり加筆しましたし、設定を変えたところもあったりしたので、作者的にはもはや別物という感じがいた

          自著紹介 『かおばな剣士妖夏伝 人の恋路を邪魔する怨霊』

          自著紹介 『かおばな憑依帖』

          これから7日間、自著を紹介させていただこうと思います。まず1日目は『かおばな憑依帖』(三國青葉 新潮社 2012年 装画:加藤木麻莉さん 装幀:新潮社装幀室)です。  この本は、2012年第24回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作で、私、三國青葉はこの小説で作家としてのスタートを切りました。  『かおばな』というのは朝顔のことでありまして、  お江戸の町がバイオテロで襲撃された! 怨霊との壮絶なバトルが今、始まる――。  八代将軍の治世。将軍位を巡る争いに破れ、

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          エミューの父ちゃん

           ずっと以前にテレビで見たのですが、エミュー(ダチョウみたいな感じのオーストラリアの鳥)は、オスが2ヵ月近くも卵をあたため、雛も育てるのだそうです。  あるオスが6個の卵をあたためていましたが、ちょっと外出したすきに、他のエミューに3個食べられてしまいました。  でも3個はちゃんとかえってかわいい雛に。エミューは砂漠をあちこち移動しながら生活するので足がすごく発達していて、生まれてすぐ立って歩いていました。  で、ちょっと大きくなると旅の生活に戻るのですが、3羽の雛のう

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          肥溜めに落ちた話

           3歳の春のはじめごろ、私は家の近くの原っぱをふたりの男の子と一緒に走っていました。記憶はいきなりここから始まるので、なぜそんなところを走っていたのかは不明です。当時住んでいたのは京都の太秦で、大映の撮影所の近くでした。勝新太郎と田宮二郎がスチール写真を撮影していたのを見たことがあると母が言っていましたが、おそらく映画『悪名』シリーズのものだと思われます。  どんくさくて走るのが遅かった私とふたりとの差が開き、私はあせっていました。そのとき突然足の下の地面が消失し、次の瞬間

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          男の子の言い分

           今年の3月まで30年近く自宅で学習塾をやっていました。最初は学年別で教えていましたが、途中から無学年制の個別指導形式になりました。講師は私ひとりで全教科を教え、生徒は小学生から高校生まででした。塾の思い出や子どもたちのこと、教育について思うことなどつづっていこうと思います。  小学校4年生くらいになると、男の子たちは口をそろえて言います。 「最近、女子、わけわからん」  ついこの間までみんなで仲良く遊んでいたのに、女の子同士でこそこそと、文通や交換日記などをしているのです

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          銀河英雄伝説 二次創作『平行世界におけるそれぞれの日常生活』

           この作品は、徳間書店から1993年9月に発売された『全艦出撃!!(3) 「銀河英雄伝説」同人誌ベストセレクション 凱旋勝利』というアンソロジーに応募し掲載されたものです。おそらく『全巻出撃』の2巻に作品募集のお知らせがあったのだと思います。掲載された公募作品は5つで、小説(の体をなしていませんが)は私だけだったと記憶しています。ペンネームはもちろん三國青葉ではありませんでした。(無料公開)    1   「あなた、起きてください!」  フレデリカ・G・ヤンは彼女の夫の肩を

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          母子草の賦(連載第9回)

          幼い姫がお家再興を目指す和風ファンタジーです。ヤングアダルト向けっぽい感じでしょうか。今回で完結いたしました。〈全文無料公開〉    第七章  神殿         1  勘吾が亡くなってから二日間、楓はずっと泣き続けていた。  もちろん女子でも武士の子、城主の姫として楓も幼い時から、人前で泣くものではないと教えられて育ってきている。  だが、勘吾は楓をかばって死んだのだ。それはどんなに言葉を取り繕って言い訳しようとかなわない確固とした現実であった。  楓はいつも魔物退治の

          母子草の賦(連載第9回)

          母子草の賦(連載第8回)

          幼い姫がお家再興を目指す和風ファンタジーです。ヤングアダルト向けっぽい感じでしょうか。連載10回くらいで完結…の予定です。〈全文無料公開〉   第六章  覚醒の湖        1  一同は、山に囲まれた湖のほとりに立っていた。絵図面には、最後の魔物がここにいると記されている。  木々の柔らかそうな若葉の、つややかな緑がまぶしかった。出立の日からほぼふた月が経過している。  湖を渡る風は、もう初夏のものだった。 『勝てるのだろうか』  唇をかみしめ楓が湖面を見つめる。思いを

          母子草の賦(連載第8回)

          母子草の賦(連載第7回)

          幼い姫がお家再興を目指す和風ファンタジーです。ヤングアダルト向けっぽい感じでしょうか。連載10回くらいで完結…の予定です。〈全文無料公開〉    第五章  虚偽の城       1 「姫、腹でも痛いのか」  次の目的地への道中、心配そうに尋ねる勘吾に、楓は相も変わらずの仏頂面でかぶりを振った。 「ずっと黙ったままゆえ、具合でも悪いのかと思うて」 「どこも悪うない」  楓が言い捨てぷいとそっぽを向く。勘吾はため息をつきながら、ぽりぽりと鼻の頭をかいた。ふたりのこのようなやり取

          母子草の賦(連載第7回)

          母子草の賦(連載第6回)

          幼い姫がお家再興を目指す和風ファンタジーです。ヤングアダルト向けっぽい感じでしょうか。連載10回くらいで完結…の予定です。〈全文無料公開〉    第四章  不実の山      1 「なあ、一度盛り場へ寄らぬか、勘吾」 「さては白粉のにおいが恋しゅうなったな」  白々しく提案する右京に、勘吾はにやりと笑った。たちまち久兵衛が勢い込んで賛同する。 「わしも煮しめをさかなに、酒が飲みたい」  十蔵が肩をそびやかした。 「ふたりとも何を申しておるのだ。さっさと魔物を退治して残りの半

          母子草の賦(連載第6回)

          母子草の賦(連載第5回)

          幼い姫がお家再興を目指す和風ファンタジーです。ヤングアダルト向けっぽい感じでしょうか。連載10回くらいで完結…の予定です。〈全文無料公開〉    第三章  哀嘆の沼       1  魔物退治の旅を始めてから十日が過ぎた。その間につぶれていた楓の足の豆も治り、歩くのにも大分慣れたように思われる。最近は、あまり勘吾の肩に乗らずともすむようになってきていた。  道端に花でも見つけたのか、急に駆け出した楓を目で追いながら、しかし勘吾はなんとなく寂しかった。思わずため息をつきそうに

          母子草の賦(連載第5回)