見出し画像

祖父と過ごす夏休み

数年前の夏のこと。
夏休みを利用して祖父の家を訪ね、数日間いっしょに過ごすということが恒例になっていました。

そのときの思い出を綴ってみたいと思います。


画像1



東北のとある県。
東京駅から2時間ほど新幹線に乗り、最寄駅から30分ほど車を走らせていきます。運転するのは年に数回あるかないかなので、緊張でどきどきどき…。
山道で交通量はあまり多くないのですが、やたらとスピードを出してくる車や、タンクローリーが通っていたりしてこれが結構こわいです。

車の中で「もうやーだーあおらないでよ~」とかひとりでぶつぶつ言ってました。笑


画像6



山道を抜けると田畑の周りに木造の家がちらほらと見えてきて、閑散とした商店街を抜けた先を進んでいくと、祖父の家に到着です。

山に囲まれ、川が流れ、田畑が広がる場所。
稲穂の匂いがあたりいっぱいに漂っていました。

家は築10年前後の一戸建てで、庭先にはトマトやナス、とうもろこしなどの野菜が育っており、それがまた夏らしさを感じさせてくれます。


画像4


画像7



玄関のチャイムを鳴らしてしばらくすると、祖父が出てきました。

「おう。よぐさ来だね。家さあがれぇ」
(と聞こえた)

ここの地方独特のなまりなのか、こどもの頃は祖父母が話すことばをうまく聞き取れず、何を言っているのかわからなくて、まともに会話ができませんでした😅

祖父は相変わらず、居間の座椅子でたばこをふかしながら甲子園をみていたようです。


祖父の家に来たらまずはご先祖様にごあいさつです。

お線香をお供えし、りんを鳴らす。




合掌






部屋いっぱいに広がる
お線香と畳の匂い






響き渡るりんの音。
遠くちいさくなってゆく。





お供え物は旬の果物や桃のゼリーを持っていくことが多かったです。あと、お酒好きな方には氷結を。


祖父は「疲れただろうからゆっくりしな、冷蔵庫にあるものなんでも食べていいから」と色々と気遣ってくれました。

ではお言葉に甘えてビーr…ではなく、よく冷えた麦茶と、どんと大きなスイカがあったので祖父と一緒に頂きました。


祖父がいつも見ている夏の高校野球。
野球のルールは全くわからないのですが・・画面越しに伝わってくるものがありました。

選手が投球するときの真剣なまなざし。

勝利したチームが歓声を上げ、仲間同士で肩を組んで喜んでいる様子。

その光景とは反対に、日焼けした顔からこぼれ落ちる涙。
ここまでくるのに、どんな日々を積み重ねてきたのだろう。

画面越しにそんな光景を見ているだけで、うるっとしてしまいました。


料理器具 ライン



17時を過ぎたあたりから夜ごはんの準備を始めます。いつも冷蔵庫にあるものと庭にある野菜で適当に作るのですが、これだけ食材があると何を作ろうか考えることが楽しかったです。

それに、対面式のキッチンなので(カウンター付き)広くてお洒落で気分がるんるんです(自宅アパートの狭いキッチンと比べたら…)


日も落ちかけてきたころ
夜ごはんの準備ができたら
2人そろって手をあわせ

「いただきます」


お酒好きの祖父はいつもビールを飲んでいました。アサヒスーパードライ。めちゃくちゃお酒に強いです。私もこちらの家系に似たのか、それなりに飲めるので(もう一方の家系は全く飲めない)、のんびりと晩酌できる時間が好きです。

ただ、私のグラスが空になると「もっと飲め飲め」とばかりにビールを注いでくれるので、私も負けじと注ぎ返す。笑

「だれかと食べるご飯は、いいなあ」

と、祖父が言った。


2~3日に1度は伯母が祖父の家へ来ていましたが、それでも祖父がご飯をたべるのはたいていひとりきり。

ちょっぴり切ない気持ちになりながらも、「そうだね」と笑顔を返す。

ライン ドット みどり


祖母も健在ですが、認知症が進んでしまい、数年前から施設で暮らしています。会いにいくと調子のよいときは、わたしの顔をみてすぐに名前が出てきますが、そうでないときは、「だれかわかんね」と戸惑ってしまいます。

祖父母はとても仲がよいです。
祖母が施設に入所してからも、祖父は2日に1度は施設を訪れ(家から歩いていける距離にあります)洗い物の衣類を持ちかえって洗濯し、また新しい衣類を届けにいっていました。

他愛のない会話をする2人を見ていると、長い間夫婦でいられるって素敵だなあ…なんて、そのとき結婚願望ゼロだったわたしのこころがちいさく揺さぶられていました。

ライン ドット みどり


お腹いっぱいごはんを頂いたあとは、外で涼んでみたり、テレビを見たりしてのーんびりと過ごしました。

なにか特別なことをするわけではないですが、普段の生活にはない、ゆったりと流れる時間がそこにはありました。


来年も再来年も
こんな風に過ごせる日を楽しみにしていました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?