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interview 映画『おかあさんの被爆ピアノ』の調律師・矢川光則さんと五藤利弘監督

広島には「被爆〇〇」がたくさん残っている。
しかも、それが「現役」として街に存在する。

被爆電車も走っているし、福屋というデパートは被爆建物を店舗として使っている。被爆樹木も青々と葉を茂らせ、風にそよいでいる。

被爆ピアノも、広島の大切な宝物。
あの日の熱線を受けているにもかかわらず、力強い旋律を奏でる。
7月から公開される映画「おかあさんの被爆ピアノ」では、その音色が主人公ともいえる。

被爆ピアノの音は、なんと表現すればいいのか…キレがあり、力強い。
弾けるような、「立っている」響きなのだ。
自立していて、しかも品性がある「音」。

映画にはモデルとなった人物がいる。被爆者やその家族からピアノを譲り受け、全国で開かれる平和コンサートに運ぶ活動をしている矢川光則さんだ。

矢川さんは、「ピアノは生き物」という。

矢川さんが所有する6台の被爆ピアノは、大正時代か昭和初期に製造されている。古いピアノだけに、被爆者たちの戦後の艱難辛苦(かんなんしんく)をも吸い込み、音色にしているのだ。
だから、「生きている」と矢川さんは感じるのだろう。

その思いを、映画監督の五藤利弘さんが受け止め、矢川さんをモデルにした物語を映画にした。矢川さんを演じたのは、佐野史郎さん。撮影前には、大杉漣さんがキャスティングされていたのだが、急逝されたために、大杉さんと親しかった佐野さんが引き継いだという。

佐野さんがつくった「矢川」という人物は、本人とはちょっと違う。
いつも笑顔が絶えない本物の矢川さんとは違って、もう少し重厚で渋い。
平和のために信念を持って黙々と動く一人の調律師の姿が、被爆ピアノの音色とともに観る人の心に何かを残す。

五藤監督は「被爆者がゼロになっても、被爆ピアノが原爆の記憶を伝えてくれる」という矢川さんの言葉に胸を打たれ、10年かけて映画をつくった。

戦後75年を迎え、高齢の被爆者が次々と亡くなる今、
矢川さんの言葉が現実として迫ってくる。「語らない語り部」であるピアノの音色が、聴く人々のイメージを喚起する。

インタビュー記事はこちら↓

<公開上映館>

広島:八丁座 (7月17日~先行公開※好評の場合続映も)
呉ポポロシアター(7月24日~公開予定)
岡山:シネマ・クレール(7月31日〜公開予定)
   MOVIX倉敷(7月31日〜公開予定)
静岡:静岡シネギャラリー(8月7日〜公開予定)
   浜松シネマイーラ(8月7日〜公開予定)
東京:新宿K’s cinema(8月8日~9月4日公開予定)
神奈川:横浜シネマリン(8月8日~公開予定)
山形:フォーラム山形 (8月8日~公開予定)
フォーラム東根(8月8日~公開予定)

<日程後日公開>
茨城:土浦セントラルシネマズ 8月〜
愛知:名古屋シネマスコーレ 8月〜
   刈谷日劇 ※シネマスコーレ終了後
京都:京都シネマ 8月〜
大阪:テアトル梅田orシネリーブル梅田 8月〜
大分:別府ブルーバード劇場 8月〜

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