2021年ブックレビュー『安寿子の靴』(唐十郎著)
劇作家・演出家の唐十郎さんを特集した番組を観たとき、あるNHKの単発ドラマを思い出した。唐さんの脚本で、長男の大鶴義丹さんが主演した「安寿子の靴」(1984年)という作品だった。中島みゆきの主題歌まで、なんとなく覚えている。
このドラマがなぜ、いつまでも記憶に引っ掛かっているのかよく分からない。検索してみると、ドラマの基となった短編が出版されていた。
ある春の日、中学生の十子雄は京都の鴨川で9歳の少女と出会う。名前も言わず、しつこくつきまとう少女を十子雄は持て余す。十子雄