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#通夜

魂の抜け殻 第12章

通夜の前日

この日は葬儀屋との打ち合わせや、実家に持ち返った父の書類を調べたり、一日中雑用をこなしていた。

僕は妻に電話で、葬儀には参加しなくていい。子供達を頼む様に言った。

葬儀屋担当の方は楽しい方で、暗くならずに相談できた。母と一緒に打ち合わせをしたが、僕も初めての事なので、解らない事はどんどん質問した。用意するものから当日の事、お供えもののお団子の粉まで葬儀屋が用意してくれるから、驚い

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魂の抜け殻 第13章

通夜

7月10日、通夜。

内々で済ませ様と思っていた。それでも何処で聞いたのか、たくさんの方が来てくださった。吉田さんのお父様は病気で退院したばかりなのに、わざわざ来てくださった。他の元社員にも挨拶をした。参列者の方が父の顔を見て「安らかに、眠っている様だわね…」と涙ぐんで言っていた。僕は心の中で“安らかな訳無いじゃない”と悪態をついていた。

しきたりで通夜の日は夜どうし線香を絶やしてはいけ

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魂の抜け殻 第16章

帰宅

告別式が終わり、納骨も済んで、その日のうちに僕は自宅に帰った。帰る前に預けていた友人宅へ飼っていたハムスターを取りに行った。少しのつもりがお邪魔してから明け方まで話込んだ。

ご主人も一緒に話していたのだが、それはご主人の気遣いだった。後から知った、励ましてくれたのだ。誰も同情などしない、安らいだ時間だった。

ハムスターを連れて帰宅。ボロボロになった様で眠りたかった。起きたら子供達を迎え

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