スタートアップの「組織」を、どう定期レビューするか? (前編:CEOを評価する)
自己紹介
初めまして。DCM Venturesの猿丸美喜です。
前職はマッキンゼーで、昨年11月にジョインしました。元々、志高い人や組織の成功をサポートできるコンサルの仕事がとても好きでしたが、漠然と「より新しい世代の力になりたい」という気持ちが芽生えていた所にVCと出会い、転職を決めました。普段は、10年以上続けている東方神起のユノの追っかけと韓国ドラマばかり見ている韓国オタクです。
あまり発信をやってこなかったのですが、今回勇気を出してnoteを始めてみることにしました。どうぞよろしくお願いいたします。
前職のコンサルでは組織分野を中心に見ていたこともあり、初回はスタートアップの「組織」について、2回の投稿に分けて書いてみようと思います。
今回は前編、「CEO評価」についてです。(次回の後編では、スタートアップの「組織力」とは何か、どうチェックするか、について書きます!)
定期的・客観的にCEOを評価する意義
先日、投資先の10XからCEO評価の依頼を受けて、7月時点での全社員13名にインタビューをさせて頂きました。(10XCEO矢本さんの評価レポートはこちら)
「CEO」とは、とてつもなく難しい職業です。
事業、顧客、社員、株主、競合、パートナー、全方位的に頭と神経を使わなければなりません。ましてや、スタートアップのCEOは、ほとんどの方が初めて「CEO」を経験しているはずです。しかも、事業も組織もゼロからどんどん拡大し、CEOとして求められるマインドや行動も急速に進化していきます。さらに、スタートアップのCEOはファウンダーであり、組織への影響度は大企業と比べても大きく、CEOの評価≒組織そのものの評価という側面も強いと思います。
一方で、「CEO」をしっかり果たせているか、CEOとしての自分の強み・弱みが何で、何を磨き、何を補うべきか、客観的かつ定期的に振り返る機会って、なかなかありません。
スタートアップのCEOこそ、定期的にフィードバックを得て、成長のPDCAサイクルをスピーディに回していく意味があるのではないかと考えます。
今回の10Xでの取組みは初めての試みで、他のスタートアップで実施されている既存のCEO評価の項目を参考に行ったのですが、運用してみて下記の課題が見えました。
・項目や質問内容が断片的で、網羅的に評価できない
・組織の課題と、CEO個人の評価が混ざっている
・社員数が増えたら、毎回全員にインタビューするのは難しく、定点観測できない
これを受けて、より網羅的な「CEO評価サーベイ」+「組織力チェックサーベイ」を設計し、定期実施してはどうかと提案させて頂いたところ、10Xではこれから半期に1回、社員評価のタイミングに合わせて実施していくことになりました。
今回できる限り網羅的に作成した「CEO評価サーベイ」は、下記の18項目から成ります。(組織力チェックサーベイは、次回投稿の内容にします)
記事の後半で、これら18項目の内容を、解説していきます。
サーベイでは、各項目の質問1文1文で、「スタートアップのCEOのあるべき姿」を定義し、現状どれくらい当てはまるかを社員に回答してもらいます。
また、CEO評価サーベイは、網羅的であることと同時に、定期的に実施することにも意味があると考えています。
事業やプロダクトは、「KPI」の数字に現れてくるので、先行指標をみて、早めに課題を特定し軌道修正したり、打ち手を考えることができます。
一方で、「組織」は少し難しいです。見るべき、考えるべき項目は何か?人数も増えていく中で、何が出来ていないといけないのか?気付いたら組織がボロボロになっていた、、などということも少なくありません。プロダクトKPIのように、CEOや組織力の評価項目をしっかり定義し、定期的にチェックし、先手を打って必要な対策やアクションを検討することは、スタートアップにとって意味があるのではないかと思います。
CEOは誰が評価するのか?
CEOは、普段はなかなか、評価されません。
顧客から会社(事業)の評価はされても、経営者としてCEO個人の評価は受けられません。
オフィシャルには、CEOを評価するのは、ボードの役割です。しかしほとんどの場合、解雇するか否か?に差し迫られたときの話と思って良いでしょう。CEOの成長を目的として、ネクストステップにつながるような定期的な評価は、なかなかされていないと思います。そもそも、ボードへの日頃のエクスポージャーは、限定的です。
CEOには同僚や上司がいないので、自分で客観的に自己評価し、何に時間を使うべきか、どのような人材を周りに配置すべきか、定期的に確認するCEOもいます。
必要に応じて、身の回りの友人や家族、特に欧米ではメンターやコーチに相談するCEOも多いでしょう。
社員にフィードバックを求めるCEOもいます。
Intuitの現会長で前CEOのBrad Smithは、このタイプのCEOでした。従業員サーベイを実施したり、Glassdoor(従業員・退職者が匿名で会社をレビューするWebサイト)へのフィードバック投稿をお願いしていました。非公式の場での会話も、仕切りに"What I could do better"について聞いていたそうです。
大企業だと、社員の目からCEOがどこまで見えているか?というのはありますが、スタートアップはCEOと社員の距離が近いので、社員に評価してもらうのが一番有効そうです。10Xのインタビューでも、社員の方1人1人が、会社に対してものすごい当事者意識を持っていらっしゃるが故に、(これからのスケールを考えた際の)組織イシューがどんどんあぶり出され、株主の立場としても非常に示唆に溢れるインタビューとなりました。
この点で、スタートアップのCEOを評価するには、社員からのフィードバックが最も有効ではないかと考え、社員サーベイという形を取っています。
マッキンゼーが定義する「卓越したCEO」とは?
CEO評価サーベイを設計するに当たり、マッキンゼーが出している"The mindsets and practices of the excellent CEOs"というCEOの評価フレームワークがかなり網羅的だったので、今回評価項目の基にしました。
マッキンゼーには、グローバルで「CEO Excellence」という部隊があり、25年に渡る70ヵ国24業界3,500社(上場企業)の7,800名のCEOに関するデータを持っており、この記事もそのデータを基に書かれています。
このフレームワークでは、「卓越したCEO」を、6つの要素に沿って、18個の行動項目で定義しています。
ただし、これには多分に大企業の文脈が含まれているため、「スタートアップのCEOの場合はどうなるか」を踏まえて、再定義する必要があります。
次の章で、マッキンゼーのフレームワークを紹介しながら、スタートアップ向けにどう再定義したかをお話していきます。
<スタートアップ版>CEO評価サーベイの設計
今回の設計にあたっては、マッキンゼーの6つの要素と18個の行動項目を基に、DCM投資先はじめ、スタートアップに対する弊社のオブザベーションや、50~150人規模のスタートアップ退職者を対象にしたヒアリング(CEOや組織を理由に辞めるケースが多いため)などを参考にしながら、スタートアップ向けに要素を足しひきしていきました。
1. コーポレートストラテジー
マッキンゼーが定義する行動項目:
・Vision<ビジョン>: Reframe what winning means・・・会社にとっての成功とは何かを、野心的に、独自の視点を持って定義しているか
・Strategy<戦略>: Make bold moves early・・・"bold"(=業界の中央値より30%以上シフトさせる)な決定を、いつも早い段階で下せているか
(※マッキンゼー によると、成功と相関する5大"bold moves"は、リソース分配、合併・買収・売却、設備投資、生産性改善、差別化の強化)
・Resource allocation<リソース配分)> Stay active・・・ステージゲート方式で会社の活動をレビューし(年次ではなく随時)、常にリソース配分を最適化しているか
(※10年間で50%以上のcapexを事業部門間で再分配している会社は、それより遅い会社の50%以上のvalueを創出している)
まず、ビジョンや戦略の設定、適切なリソース配分に関する【コーポレートストラテジー】は、スタートアップの文脈でも同じなのでそのまま採用しました。
※全項目で、実際のサーベイ質問文は、スタートアップの文脈も考慮しなるべくわかりやすく書き下しています
2. 組織の整合性
マッキンゼーが定義する行動項目:
・Talent<人材>: Match talent to value・・・社内で最も重要なロールトップ50を認識し、最も適切な人材をそれらのロールにつかせているか
・Culture<カルチャー>: Go beyond employee engagement・・・社員のエンゲージメントや満足度だけでなく、会社のパフォーマンスをドライブする全てのカルチャー要素を厳密に測定し、必要な取組み(ロールモデリング、ストーリーテリング、方針とインセンティブ等の整合、スキル構築への投資等)をしているか
・Organizational design<組織設計>: Combine speed with stability・・・組織の中で変えない部分(価値観など)と、機動的に変えていく部分(人材配置やプロダクト開発等)を明確にわけ、組織の安定性とスピードを両立させているか
目指す方向性に基づいた、人材配置・カルチャー作り・組織設計ができているかをみる【組織の整合性】には、スタートアップを踏まえ、<社内外向けのコミュニケーションの一致>、<目指すゴールと整合した事業成長>という2つの行動項目を追加しました。
<社内外向けのコミュニケーションの一致>
追加の背景としては、スタートアップ退職者にヒアリングすると、辞めた理由の中で「社内外のコミュニケーションが乖離していた」という声がよく聞かれたことが挙げられます。(以下コメント)
・外向けの発信で最初に知るとか、外向けに発信したことを正として中の人たちは動かないといけなくなり疲弊していた
・資金調達がすごくうまい。大きな絵を描いていて嘘じゃないのだが、社内にはストレッチして頑張ろう、という雰囲気を作れていなかった。チームからは、投資家にただ無理そうなゴールをその場しのぎで言って、あとで自分たちが疲弊するように見えていた
<目指すゴールと整合した事業成長>
また、上記の例にある投資家に見せる絵と実態の乖離にも関連しますが、常に急成長が求められるスタートアップだからこそ、掲げている事業のゴールに向かって結果を出せているか、という点は、方向性に基づいた組織(整合性)を保つ上で非常に重要なってくると思います。
3. チームとプロセス
マッキンゼーが定義する行動項目:
・Teamwork<チームワーク>: Show resolve・・・マネジメントが「チーム」として最大限のパフォーマンスを発揮することに強く拘っているか
・Decision making<意思決定>: Defend against biases・・・意思決定の際には必ず複数のシナリオを考慮し、偏見や社会的バイアスが決定に影響しないような防止策を施しているか
・Management process<指揮系統>: Ensure coherence・・・他の役員に権限移譲する中でも、CFO、CHRO、CIOなど個々の役員の方針やプロセスが、会社全体で一貫するように目を配っているか(例:事業部門で長期戦略が設定されているのに、昇進条件は短期的な結果に基づいている状態、等)
チームワークや、偏りのない意思決定、適切な指揮系統で社内一貫した動きができいるかを見る【チームとプロセス】には、スタートアップ向けに<採用力>と<チームの経営スキル>の行動項目を追加しました。
また、<指揮系統>はよりスタートアップを意識して、「大企業化・官僚組織化しないよう、指示や意思決定が複雑で遅くなるのを避けているか」という文脈で入れています。
<採用力>
スタートアップのチーム作りという意味では、採用はCEOの最も重要な仕事のひとつです。優秀な人材を惹きつけ、採用し、辞めずに働いてもらえるかは、人数の少ないスタートアップの存続を左右する要素でしょう。
<チームの経営スキル>
また、チームの経営スキルを上げていくことも、スタートアップの文脈で重要だと思います。起業家は、事業のゼロイチを作った最強の「プレイヤー」だったはずです。しかし、会社が0=>15=>30=>100と大きくなっていくに従い、「経営者」になっていかなくてはなりません。その上で、経営者として足りていない要素をまず認識し、それを身に着けるorそれができる人を経営陣に採用して補う、ということが必要です。
スタートアップのCEOに求められることは、事業のステージや組織の拡大に従い高速で進化していくという点が、初めから大きな組織の経営者として着任する大企業のCEOとは、大きく異なる点だと思います。
ちなみに、「CEOの不足を補える経営陣を連れてこれていない」というコメントは、スタートアップ退職者の辞めた理由からもよく聞こえてきた内容でした。(以下コメント)
・CEOは事業の人で、組織に全く興味なかった。それなら組織ができるno.2を連れてくるべきだった
・マネージャーとして足りないスキルは補う、シニアな人を連れてくる、などすればいいのに、それをしないままimmatureなチームになっていた
・CEOがオフィスにずっといられなくても、社内に会社と役員全体をマネージできる人間がいれば問題ないが、そういう存在もいなかった
4. CEOとしての姿勢
マッキンゼーが定義する行動項目:
・Office<働き方>: Manage time and energy・・・自分の時間と体力を、CEOにしかできない仕事に使えるように、効果的に管理・優先順位付けしているか
・Leadership model<リーダーシップモデル>: Choose authenticity・・・CEOとしてやるべき役割と、人間として自分が何者か("who I am")を、結び付けているか(CEOの決定や選択が、会社のニーズと共に、CEO自身の強みやモチベーションにも基づいている)
・Perspective<謙虚さ>: Guard against hubris・・・他者の率直な意見や自らの心がけによって、自分への過信を防いでおり、CEOの役割が永続的なものではなく、自分自身の世間への重要性や価値を決めるものでないと認識しているか
【CEOとしての姿勢】の項目は丸ごと、【起業家としての姿勢】に置き変え、スタートアップのCEOとして特に重要だと思われる要素を<成長><コミット><KPIフォーカス><規律(事業への集中)><謙虚さ>の5つの行動項目に定義しました。
こちらの項目に関しては、弊社原のブログで「米国VCが好む起業家の7つの特徴」というシリーズ記事(1、2、3)に、学ぶ力・考える力、説得力、聞く力、という観点から、より詳しくVC視点での良い起業家の特徴が書かれているので、そちらもご参照ください。
<成長>
まず「成長」ですが、前述の経営スキルでも触れた通り、スタートアップのCEOは、事業・組織と共に非連続な成長が求められ続けます。誰も正解を知らない不確実な中で、誰よりも学び、仮説検証し、軌道修正し、成長しているかは、非常に重要です。
<コミット>
事業の成功へのコミットも、起業家にとって非常に重要な要素です。最初からうまくいき続けるスタートアップは、ありません。勝つまでやり続ける、という執着が成否を分けると言われています。
<KPIフォーカス>
また、スタートアップのCEOは、起業家として細かいKPIまで理解し、どのKPIが事業にとって最も重要かを認識していなくてはなりません。小さなスタートアップが大手企業より早く成長できるのは、「フォーカス」があるからです。
<規律>
そして、「事業をおろそかにしない」という規律は、当たり前のようで、スタートアップのCEOにとって重要な評価項目だと思います。スポットライトの当たりやすい起業家が、つい有名人などとの会食、遊び、メディア露出等に誘惑されてしまうのは難しくありません。しかし、いくらCEOの名前や会社のロゴが有名になっても、重要なKPIが伸びなければ事業は成長しません。
スタートアップ退職者へのヒアリングで、最も多かった内容のひとつにも「CEOの透明性が低い・事業への集中が見えない」がありました。(以下コメント)
・CEOがなんで忙しいのか、なんでオフィスにいないのか、社員に見えなくて、CEO何やってるの?仕事やってるの?となってた
・リモートワークじゃないのに、オフィスにこない。カンファレンスとかを言い訳に、いろんなところに出張し回っている。メールの返信も全然返ってこない
・CEOがオフィスにいないこと(または部屋に入りづらいこと)。CEOが何の仕事してるのか、そもそも仕事してるのか社員に見えなかった
<謙虚さ>
最後に、「謙虚さ」です。これは、マッキンゼーの定義にも入っています。
弊社原のブログでも聞く力について書かれていますが、事業が軌道に乗り始めてからこそ、CEOが傲慢にならずに、反対意見や耳の痛い意見も真摯に受け止めらているかが、成長カーブを描き続ける上で重要になっていきます。
スタートアップ退職者からも、謙虚さや聞く耳を持っているかに関する声は多く聞こえてきました。(以下コメント)
・カリスマはあったが、見方によっては調子に乗っているようにも見えて、メンバーのグリップが弱かった
・CEO個人が「教祖化」していて、信者になれないと辛いみたいな感じがあった。実態が伴っていないのに、「自分たちはすごい」「人にこんなに評価されている」と週次の朝会で聞くのがつらかった。空虚な感じ。入り込めると幸せだけど、俯瞰してみていると辛いかも
・あまりにも独裁的で、会社にとって大事な人がどんどんやめていた
・人に興味がなく、メンバーの帰属意識を醸成できてなかった
5. ボードマネジメント/ 6.外部ステイクホルダー
社員から見えにくい【ボードエンゲージメント】と【外部ステイクホルダー】の項目は、今回のサーベイからは除外しました(ここは、社員サーベイでなく、経営陣や株主が中心となって評価すべき観点かと思います)。
マッキンゼーが定義する行動項目(ボードマネジメント):
・Effectiveness<ボードの有効活用>: Promote a forward-looking agenda・・・取締役会の時間を最大限有効活用するため、過ぎたことの報告でなく、先のことを議論できるアジェンダを設定しているか
・Relationships<関係構築>: Think beyond the meeting・・・個々の役員に対して透明性を高く保ち、強い信頼関係性を築き、経営陣と役員それぞれの責任を明確にしているか
・Capabilities<知見・能力のレバレッジ>: Seek balance and development・・・特定の専門分野や経験を指定したり、新しい役員にはオンボーディングを行うなどして、役員が事業を正しく評価し、効果的にサポートできるように促しているか
マッキンゼーが定義する行動項目(外部ステイクホルダー):
・Social purpose<社会的意義>: Look at the big picture・・・会社の存在意義を考え、言語化し、推進しているか
・Interactions<外部との関わり>: Prioritize and shape ・・・会社にとって重要な外部ステイクホルダーにアクションを促すため、彼らとの関わりをプロアクティブに計画・優先順位付けし、コミュニケーションしているか
・Moments of truth<危機管理>: Build resilience ahead of a crisis・・・効果的なリスク管理やガバナンス構造を担保するため、リーダーの役割、war roomの構成、レジリエンステスト、アクションプラン、コミュニケーション方法などを含んだ危機対応プレイプブックを用意しているか
追加質問
サーベイの最後に、上記の評価項目に加えて、10Xのインタビューで弊社の原が投げかけた質問が、「CEOが社員からどう見えているのか」「普段言いにくいがあえて言うならどんな課題があるか」を見事にあぶりだすものだったので、自由記述質問として付けてみました。
(10XのCEO評価インタビュー結果はこちら)
結果の見方
このように設計したCEO評価サーベイは、全社員に「非常にそう思う」「そう思う」「どちらとも言えない」「そう思わない」「全くそう思わない」の5段階で答えてもらい、その平均点を出す想定です。
評価ではありますが、全ての項目で5点満点を目指す必要はないと思っています。低かったらダメ、というわけではなく、事業ステージ、現状の組織規模、目指す姿などによって、高く出る項目・低く出る項目、それぞれあると思います。
例えば、まだ事業が軌道に乗っていないうちは、[事業]の項目は高くつきようがないでしょうし、組織が10人のうちは、[指揮系統]をシンプルにするまでもないでしょう。
それらを加味した上で、直近半年なり1年で、CEOとしてどういった点を磨き・補うべきか、優先すべき取り組みは何か、を議論する材料にしてもらうイメージです。
ちなみに、前述のマッキンゼーのフレームワークでは、各項目について、"Challenged (課題あり)" "Able (人並み)" "Excellent (卓越)"である状態の3段階を定義していますが、
全てを"Excellent(卓越)"にしようとする必要はない。
グローバルのベストプラクティスは、18個の行動項目のうち、2-3個が"Excellent"で、他は全て"Able(人並み)"で、"Challenged(課題あり)"は0個
とされています。この点は、今回設計するスタートアップ向けのサーベイでも言えることかなと思います。
また、このサーベイを、定期的に実施し、過去との差分に注目することも意味がありそうです。
事業が軌道に乗ってきたら、[事業]の項目がグッと上がるでしょうが、もしかしたらCEOが傲慢になって、他人の意見を聞かなくなってきて、[謙虚さ]が下がってしまうかもしれません。
組織がコンパクトなうちは特に課題に映っていなかった[チームの経営スキル]が、30人を越えてきてから点数が下がるかもしれません。
こうしたサインに、早く、ある程度客観的な指標を基に「気付ける」ということは、非連続な成長を迫られるスタートアップにとって、とても重要なのではないかと思っています。
サーベイの運用
投資先の10Xでは、こちらのサーベイを、社員評価の時期と合わせて半期に1回、全社員に対して行っていく予定です。他の投資先でも、希望次第で実施していければと考えています。
DCMから社員の皆さんにオンラインでサーベイを送信し、匿名で回答いただき、個別結果は開示せず、質問ごとの平均点・最低点・最高点、及び自由記述だけをフィードバックしていく形を考えています。
20名以上の会社であれば、回答のはじめに最低限の属性を入れてもらい、属性ごとの平均比較などもできると良いかなと思います(biz、エンジニア、など)。但し、センシティブな内容なので、n=10人以上のグループにならなければ開示しない方針です。
また、CEO個人を評価する本サーベイ(18問)と合わせて、高いパフォーマンスを出し続けられる土台作りができているかを客観的に測定する、組織力チェックサーベイ(33問)も実施したいと考えています。
この、組織力をスタートアップでどう定義し、どうチェックしていくかは、【次回投稿】で書きたいと思います。
ということで、初回の投稿はかなり長くなってしまいました。。。
ここまでお付き合いいただいた皆さま、本当にありがとうございました。内容について、もしご意見やご感想などございましたら、ぜひお声がけ頂けると有難いです。(メッセンジャー)
初ブログを書くにあたって、アドバイスくださった方々には心より感謝申し上げますmm
また、今回のテーマに限らず、毎月Office Hourも開催していますので、こちらのリンクよりお気軽にご応募ください:)
しかし今回の内容を考えながら、改めて、スタートアップのCEOって本当に難しい仕事だ、、と痛感しました。
ゼロから非連続なチャレンジに立ち向かい続け、自らも非連続な成長を遂げている全てのスタートアップCEOの皆さんを、心から尊敬します。