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1on1はまるで「月1回の妻とのディナー」?一言で、何かに喩えるとわかること

「あなたにとっての1on1とは?一言で、何かにたとえると?」

1on1の研修を行ったとき、こんな質問をすることがあります。この質問の答えから、その人が1on1をどう受け止めているのか、また、1on1の本質を理解したかどうかよくわかっておもしろいので、今日はこんな話をします。

  • 「1on1とは?」ひとことで表現してもらうと、理解度や実践状況がよくわかる!

  • 研修前後で「1on1とは?」を比較してみると、研修効果もわかるよ

  • 何かにたとえることを通じて、学習したことが定着する?!


1on1とは朝食?ラーメン?ディナー???

先日、1on1研修のこんな話を書きました。

この時、参加者の中には、2年前の導入研修以降、1on1をちゃんとやっている人たち、やっていない人たち、今回研修を受けるのが初めての人たちが混在していました。

1on1に対する理解や意識がどの程度のなのか、研修開始の時点で把握したいと思い、アイスブレイクがてら聴いてみました。

「あなたにとって1on1とは?何かにたとえて一言で表現してみましょう!」

ちょっと考えて、みなさん書き始めました。ポストイットに書いてもらっているところをまわってみてみると・・・

「気づきの場」
「きっかけ」

まあまあ、いい感じです。1on1の目的である「振り返りによる成長のサポート」が意識できているようです。

「懺悔室」
「要求」

むむむ?部下が懺悔してきたり、要求をつきつけてきたり。そんな場になっているのかな?1on1に対するネガティブなイメージが伝わってきます。

「朝食」
「ラーメン」

どゆこと?

「朝食:食べたり食べなかったりする日もあるけど、食べたら力が出る」
なるほど!1on1を良い効果があるもの、と捉えているけれども、定期的には実施していないことがうかがえます。

「ラーメン:相手によって味やトッピングが変わるように、話題も違って進め方ややり方も違う」
複数の部下に対して、試行錯誤しながらやっている様子や、ラーメン好きとのことなので、1on1をポジティブに受け止めていることがわかります。

思わず吹いたのが
「月1回の妻とのディナー」
!!!!
この方が1on1をどのように捉えているか、説明しなくてもわかる秀逸な回答です。

月1回、部下の「ガス抜き」のために義務感で行い、もちろん楽しい話題もあるんだろうけれども、愚痴や興味のない話もあり、それを「うんうん、そうだったんだ、たいへんだったね。」と自分は言いたいことをがまんしながらうなづいている。

そんな感じのことが伝わってきます。
妻(部下)の立場で考えてみると残念な感じもしますが、研修参加者は9割以上が男性で、こんな表現も出てきてしまうのかもしれません。

って、ここは「大喜利スキルアップ研修」ではありませんよ!

とまあ、こんな感じだったのですが、言いたいことは、
1on1を何かにたとえて一言で表現もらうと、その方の理解度だけでなく、感じている印象(ポジかネガが、どちらでもないのか)、日頃どんなふうに進めているのか、あるいは進めていこうとしているのか、そんなことが見えてきます。

このように研修の冒頭にこの問いに答えてもらうことで、どこに重点を置いて伝えればいいかが見えてきました!

1on1とは灯台!上司と部下のピットイン!

ちなみに、研修終了後、1on1を5回ほど現場で実施して、部下の変化、自分の変化などの手ごたえを感じられている方々であれば、こんな回答になります。

灯台
部下を明るく照らしながら、時には進んでいく方向を示す様子が伝わります。希望も感じられますね。

上司と部下のピットイン
カーレースでぐるぐると回っているとき(忙しい業務の合間)に、さっと両者が立ち止まって、調整して元気になって、またカーレースに戻っていく。そんな様子がわかります。

こんなものもありました。
びっくり箱
何が1on1の話題として出てくるかわからない怖さやドキドキももあるけど、それ自体、楽しんでしまおう!ということなんだとか。上司側の気持ちがよく表れています。

「自分の期待通りの話題や回答ではなかったときに焦ってしまう」とおっしゃる方も多いのですが、1on1は部下のための時間。「想定外を歓迎する姿勢」を上司が持つことはめちゃくちゃ良い!なんてことに、私も気づかされた一言でした。

と、研修の効果もこの「一言」にぎっしり詰まって見える化されるのです。

なお「びっくり箱」の話はこちらに書きましたのでご参考に。

何かにたとえると学びが定着する、その理由


「あなたにとって1on1とは?」という問いのおもしろさが伝わったかと思うのですが、実はこの「何かにたとえる」という行為は、新しいものの見方・考え方を学習したとき、それを自分なりに理解し、定着させ、行動を変えていくための、大事な働きかけであることが研究からもわかっています。

「変容的学習」の研究者、ジャックメジローは「大人の学びと変容」という本の中で、

ーーー
自分の持つ「枠組み」が大きく変わる経験をしたとき、それを「メタファー(比喩)」で表現することができると、「違和感のある経験」を「自分の経験」として理解できる
ーーー

という主旨のことを述べています。

私の1on1研修では、「1on1とは部下の『振り返り』を促し、成長を支援することだ」と繰り返し強調しています。

「振り返り」とは、いったん立ち止まり、過去(主に前回の1on1から今日まで)を見て、部下が自分の言葉で語ること。上司の役割は、部下が自分の経験や思いを話すことをサポートし、部下の頭の「交通整理」をすることです。ただ単に「なんでもいいから話したいことをどうぞ」ではありません。もちろん業務相談・指示の場でもありません。

なぜ「振り返り」を重視しているかはまた別の機会にお伝えするとして、この「振り返り」という「新しい概念」に出会い、また、「1on1で振り返りをサポートする新しいやり方」を教わった時、また実際に職場でそれをやってみる時、少なからず、違和感や混乱を感じるはずなのです。

これでいいのか?
できてるのか?
うまくいかない・・・
やっぱりこのやり方はやめようか

それでも試行錯誤をしながら、うまくいった日もあったりして光も感じ始めたころ、この「何かにたとえる」ということをやって、「あー、まさにそれ!そういう感じ!」という体験をすると、

  • 「振り返り」という新しい経験・枠組みを、

  • これまでに自分のよく知っているモノ・コトで表現することで

  • 自分の中に違和感なく取り込むことができ、

  • 行動が変わる

というわけなのです!

この「あー!それそれ!まさにその感じ!」という「たとえ」が見つかるということは、相手に伝わりやすいだけでなく、自分が新しいことを学んで変化している証であり、そちらに向けて行動を変えていくパワーにもなるのですね。

ということで、今日は

  • 「1on1とは?」ひとことで表現してもらうと、理解度や実践状況がよくわかる!

  • 研修前後で「1on1とは?」を比較してみると、研修効果もわかるよ

  • 何かにたとえることを通じて、学習したことが定着する?!

こんなことを書きました!

さて、今年もそろそろ年末を迎えます。
今年1年を漢字一文字でたとえると?来年はどうしたいか漢字一文字で表すと?
なんてことも、1on1でやってみると、良い振り返りになるのではないでしょうか?

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