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No.111 旅はトラブル / 由理くんよ!これがパリの灯だ(1)旅の準備

No.111 旅はトラブル / 由理くんよ!これがパリの灯だ(1)旅の準備

1993年、連れ合いの由理くんと2回目のヨーロッパへの旅をする。高校の授業でフランス語をかじり、結婚後もアテネフランセに通ったりして、本人の弁だと「英語よりはるかにマシ」の由理くんが一番訪れたいと常日頃言っていたフランスが行き先であった。「ナポリは見んでもいい。パリを見て死ね、やね」。「ナポリを見て死ね」の言葉をもじった由理くんの憧憬の地はパリだった。

ちなみにこの記事のタイトル「由理くんよ!これがパリの灯だ」も、大西洋単独飛行を成功したチャールズ・リンドバーグを描いた映画の邦題名「翼よ!あれが巴里の灯だ」を拝借したものだ。

その3年前のイタリアへの旅はnoteの記事の中(No.044 No.048 No.086 )で度々触れたように、「旅はトラブル」を望む僕への天からの贈り物かと思うほどトラブル続きの楽しいものだった。旅の前に、友人たちからイタリアは泥棒さんたちが多いと、さんざ脅かされたので、お洒落を控えた為に楽しめなかったところがあった。そのリベンジとばかり、今回のフランスへの旅は、お洒落番長由理くんと「明日には明日の風が吹く!たった一度の人生だ!」とばかりの、贅沢しようぜを範とする計画を立てていった。

とは言っても、残念ながらお金を湯水には思えない。抑えるところは抑える楽しみもある。ツアー旅ではないし、本からの情報で面白いものがあった。個人でも、ヨーロッパの一流ホテルと言えども値引きの交渉はできるとのことだった。1990年代、まだそのような楽しみができたのだ。道端での露天商との掛け合いの、丁寧語を使った気取り屋さん版だ。

誰が言ったか「旅は準備段階の方が楽しい」。ミシュランガイドを洋書売り場で求める。ページをめくり、ホテルの場所などから、街の様子を想ってみる。これだけでも楽しい。

パリシャンゼリゼ通りの凱旋門から遠くない4つ星か5つ星ホテルに3泊の予定を立てた。5つほどのホテルを候補にあげ、スノッブな前振りの英語の後に、本題の「値引きは可能か?どのくらい値引いてくれる?」の、日本人らしからぬ文言をつけ、Dear Manager、それぞれにFAX送信した。

受信のFAX音もパリから送られてきたみたいだ。20%引きのホテルが1件、30%引きのホテルが3件、45%引きのホテルが1件だった。45%引きのホテルからの返信を見ると「現在工事中ゆえの大幅値引きであります」流石に騒音の程度が心配で、このホテルは除外した。最終的に「ホテルヴェルネVernet」に旅の最初の3泊を充てた。正規料金の30%引きだ。交渉はしてみるものだ。あとは様子を見て、南フランスに足を伸ばしてもいいね、合計11泊の旅、後の宿泊8日はフランスに行ってから決めることにした。

パリのオペラ座は行こうね。ミシュランの星付きレストランはランチでもいいから行こうね。もちろんルーブル美術館とオルセー美術館は行こうね。シャンゼリゼのウィンドーショッピングにも行こうね。我々の旅としては珍しく「どこどこ行こうね」予定の多い旅となる。

「由理くん、オペラ座には着物で行ったら。僕は和服じゃないけど」「ええね、しんくんは蝶ネクタイしたらええやん」「うん、それならレストランも大丈夫だね」「スーツもバッグも靴もええもの必要やね〜」かくして旅行用ケースはパンパン状態間違いなしだった。

さて、今回の旅は、前のイタリアへの旅よりは準備周到だぞ。

トラブルは・・・やはりあるのだ。
どうも僕の人生はトラブルが多いのだ。
冷静に判断すると、僕の「そそっかしさ」が主な原因なのだが。

・・・続く

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