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No.044 旅はトラブル / 家具を求めてイタリアに(2)

No.044 旅はトラブル / 家具を求めてイタリアに(2)


ミラノ空港に到着し、タクシー乗り場に向かった。連れ合いの由理くんもしんやも初めてのヨーロッパだった。ファッションの街ミラノの印象がくつがえされた。空港内のトイレは汚れているし、明かりが暗めで、壁の色なども含め、薄暗い印象であった。

タクシー乗り場に着いて、その思いを強くした。次々と来るタクシーは正規タクシー以外の、いわゆる白タクも多かった。30年以上前の話です。今は変わっているのでしょうか?タクシー待ちの行列に並んだ我々の後ろに、若い日本人のカップルが並んだ。話してみると、偶然にも宿泊ホテルが一緒だった。

出発前、旅行会社のカウンター。初めてのヨーロッパ、旅行会社のアドバイスに従い、往復チケットをとり、最初の二泊ミラノでのホテルは三ツ星ホテルをとった。「十分だと思いますよ」。「十分」の定義を聞いておくべきだった。

成田を出て約13時間後。ミラノ空港タクシー乗り場。由理くんとしんやの乗ったタクシーに続き、知り合った若い二人のタクシーが続く。信号待ちで、横に停まった二人のタクシー。窓越しに手を振り合う。すると、若い二人の乗ったタクシーは右方向に曲がっていく。我々のタクシーは直進に近く、やや左方向に進む。泊まるのは同じホテルだ。直感で思った「遠回りの道を行き、高いタクシー代金を取るつもりだな、このドライバーは」。

ホテルの名前を繰り返す。帰ってくるのは、甲高いイタリア語(だと思う)である。さっぱり分からん。古臭いタクシーのメーターが、ガシャガシャとやけに早く加算されていくような気がする。隣に座る由理くんが言う「どこ行くんやろね」。心配しとらんのかいな〜。

ホテルに到着した。由理くんに動かないように指示し、ホテルのフロントへと急ぐ。フロントに着くやいなや、挨拶も無しに、 “What's the taxi fare from the airport to this hotel?"「空港からこのホテルまで、タクシー代金はいくらですか?」フロントマン「はっ、なんのことですか?」タクシーが待っている、ともかく一緒に来い。フロントマンとタクシーの運転手が話し始める。タクシーの運転手がこちらを指差し、怒鳴るように話している。

若い二人の乗ったタクシーは、ほんの少し前にホテルに着いたと言う。違うルートで、ほぼ同時に着いたようであった。遠回りではなかったようである。不思議なもので、向こうの若い二人ではなく、こちらが騙されたと思うものなのですね。タクシーの運転手は「あの東洋人、車内ではブー垂れるし、降りたら金も払わずに走り去った」と、こちらに負けずにブー垂れていたのでしょうね。

なんとかホテルの部屋に入ると、シャワーのみバスタブが無い。部屋も広くない。三つ星ホテルってこんなものなの?一難去って、また一難。今度は、由理くんがブー垂れた。こちらの方が数倍怖い。若い二人の部屋に電話をかけ、聞くとバスタブがあると言う。フロントに電話をかけ、部屋を替えて欲しいと言うと、明日の部屋チェンジは可能だが、今日は満室で無理だと言う。諦めざるをえなかった。救いは、英語でなんとか文句も言えるようになっていた事か。

ブー垂れ由理くん「フィレンツェでは絶対いいホテルに泊まる!つまんない!」お洒落で贅沢な人なのです、由理くんは。部屋の窓から外を見ると、小雨が降り始めた。ヨーロッパでの初めての夜、居心地も良くないベッドで横になる。明日は、旅の一番の目的、イタリア家具を現地で安く買うために、ミラノの中心地にあるインテリアショップを訪れる。アポイントメントも無い、住所しか知らない、売ってくれるのだろうか。長い飛行時間と時差からの疲れがありがたかった。最悪の気分も明日への不安も吹き飛ばす眠気が襲ってきた。

・・・続く

※参考に、上記の前の部分を下に記しておく。

No.014 家具を求めてイタリアに(1)

四階自宅の改装の話に戻す。椅子やテーブル、ソファなどの購入を考えた。都心のインテリアショップを見て歩いた。メイドインイタリーの家具に触れて、その大胆なデザインと色彩感覚に魅せられた。欧米の有名建築家は家や建物を設計するだけでなく、椅子などの家具なども設計して、それぞれ名前が付けられているのも知った。値段を見て驚いた。椅子やソファなどを揃えたら、車が買える金額になる。それにしても美しいね、由理くんと二人、顔を見合わせてうなづいた。購入は保留、インテリア雑誌などから、もっと研究だね。海外雑誌のコーナーで「Casa Vogue」を買い求める。

ページをめくるたびに、ため息だ。家具って美術という名前を持つ日用品なのですね。雑誌なので、広告も多く載っている。Saporiti、Cassina、Driadeなど家具ブランドの多くがミラノやローマにショップがある。イタリヤ現地での値段を調べると、日本での約三分の一だ。そんなに安いんだ、でも運賃などが高いのだろうな。運送会社に勤める友人に連絡、大雑把な見積もりをしてもらうと、運賃を入れても半額以下で済むことが分かる。イタリアから送るのは、個人でもできるのも確認した。

由理くん、どうする。日本で買う場合との差額で、イアリア旅行できるね。行くに決まってるやん。由理くん、こういう時は関西弁が出るのです。二週間後。急用ができました、お店臨時休業です。初めてのヨーロッパ、果たして家具は無事買えるのか。家具屋さんの住所が書かれた「Casa Vogue」の紙片はパスポートと同様の扱いだ。我々を乗せたアリタリア航空機はミラノへと向かう。

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