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No.039 大市・京都スッポン料理

No.039 大市・京都スッポン料理


江戸元禄年間創業、今日まで340年、建物もいくつかの改装以外当時のままという。京都の老舗すっぽん料理店「大市」には、二度訪れている。初めて訪れたのは、由理くんのお姉さん夫婦と由理&しんやの四人で「京都食べ歩き一泊四食の旅」の初日、夕食に選んだ時だった。

暖簾が出ていなければ民家としか見えない家屋のひき戸を引く。「おこしやす」仲居さんの柔らかな京都弁に導かれ、タイムトリップをしたような雰囲気抜群の廊下を、四人は奥へと進んだ。今はテーブル席もあるようだが、我々の席は和室、自分にとっては苦手のアグラか正座での食事となるが、書院作りの部屋にはこちらがお似合いだ。

スッポン料理というと、生き血を飲むことが、コースの一つとして供される事を連想する方も多いようだ。「大市」での料理は「○(まる)鍋コース」のみ、その中に「生き血」は無い。コースはシンプルそのもの、座ると程なく部屋に運び込まれるスッポン鍋二回と雑炊、お漬物とデザート、はい、おしまい、豪胆な食事であった。気取った描写は「大市」のスッポン料理には似合わない。グツグツに熱されるスッポン料理に耐えられる土鍋が「大市」の宝だと言う。鍋、雑炊いずれもメチャクチャ美味い。我々に出してくれた千枚漬けも絶品だった。

う〜む、美味しかった、そして凄かった。店を出て、すぐにもう一度食したいと思った。

それから2年後の秋、由理くんと二人で二回めの「大市」を味わう。前回と同じ部屋に通された。料理が終わるまでに違っていたのは、隣に姉夫婦がいないことと、この日の「大市」のお客さんが少なかったことくらいだった。暇だったのであろう、女将さんが部屋に入ってこられた。「おこしやす、どちらからどすか?」「東京からです」

話が弾んだ理由の一つは、福島の母ユウ子が長く「大市のスッポンドリンク」を、お店から取り寄せていたからだろう。母ユウ子の話をすると、「ああ〜、いわき市の…」、珍しかったのだろう、すぐに思い出してもらえた。お勘定の前に、女将さんが「お名刺いただけますでっしゃろか?」仕事の名刺も持っていないのだ。持っていないと答えると、女将さん「そうでっしゃろなあ。プライベートの時は持ってへんでっしゃろな」。うん?ちょっとトゲがあるような…?

お店を出て、由理くんと二人、すっかり涼しくなった秋の風に吹かれ、京都の灯りに照らされ、余韻を楽しむようにゆっくりと歩いた。しんや「美味しかったね。やっぱり凄いわ〜。でも、女将さんが言った名刺の件、ちょっとひっかかったね」由理くん「あれ、われわれ(由理くんはこういうことが多かった)のこと、夫婦と思ってなかったよ。京都不倫旅行と思ったんとちゃうかな」しんや「ん、どうして、そう思うの?」由理くん「だってさ、しんくん、由理くんって呼び合ってるやん。しんくん時々私のこと、キミって呼ぶしさ」なるほど〜、京都流のセリフの洗礼を受けたわけか。苦笑いプラス微笑んだことが懐かしい。

二度目の訪問の話、読み返していて、ちょっと恥ずかしくなりました。「誰が読むのを前提に書いてるねん!書かんでよろし!」由理くんの声が天から聞こえてくるような・・・。

※写真は、京町屋一棟貸しの宿「洛龍菴」さんのブログに掲載されたものです。
 ご厚意により、使用させていただきました。


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