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No.043 坂井善三商店・手作り漬物のお店

No.043 坂井善三商店・手作り漬物のお店


池袋から東武東上線各駅停車に乗り、四番目「中板橋駅」で降りてください。階段を上って左手北口、改札口を出たらメールか電話をください。迎えに行きます。二つ前に「下板橋駅」、二つ後に「上板橋駅」があるから間違えないようにしてくださいね。

我が家に電車で来る人には、このように伝えます。この街「中板橋」通称「なかいた」の商店街にある一軒のお店の話をします。よく行く店です。坂井善三商店さん、お漬物屋さんです。漬物の専門店は、都内だけではなく、全国的に見ても大分減りつつあるのではないでしょうか。

手作り無添加の、とっても美味しいお漬物を提供してくれています。しんやがよく買うのは、創業以来70年にわたるヌカに漬けられたキュウリ、カブ、ダイコン 、長芋などです。人気番組ケンミンショーを初め、TVでも幾度か紹介されたので、結構知られるお店になりました。番組内では、トマトの漬物などが取り上げられたりしていましたね。タレントの方なども、お忍びで訪れているようですよ。

中板橋は、いわゆる大手外食チェーン店が少なく「暮らしの手帖」では、戦後すぐの雰囲気が残っている商店街として特集されたこともあります。聞いた話ですが、板橋区の官公庁の中心の「大山駅」が一つ隣り池袋駅寄り、一つ向こうに高級住宅街もある「ときわ台駅」の二つに挟まれているので、多くの大手チェーンが進出しないようです。モスバーガーは、戦略として、地域の中心地以外に出店するそうですが、中板橋駅南口前にあるのは、その話を裏付けしているようですね。

改装前の坂井善三商店さんは、店頭に商品のお漬物がたくさん並べられている、昔風なお店でした。背が高く白髪が素敵な善三おじいさんと、誠実さが滲み出ている京子おばあさんのお二人が店頭に出て、お客さんとにこやかに話している姿が懐かしいです。京子おばあさんは、ご健在ですが、善三おじいさんは2年前にお亡くなりになりました。合掌。

連れ合いの由理くんの体調が優れなくなってきた頃から、しんやが買い物に行くようになりました。学習塾は、学校の終わる夕方から忙しくなります。昼間に、しんやは薄緑色のイタリア製愛車ビアンキ(自転車です)で、近所を暴走族して買い物にいきます。カッコつけてレイバンのサングラスをかけ、冬には長いイエローのマフラーをなびかせて走ります。

しんやがいつものように、カッコつけて、善三商店さんの前に愛車ビアンキを止めます。ちょくちょく来るようになったサングラス姿のしんやに、善三さんが声をかけます。「旦那さん(しんやのことのようです)も大変だねえ〜。退職してから時間あるのかねえ」。定年退職しているように見られたのですね。若いつもりしてサングラスかけて、お洒落しているのに〜、もー!「いやですね〜、まだバリバリ仕事してますよ」「へえ〜、どんな仕事しているんだい」しんや「夜の仕事ですよ」実際、学習塾は夜の仕事と言って良いでしょう。善三さん「はあ〜、夜の仕事ねえ〜・・・」

善三さん、おそらく思ったのでしょうね。「このサングラスのオトコは、スナックかなんかやっているんだな。うちのキュウリやダイコンをトントン切り、小皿に盛って五切れ500円くらいのボロい値段つけて生活しているんだな〜」・・・違うよ〜、ちゃう〜って!由理くんと自分で食べるの。お宅のお漬物、抜群に美味しいから買いに来てるの〜。

次に行った時、善三さん「塾やってるんだってねえ〜」バレてました。坂井家の食卓の話題になったのでしょうね、あのサングラスの怪しいオトコのことが。

5年前に改装、古木をふんだんに使った落ち着きのある店構えになりました。入り口の引き戸も、店内の天井も素敵です。すっかり様変わりしました。以前の昔ながらのお店の時から、クラシック音楽がかかっていました。ちょっとアンバランスな感じが面白かったです。今のお店にはboseのスピーカーも似合っています。お漬物の味は変わっていません。いや、以前よりさらに美味しくなっています。善三さんの息子さんキヨタカさんは、研究熱心です。

改装前のある時、聴き慣れた独特のピアノの旋律が、お店に流れていました。しんや「グレン・グールドのピアノですよね?」キヨタカさん「えっ、わかるんですか〜、初めて言われました〜!」しんや「バッハのパルティータかな?」「えー、そうですー!」しんや、ピアノ全然弾けません。音痴です。グールド大好きです。たまたま知っていただけです。黙っていられない性質(たち)なのです。

自分の家の近くに、いいお店があることは本当に幸せです。善三商店のみなさんーキヨタカさん、奥さんのさちえさん、妹のさかっちさん、京子おばあちゃん、いつまでも美味しいお漬物を作ってくださいね!あたたかいお店でいてくださいね!よろしくお願いしますー!

※写真は、坂井善三商店さんの改装を請け負った建築会社「山翆舎」さんのご厚意により、使用させていただきました。

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