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みんなでもっとリサーチするために:リサーチカンファレンス開催の経緯とそのねらい

こんにちはあるいはこんばんは、木浦です。普段はアンカーデザインというデザインリサーチやUXリサーチなどが大好きなデザイン会社を経営しています。

時が経つのは早いものですでに1ヶ月半が経過しておりますが5月末に開催されたデザインリサーチやUXリサーチをテーマとしたカンファレンスである「リサーチカンファレンス」の事務局メンバーも勤めさせていただきました。今日はその話をメインに書いていきたいと思います。

まずはリサーチカンファレンスに参加いただいた皆様、貴重な経験をシェアしてくださった登壇者の皆様、スポンサーとなってカンファレンスを支えてくださった皆様、そしてカンファレンスの運営に尽力してくださったスタッフの皆様に、改めてお礼を伝えたいと思っています。本当にありがとうございます。

このnoteを読んでくださっている方の中にはリサーチカンファレンスってなんだろう?という方もいらっしゃると思います。リサーチカンファレンスのnoteで当日や、各セッションの様子について紹介させていただいていますので是非ご覧いただけますと嬉しいです。

さて、リサーチカンファレンス発起人のひとりとしてリサーチカンファレンスについて書きたいことは山ほどありますが、このnoteでは、カンファレンス開催に至る背景と、狙いについてご紹介します。なお、これらはnoteなど文字で書くのは初めてですが、過去のイベントなどではお話ししたことがあり、一部重複する部分はあることをご了承ください。

リサーチカンファレンス開催への経緯

私がリサーチの世界に足を踏み入れたのは2007年頃、その後デザインリサーチやUXリサーチについて様々な印象深い出来事がありましたがそれら全てを仔細に書いていくと分量がとんでもないことになってしまいますので、ひとまず今回のカンファレンスを開催するにあたって大きなものをご紹介することにしましょう。

デザインリサーチ/UXリサーチ本の出版

まずは、私の書いた「デザインリサーチの教科書」や、同じくカンファレンスの発起人である松薗さん、草野さんの「はじめてのUXリサーチ」など、ここ数年でデザインリサーチやUXリサーチに関連する書籍が立て続けに発売されていること。これらの書籍は大変多くの方に読んで頂いており、本当にありがとうございます。

 UX Research Inquiryイベント開催

書籍の出版以前もデザイン界隈のイベントなどで松薗さん、草野さんとお話しする機会はありましたが、本の出版をきっかけにして昨年秋に開催したUXリサーチをテーマにしたイベント「UX Research Inquiry vol.2 ユーザー理解のために大事なこととは?」を開催させていただくことになりました。

テーマとしてのUXリサーチは少々ニッチなところもあり、参加者が100人ぐらい集まってくれるといいな、と思っていたらなんと1000名近い方々に申し込みを頂くことができました。

登壇者のひとりでありながら、リサーチをテーマとしたイベントにこれだけ多くの方が参加してくださるというのは大変な驚きであり、今後のリサーチ業界の盛り上がりを予感させるものでした。

リサーチカンファレンス開催に向けて

登壇者の方々と話をするうちに、もう少し大きなカンファレンスをやってもいいのではないか?という空気感ができてきました。それが2021年の12月。思えばあっという間でした。

リサーチカンファレンス開催のねらい

UXリサーチやデザインリサーチに対する興味関心が高まっていることは大変ありがたいことであるのですが、社会をより良くするためには、UXリサーチやデザインリサーチを一過性のブームで終わらせないために、この盛り上がりを絶やさず広げていく必要があると感じています。

なお、よく聞かれることでもあるのですが、重要なのはUXリサーチやデザインリサーチといった名称ではなく、良いプロダクトやサービスを作るためにはユーザーやステークホルダーのことを知り、彼らと一緒にプロジェクトを進めるのが大事だよねというマインドセットやカルチャーであると考えています。

そのためにそれぞれの私たちに何ができるのか、あるいは何が必要なのかを考えてみると次に示すような事柄ではないかと思っています。

組織を超えて学びあう機会をつくる

昨今様々な組織の中でUXリサーチやデザインリサーチに注目が集まり、必要性が認識され、取り組まれている現状があるとはいえ、いまだ多くの企業では専任のリサーチャーがいなかったり、あるいは専任者がいたとしても1人しかいない、ということも珍しくないはずです。

そのような状況では、どのようにリサーチに取り組んで行けばいいか、どうすればもっと上手に、効率的にリサーチを実施することができるのか?そもそも自分たちのやり方は適切なのか?このようなことを振り返ることすら難しいのも実際のところではないかと思います。

このような状況において我々リサーチャーが学び合い、成長するためには、知識や経験、ノウハウを囲い込むのではなく、業界横断的にそれらを共有して、組織は違えどチームとして学び合う姿勢が必要でしょう。

良いサービスを作るためにみんなを巻き込む

良いサービスを作るために必要なものは何か。当たり前ですがUXリサーチャーやデザインリサーチャーだけではプロダクトやサービスを世の中に送り出すことはできません。

プロダクトやサービスを開発するためにはエンジニアさんの力が必要ですし、開発したプロダクトやサービスを顧客に届けるには広報や営業担当者の力が必要かもしれません。あるいはプロダクトやサービスをより適切に活用していただくためにはカスタマーサポートやカスタマーサクセスと呼ばれるようなポジションの方々が大きな役割を果たすでしょう。他にもここで触れなかった様々なポジションの方々の力が必要です。

つまり、リサーチで得られた成果をリサーチャーだけが把握しておけば良いのではなく、プロダクトやサービスに関わる様々な立場のチームメンバーと共有し、プロダクトやサービスづくりに反映させることが必要であり、そのためには、多くの立場の人にリサーチの価値を理解していただく必要があります。リサーチャーだけがリサーチに取り組めば良いのではなく、様々な立場の人でチームを組んでリサーチに取り組まなければならないのです。

また、プロジェクトを進める上で巻き込むべきは社内に留まりません。リサーチすることで、良いサービスが生まれるんだと理解頂き、様々な形でユーザーやその周囲の方々にも協力を得る必要があるでしょう。良いものを作るためには、リサーチそのものも重要であるが、リサーチを軸にしたプロセスが重要であり、そのためには多くの方を巻き込む必要があります。

UXリサーチャー/デザインリサーチャーを増やす・育てる

デザインリサーチやUXリサーチの必要性が多くの企業、あるいは様々な立場の人々に理解されはじめている一方で、企業の採用面から考えてみるとリサーチ人材を十分に採用できているとは言い難い状況であるように認識しています。「UXリサーチ」や「デザインリサーチ」などのキーワードでWantedlyなどの求人情報サイトを検索してみると、多くの企業がリサーチ人材を採用しようと考えていることがわかります。

昨年の状況についてはデータがないのでわからないのですが、今後のためにそれぞれの件数を残しておくと2022年7月14日時点のWantedlyで「UXリサーチ」を含む求人は428件、「デザインリサーチ」を含む求人は114件ありました。なお、参考までに「ユーザーリサーチ」を含む求人は266件でした。

しかしながら、企業の求めるUXリサーチャーやデザインリサーチャの数に対して実務経験のあるリサーチャーの数が圧倒的に足りていない印象を受けています。

企業がより良いプロダクトやサービスを作り続けるためには、今後も継続的にリサーチを実施していくことが重要であり、そのためには多くの方にリサーチに興味を持ってもらい、リサーチを実施してみようという気持ちになってもらうことが重要です。そのために我々は、必要な情報を提供し場合によってはトレーニングの機会や場を作る必要があるだろうと考えています。

おわりに

本noteではリサーチカンファレンス開催に至る経緯とその狙いについて書いてみました。

良いプロダクト、サービスをを作るためには、さまざまな立場の人がリサーチに対して興味を持ち、価値を認め、ひとつのチームとしてリサーチ(もちろん、リサーチだけでなく、開発や営業、サポートなども)に取り組むことが重要だと考えています。

リサーチカンファレンスがほんの少しでもその流れを後押しすることができるのであれば、非常に嬉しいです。

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