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パリ逍遥遊 シャンパーニュ街道

パリ郊外の環状道路から高速道路A4号線に向かい、車を走らせること約1時間半。ようやくブドウ畑が見えてきた。
シャンパーニュ地方はパリから近く、中心都市であるランスとパリとの間は144km。しかもフランスの高速道路は制限時速130kmなので、簡単に訪問することができる。普段の旅行ならランスで泡を堪能か、エペルネー界隈で有名ドメーヌ訪問というのが定石だが、今回はランスを南下し、モンターニュ・ド・ランス自然公園に入る手前で左折。ブドウ畑の合間を縫って細い道沿いにプジョー207を進めてゆく。
ここから先はシャンパーニュ街道と呼ばれる小道である。

シャンパーニュ街道とは、ランスからエペルネーに広がるブドウ畑であって、シャンパーニュを産み出す村々を結んだ街道のことだ。街道の中でも最も面白いルートは、モンターニュ・ド・ランス(Montange(森)といっても山だが)沿いの斜面にぎっしりと植えられたブドウ畑の中をドライブできるルートだろう。主に、東・南向きの丘陵に広がる地域で、ピノ・ノワールの栽培が多い。

ランス南部にあるRilly-la-Montagne村から始まりエペルネーで終わるルートで、ここには、シャンパーニュ地方にある17のグラン・クリュ(特級畑)村のうち、Ambonnay, Bouzy, Louvois, Verzenay, Verzy, Ayの6つがひしめき合う。シャンパーニュ地方ぐらい北まで来ると、日照量とブドウの善し悪しは正比例するわけで、さすがグラン・クリュ村となると、良いブドウを作る能力だけでなく、その見晴らしや景観もグラン・クリュである。
また、急な斜面とそこから見えるランスの街並み、特に、かつてフランス歴代国王の戴冠式が行われたノートルダム大聖堂を含む美しい建築物とのコントラストは、フランスの他の土地ではなかなか見られない。かの有名なボルドーやブルゴーニュは、街は街、畑は畑で、両者別々の場所にあるが(ボルドーはそもそも平地である)、ランスは街と畑を一枚の絵に納めることができる。街と村が一体と言えばボルドーのサンテミリオンがあるじゃないか、と思われるかもしれないが、サンテミリオンとランスとでは街の大きさは比較にならない。

なお、シャンパーニュでは、毎年7月に「シャンパーニュ街道祭り」なる祭りが行われており、各村の散策や地元料理などを楽しむことができるのだが、この祭りは、毎年各地方・村が持ち回りで開催しているので、必ずしも本章で取上げたシャンパーニュ街道とは一致しない。
7月の祭りのことは、旅行会社に任せるとして、ここでは秋のシャンパーニュ地方について紹介したい。一般にブドウを収穫してしまうと、ブドウ畑はもはやお役御免と思われるかもしれないが、一年の最後にもう一つ楽しみ方があるのだ。紅葉である。

一度、収穫が終わったブドウ畑に行ってみるといい。場所や収穫時期によっては、葉を枝に付いたままにしておく地方があり、シャンパーニュ地方もその一つである。実が収穫されたブドウの木は生気が失われ、当地域の寒さも加わり、急速に紅葉してくる。ブドウの紅葉は主に黄色だ。この黄色と夕暮れとが交ざり、先ほど紹介したランスの街並みも交ざり、何とも言えない風景が現れるのだ。華々しいシャンパーニュやランスの街とは対照的なこの風景も、機会があれば是非見ていただきたい。

次回は、シャンパーニュ街道にあるドメーヌを紹介したい。

ぶどう紅葉1


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