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パリ逍遥遊 ヴァランス(Valence)とリヨン(Lyon)の旅

自然の恵みに対する畏敬の念を持つと共に、自然と共鳴していく喜びを持つワイン醸造家を恩師に紹介してもらい、バランスにでかけた。バランスは、パリリヨン駅からTGVがダイレクトに結んでいる。バランスの駅まで迎えに来てくれたワイン醸造家、初めてお会いした人とはとても思えない、ずっと昔からご一緒だったような感じがした。早速彼の所有するブドウ畑を案内してくれた。完全な自然農法を旨とするため、雑草も抜かない。雑草と葡萄の木を共生させることが大事らしい。南側に面した斜面の傾斜はかなりきつく、ここで実った葡萄は、手で丁寧に摘まれる。そして昔ながら製法、つまり足で葡萄を踏むのである。

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次に今年(2014年)に収穫された葡萄が樽につめられているカーブへと案内された。カーブは、バランスのお城の直下にある。ここで、樽のコルク栓を開けてくれた。葡萄が発酵している音が聞こえる。まるで生き物のようだ。この音に耳を傾けながら、葡萄ジュースのような、でも葡萄緒ジュースでないシャルドネを、ワイングラスにワイン用スポイドで、そっと注いでくれた。初めての味わい、自然の恵みと感動がそこにあった。

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その夜、ワイン醸造家と素敵な奥様と一緒にLa Cachetteに出かけた。La Cachette、ミシュラン一つ星に輝くこのレストランは、伊知地雅シェフがオーナーだ。この日イタリアから白トリフ携えて戻ってこられたばかりのところをお邪魔した。トリフ40種類もあるらしい。その中でもシェフが厳選してくださった白トリフをふんだんに使った料理をいただく。メインは、季節のジビエだ。これらの料理に合わせた自然派醸造家たちにワイン、もちろんワイン醸造家が選んでくださった。丹精こもったお料理、そしてワインを5時間かけていただいた。異国の地で、世界に通じる二人のおもてなしと心共鳴に感謝。道を究めた人とのふれあい、本当にすばらしい夜だった。

La Cachette
16 Rue des Cevennes 26000 Valence
+33 4 75 55 24 13

2015年のお正月、フランスの父となってくださったワイン醸造家のお宅へお邪魔。母(彼の奥さん)が3-4日間くらいかけて愛情をこめて作ってくれた御節を兄弟たちと近所に住むご家族と共にいただいた。フランスにいながらにして日本の御節料理をいただけるなんて、なんて幸せなのだろう。そして、この素晴らしい御節料理に合わせるは、フランスの父が丹精こめて作ったワインだ。

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御節料理は家の系譜でもあるが、フランスの母の作る御節料理は、実家の母のものにどことなく似ている。二人の共通点といえば、兵庫県という点か。白菜の昆布とゆずで〆た浅漬け、酢はすの酢の味、実家の母を思い出される。フランスの母の方がかなり若い分、田作りにアーモンドで絡められたりする。このマリアージュ、素晴らしく美味しいい。極めつけはお雑煮だ!なんと白味噌。実家の母が作るお雑煮も白味噌だ!兄弟の遊びがなんと花札だ!これまた我が家の正月の風物詩だった。兄弟が繰り広げる花札の勝負に祖父との思い出が蘇った。子供の頃、花札遊びに祖父と興じていて、祖父がずっと勝ち続けていた。悔しかった私は、新しい勝負の前に祖父が厠に出かけたと同時に、ズルをした。なんと自分の札を得点の高い役有のものばかりにしたのだ。何食わぬ顔をして勝負を始めた。花札というのは手も大事だがその場に何があるか、そしてめくって何の札が現れるかの総合的勝負だ。そのことを初めて理解した。いくら手が絢爛豪華でも、当てに行く札が場にないとそれを捨てなければいけないのだ。捨てた後、めくってもそれにあてていくものが出なければ、相手方がその札を持っていれば、当然持っていかれる。こうやって、豪華絢爛の札を手に持っていてもあっさりと私は負けた。勝負事だけではない。場、自分、相手、すべてが総合的にうまく調和しないといけないことをこのとき身をもって知った!

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