見出し画像

パリ逍遥遊 メドックマラソン

普段何気なく過ごしている生活であっても、その延長線上には未だ見た事のない事象が広がっている。皆さんはそこに行った経験があるだろうか。

例えば、音楽プレーヤー。iPodなりステレオなりの音量を最大にしたことはあるだろうか?
おとなしいクラシック曲でも爆音になり、ベートーベン6番やブラームス4番と初期のアイアンメイデンとの区別がつかなくなる臨界点がある。

例えば、自動車。タコメーターが振り切れるほどのスピードを出したことはあるだろうか?
ドイツのアウトバーンで、プジョー207が時速200キロを超えたあたりから車体が浮き地面との接触が少なくなってゆく。その結果、制御不能。真っ直ぐしか進めなくなり、高速道路の遥か先に小石が見えるだけで、死を予感する。

なんでそんなことやるの?と疑問に思うかもしれないが、まあ、記録に挑戦したいから?としか答えられない。これやったら面白そうと一度思うと、ついついやってしまう。

画像1

そんなこんなで、メドックマラソンで頭をよぎった考えは、「給水所にあるワインを全部飲んだらどうなるんだろう?」なんて身も蓋もないことで、これもついついやってしまった。

メドックマラソンはボルドー・メドック地方のワイン畑を走るマラソンで1985年から毎年9月に行われる。各シャトー(ワイン醸造所)が給水所を設け、水以外にもそのシャトーで醸造されるワインが振舞われる。ランナーはワインを飲みながら、収穫直前の美しいブドウ畑を走れるという、ワインファンにとってはそのまま天国に召されても良いぐらいのイベントだ。

画像2

ところで私はマラソン経験者だ。日本で数回のフルマラソンレースを経験したし、ヨーロッパでも、パリ、ブリュッセル、ローマ、アントワープなどでフルマラソンに参加しているので、お笑い芸人がノリで参加し、そのまま心肺停止、みたいな事はないと思っている。また、メドックはタイムに挑戦するような類のマラソンではないので、楽しむために全部ワイン飲んでやるか!という考えに至ったわけだ。

給水所でワインが出ると言っても、下の写真にあるとおり1杯30~50mlである。こんなもの子供が飲む量じゃ、簡単にクリアできるわいと高を括り、前半は良いペースで試飲&ランを繰り返す。だんだんアルコールとアドレナリンが体内に溜まってきて、ランナーズハイなのか単に酔っているのかわからないが、快調に飛ばしてゆく。

画像3

しかし、ハーフの21kmを過ぎたあたりで突然の変調が。

飲んでから2時間ぐらいしか経っていないのに、もう二日酔いの兆候が出てきたのだ。なんちゃって理系である私が推測するに、水分はランニングと同時に体からどんどん抜けて行くので、居酒屋で座って飲んでいる時よりも血中アルコール濃度が高まり、また、運動で血流が早まるため血液脳関門をアルコールがバンバン通って、脳に到達しているのだろう。

画像4

死んだおばあちゃんが見えてきた。このままではゴールできない。いつものマラソンよりも多めに水分を(そしてワインも)補給する。頭が痛いなら、もう給水所でワイン飲むの止めれば良いじゃん、と疑問に思われるかもしれないが、一度やろうと決めると、ついついね。

この年は全部で24箇所でワインが配られ全箇所で飲んだので、一杯30~50mlとして、走りながら720~1200ml、ワイン1~1.5本程度飲んだことになる。

画像5

ちなみに私は酒に強いので、普段なら1.5本を一人で飲んでも二日酔いになることはない。マラソンも飲酒も個別にやると大した事はないが、両者を一度に取り組むと身体に過度の負担がかかることを身を以て証明した。

さて、次は何の延長線を観に行こうか。

画像6

画像7

画像8

画像9

画像10


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?