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パリ逍遥遊 黄色い電車

バスも優れた公共機関の一つだが、フランスの鉄道もなかなか楽しい乗り物で、線路があればどこにでも連れて行ってくれる。鉄道の旅にはまったのは、これから紹介する鉄道の旅に始まった。

パリには主要鉄道駅として、東駅、北駅、サンラザール駅、リヨン駅、モンパルナス駅、オステルリッツ駅、ベルシー駅が存在する。

フランスの南側13区にあるパリ・オステルリッツ(Paris Austerlitz)駅を金曜日21:57発に出発する夜行列車に乗車。2日後の日曜日22:57にパリ・ベルシー(Paris Bercy)駅まで、いったい何時間電車に乗ればいいのだろうという鉄道旅行を計画した。実際に乗って、車窓からの風景が移り変わるのを見るのも、また鉄道旅行の醍醐味なのだが、路線図と時刻表を眺めながら、計画を練る段階で、半分くらいは乗った気になってしまう。

今回は初めての夜行列車なので、4人乗りのコンパートメントを一人で借り切った。もちろん鍵がばっちりかかる。パリからの夜行列車が朝の7:51にラ・ツア・デー・カロル(Latour De Carol Enveitg)に滑り込む。 心地よい揺らぎから目覚めた。ラ・ツア・デー・カロル(Latour De Carol Enveitg)駅は、小さいながらもInternational な駅で、3つの軌間(ゲージ)に対応している。フランス鉄道のゲージは、1435mm、バルセロナまでのスペイン鉄道は1688mm、今回お目当ての黄色い電車(プチ・トラン・ジョーヌ)のゲージが1000mm、この3路線の駅となっている。

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ここからビルファンシュ・ヴェルネ・レ・バンVillefranche Vernet Les BainsまでTER23024、黄色い電車(プチ・トラン・ジョーヌ)に乗る。全区間62.5Km、3時間だ。標高1592mのベルシュ峠を越える標高差が大きい山岳路線だ。夏の間だけ連結されるという天井のない展望車に乗る。カサーニュ橋(ジスカール橋)を超えるとき、天井がないだけに、迫り来る美しい高架、圧巻だ。

ビルファンシュ・ヴェルネ・レ・バンVillefranche Vernet Les BainsからBeziers までTER77676とTER76420に乗る。これまたフランスの景勝ルートの一つだ。ペルピニャンPerpignanを超えると、ナルボネーズ・アンメティトゥラネ自然公園内を列車は進む。ベール川(La Berre)とエロール池(Etang de L’Ayrolle)の間のサント=リシュ島(Le Sainte-Lucie)を列車が走る。まるで海の中を走っているようだ。そしてベジエBeziersに到着。ここで一晩休憩。

翌朝9:37Beziers発クレモンフェランClemont Ferrand行き、Intercites15460に乗車。クレモンフェラン到着は16:02だ。2両連結。日に1往復しかない。しばらくブドウ畑が広がって、春に新梢を伸ばした枝から、実りの秋に向かって葉が茂っている。南西部のワインは、ボルドーやブルゴーニュのワインに比べて知名度は低いが、ローヌ川沿いのワインも秋の葡萄解禁日には、美味しいワインを提供してくれる。列車はさらに、ミディ=ピレネー地域圏(Midi-Pyrenees)を北東へと進み、アヴェロン県(Aveyron)まで進むと一面牧草地へと変化する。このあたりは中央高地(Massif Central)と呼ばれ、約1万年前の火山活動により、アルプス山脈から切り離され、ローヌ川によって南北に裂け目が形成されたという。このローヌ川のみぞ(Sillon Rhodanien)を電車は行く。昆虫学者ジャン・アンリ・ファーブルを生んだのもこの地であり、ブルーチーズであるロックフォールもここから生まれる。そしてローヌ川の支流タルタン川渓谷には、ミーヨ橋がかかっている。この橋の主塔の高さは343メートル。エッフェル塔の高さが301メートルだから、それよりも高いところを車が走る。列車は、このミーヨ橋の下を走る。しばらくローヌ川の溝を列車が進むと、サン=フルールSaint Flourの15分手前あたりで、キュスターブ・エッフェルが作ったガラビ橋を渡る。1888年に開通した橋。ただ列車でこの橋を渡ると、全景を見るポイントがないのが残念だが、この橋から見る渓谷は美しい。そしてクレモンフェランへと電車は滑り込んだ。

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クレモンフェラン、科学者パスカルの出身地であり、ローマ教皇ウルバヌス2世が第1回十字軍を結成した場所、そしてミシュランの本社がある。クレモンフェランにあるノートルダム=デュ=ポール寺院(Basilica of Notre-Dame du Port)はユネスコ世界遺産「フランスのサンディアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」として登録されている。この寺院の地下の黒の聖母にひざまずき、【受胎告知】を探す。【受胎告知】を探す旅も慣れてきて、絵画だけでなく、教会を支える柱、彫像もしっかりと見ることが出来るようになってきたから、不思議だ。

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