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みきちゅ×大石蘭スペシャル対談〜ちゅside〜 後編 「あなたかわいいんだから表に出たほうがいいわよ」

新EP『みーんな国宝だよ EP』サブスク解禁を記念して、「推しと人生トリップ」リリックビデオのイラストも手掛けてくださっている大石蘭さん(イラストレーター・ライター)によるロングインタビューをお届けします!

前編ではみきちゅの高校生時代からライブデビュー、状況からの活動休止などについてお話ししてきましたが、後編ではディアステ加入後の活動についてクローズアップしてきます。

〈 前編はこちら 〉「こんなんでいいのか自分の人生!」

蘭ちゃんのnoteに掲載された、
新譜制作秘話&みきちゅのパーソナルに迫るインタビューもぜひ合わせてお読みください!
みきちゅ×大石蘭スペシャル対談 前編 「みきちゅだけどみきちゅじゃない」って?
みきちゅ×大石蘭スペシャル対談 後編「女性版ヒャダインさんになりたい!」

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左・みきちゅ/ 右・大石蘭

元アイドルで作詞作曲家、武器になるかも!

大石:前回話してくれたアイドルアレルギーみたいな状態から、今みたいに「元アイドル」って堂々と言えるようになったのは何かきっかけがあったの?

みきちゅ:まず、アイドルアレルギーから脱したのは、でんぱ組.incさんの存在が大きくて。
活動を休止した半年後くらいからディアステージと話を進めてたんですけど、「でんぱ組のライブを一度観に来てください」って言っていただいたんです。

大石:それまで観たことはなかった?

みきちゅ:むかし観たことあったんですけど、そのときはアイドル大好き、でんぱ組大好きだったので…。
でもアイドルアレルギーになって、「最近アイドルのライブとか観てないし曲も聴いてなかったな」くらいのレベルになっちゃって。そんな状態ででんぱさんのライブを観に行かせていただいたのですが…キラキラしてて、お客さんがいっぱいいて、サイリウムが無数に焚かれてて、みんなやりたいことをやってて!私の好きなアイドルってこうだったなと泣いちゃいました。
それでアレルギーから脱して自由な気持ちになれたので、「他称の肩書き」はなんでもよくなったんです。アイドルと思ってもらえるならぜんぜんアイドルでいいし、アイドルだと思わないならそれでいいし、くらいラフに。
でも、プロフィールとかで書かなきゃいけない「自称する肩書き」はぼんやりしたままで…
いまみたいに、“元アイドル”と堂々と言えるまで4年くらいかかったかな。

大石:その4年は、ディアステージにいた期間?

みきちゅ:そう!2016年の終わりから2020年の最初まで。
ディアステに入ってまた「みきちゅ」になれてからは、今まで叶わなかったTIF(東京最大級のアイドルフェス)に単独出演したり、サンシャイン劇場で舞台やったり、サンリオピューロランドでパレードやったり、でんぱさんのテレビ番組で一緒に富士山登らせてもらったり…
いわゆる「地下」と呼ばれる場所に長くいたので、急に「地上」っぽい芸能活動をたくさんやらせていただけたことで、“夢半ば”だったものが急激に満たされて“アイドルとして出来ることはやりきった”っていうレベルに到達してしまったんです。
TIFでは特にそれを感じて、テンション上がりすぎて物販に来てくれたファンの人を写ルンですで撮りまくってましたからね(笑)。冷静になって現像したら、フィルムのほとんどが汗かいた笑顔のおじさんで可愛かった!

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▲アイドル誰もが憧れる、TIF・SKYSTAGEでの一枚

大石:アイドルのみきちゅが完成した瞬間だったのかもしれないね。そこからはどんな活動になっていったの?

みきちゅ:次のステップに進もうと思った時、スタッフさん達と話して一回アイドルから超かけ離れてダークというか…光と陰で言うと陰みたいな弾き語りばっかりやる時期に入るんです。「もうアイドルじゃなくてシンガーソングライターだから」ということで弾き語りをメインに、チェキとかもやらずにいきましょうっていう。
ディアステにしては異色な方針に落ち着いたんですけど、いざやってみると自分的にはお客さんと盛り上がる感じが好きだなって改めて思ったし、しっとりやるだけじゃちょっと違うな、って気持ちになりました。
それで弾き語りのイベントで、みんなと盛り上がれるようにオケ曲を挟んだりいろいろやったんですけど、シーーーンってなっちゃったりもして。次第にアイドルをやっていたことを見せなくなっていきました。

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大石:それは、「misicるTV」の作家企画「トップライナーをさがせ!」(2018〜2019年に放送された、良質なメロディーを作る若手作家を発掘する企画)に出てたときも?

みきちゅ:そのときは、元アイドルって言ったら男性のアーティストさんに楽曲提供とかがやりづらくないんじゃないかな、っていうのがまずひとつあって。

大石:なるほど、そのアーティストさんのファンに対してもね。

みきちゅ:うん、そのファンの女の子が嫌な気持ちになるかもなぁって。
あと、「元アイドルがなんかやってる」っていう地位がめちゃくちゃ低いから怖かった!
「元アイドルで女優になりました」とか、「元アイドルでアーティストになりました」とか、どうしても「アーティスト気取り」みたいに思われて悔しいなって。
アイドル時代私よりバンバン売れてた方でも、絶頂期を超えることってすごく難しいみたいで、みんな「元アイドルの○○」ってフレーズが呪いみたいに着いて回るんですよね、
そういうのもあっていろいろ嫌だったんですけど、180度考え方が変わる出来事があったんですよ!

大石:すごい!気になる…

みきちゅ:musicるTVで最終的に祭nine.さんへの楽曲提供を勝ち取ることができて、その曲が披露されるライブを観に行かせていただいたんです。
そのとき私「作曲させていただいたみきちゅと申します」って挨拶しただけで、「ふだんこういう活動してます」とかぜんぜん言ってなかったんですけど、たまたまそばにいた振付師の方が、「あなたかわいいんだから表に出たほうがいいわよ」って言ってくれたんです。

大石:それは嬉しいね。

みきちゅ:そこでビビっときて。「あれ?もしかして、音楽作家で表に立ってバリバリやってる人って少なくない?てか元アイドルっていなくない?」って気づいて。
福田花音さん(元アンジュルム・現ZOC)は作詞家としても活動していらっしゃるけど、作曲と編曲とオールマイティに出来る「元アイドルの音楽作家」っていないかも、と思ったときに、武器になるな、って思ったんです。
ただの新人音楽作家より、「元アイドルだから、アイドル曲作るのめちゃめちゃ強いです!盛り上げるタイミングめっちゃわかります!」って言えたほうがいいよねって。
その振り付け師さんの何気ない一言のおかげで変われました。

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大石:振り付け師さんの一言や、番組内でヒャダインさんにも認められたのをきっかけに、作曲家という道に舵を切れたのかな。

みきちゅ:ヒャダインさんが曲のイントロだけ聴いて、何人もいる参加者の中から「これはみきちゅ(の作った曲)だ」って言ってくれたのはすごく嬉しかったです。
ヒャダインさんの曲ってイントロでヒャダインさんだってわかるから、その張本人にわかってもらえたのがすごく励みになって、この力をもっと強くしていきたいな、って思ったのが自分のなかでけっこう大きいですね。

大石:ディアステを出たきっかけっていうのも、作曲家としての道を考え始めた頃だったのかな?

みきちゅ:そうですね、もっと広くやってみたいなと思うようになっていきました。
所属じゃなくなったからってディアステと永遠の別れになるわけじゃないし(笑)私が頑張ったらまた一緒に仕事もできるし、やめたからさようなら、とかじゃないと前向きな感じで話し合いをして。

大石:いい事務所!

みきちゅ:あとは私も事務所にいる以上、「何かしてほしい」って甘えが出てしまって。
「もっとこうしたいのに」とか、「他の誰々はこうなのに」って比べちゃって、去年の夏〜秋は考えることが多かったかな。
次第に、誰かが何かしてくれるのを待つのはダサいなって思うようになって、自分にもっと実力をつけていきたいという思いが強くなりました。
ちゃんと準備して円満退所させてもらったので、独立してからの自主企画にもディアステのアーティストをお呼びしたり、でんぱ組.incさんの「なんと!世界公認 引きこもり!」のコーラスをやらせてもらえたり、今でもディアステと交流があるので、辞めたけど寂しくないです!

「みーんな国宝だよEP」について

大石:そして、今回は新譜が出たということで、CDについても聴いていきたいんですが…ちなみに前回出したアルバム「ポメラニアン」は、ディアステージ時代のもの?

みきちゅ:前回のCD「ポメラニアン」はディアステを卒業するときに、ディアステ時代の曲をほとんどCD化してなかったので自分で引き継いで、せっかくなので新曲も入れて盤にしたものです。
ちなみに、それは今年の2月に出したんですけど、コロナ禍でリリースイベントが全部中止になっちゃって、家にめっちゃ在庫があるから、これを読んでいる人はみんな買ってほしいです(笑)!

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▲「ポメラニアン」ジャケットはみきちゅの手書きイラスト

大石:サブスクにもあるよね?ダウンロードしました。

みきちゅ:ありがとう!サブスクもあります!JASRACにも登録して、地道にちまちまと配信してます。

大石:今回のEPの曲作りはいつ頃からやってたの?

みきちゅ:4月ごろ「クラウドファンディングをやる」って決めた頃に全体の構想はあって、編曲家さんも決めてたんですけど、肝心の曲はぜんぜんできてなくて!

大石:じゃあ、ほんとにこのコロナ禍で作ったんだ。

みきちゅ:そうなの!2曲目の「サブスクリプションシティ」は、緊急事態宣言が出た時期にもともと相互フォローだった作曲家の湯原聡史さんが「女性アーティストの曲をやりたい」とツイートしてたのを見て、「私も湯原さんと一緒に何かやりたいです!」ってリプライしたのがきっかけでZOOMしながら作り始めたから、その曲だけ原案はクラファン前にあったかな。
でも不要不急の外出を控えましょう、って流れの時にその状況をテーマに作り進めていたから、緊急事態宣言が終わった瞬間、歌詞が秒で古くなっちゃって…
だから歌詞を作り替える必要が出て、結局クラファンを始めた時点で完成してる曲は1曲もなかったですね。

大石:そうだったんだ!4曲、怒濤のように作ったんだね。

みきちゅ:6月から8月にかけてこのEPを作ってたんですけど、その制作と並行して作曲家としてのコンペにも20曲以上提出してました。

大石:じゃあ1日1曲とかのペース!?

みきちゅ:そうかも…!このEPの編曲はプロに頼んでるけど、作家としてのコンペは自分で作詞作曲して編曲、ミックス、マスタリングまで全部ひとりでやらなきゃだから。

大石:仮歌も自分で入れるの?

みきちゅ:自分で歌ったり、自分の声が曲に合わないときは、お金を払って人に頼んだりもしますよ。
だから、仮歌貧乏になりながら自分の曲作ってました(笑)。
自分で歌いたい曲と、人に提供したい曲ってぜんぜん別だから、苦ではなかったですね。
たまに「提供用に良い曲ができたら自分で歌っちゃうの?」とか言われるんですけど、すっごい良い曲でもその人に合うと思ったら出しちゃうし、自分の曲は自分の曲で、誰かから落ちた曲を自分で歌うってこともなくて、自分で作った自分の曲を歌うって感じです。

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▲「みーんな国宝だよ EP」ジャケット秘話は大石蘭noteにて!

大石:今回はいろいろとお話を聞かせていただいたけれど、最後に今後なりたい“みきちゅ”のビジョンを教えてください!

みきちゅ:いい意味で固定のイメージをつけないようにしたいんですよ、フラットでラフでいたい、という気持ちがあるので。キャラ付けとかせずに一生懸命やってる姿をみんなに見てもらうことが最大の自分のプロデュースかなって思ってて。
「みきちゅにお願いすればきっと一生懸命やってくれるだろう」といろんな人に思っていただけるように、ありのままを見せていきたい。
アイドル時代から芯は変わらず、一生懸命やってたら唯一無二の道を選んでいたので、これからも突き詰めていけたらと思ってます。

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>みきちゅオンラインショップはこちらから<

《インタビュー みきちゅ後記》

何か発言して誤解されたらどうしよう、傷つくことになったらどうしよう、と話すことから逃げていたことがたくさんありました。優しいファンのみんなはいつも深掘りせず見守ってくれるので、ずっとそれに甘えていました。
だから今回蘭ちゃんとのインタビューでたくさんのことを話せてよかったなと思っています。
もしかしたら内容にショックを受けてしまった人もいるかもしれないけれど、それを乗り越えて今最高に楽しく音楽をやっているので、安心してついてきてもらえたら嬉しいです!
逆に、ずっと昔に感じたわだかまりのようなものが解けた方もいるかもしれません…読む前と後で、より絆が深くなっているといいな。

約2時間がかりでのインタビューとなったのですが、途中で差し入れしていただいた鯛焼きが本当に美味しくて!鯛焼きブームになっちゃいそうなみきちゅでした。

今後も蘭ちゃんとの対談企画をやりたいな♡と思っていますので、少しでも「いいね!」と思っていただけた方はハートボタンぽち&サポートでお力添えいただけたらありがたいです。

みきちゅ profile
仙台生まれのシンガーソングライター&音楽作家。
​6歳から作曲を始め、16歳からピアノ弾き語りでの活動をスタートするも、重度のアイドルオタクであることがきっかけで「ヲタ芸を打つ側から、打たれる側へ」と憧れを抱き、“アイドルシンガーソングライター”というジャンルを作り出す。
若手バンドの登竜門である「閃光ライオット2011」に出場したことがきっかけとなり活動を本格化させると、DIYで活動する姿がメディアからも注目を浴び、事務所無所属のアイドルとしては異例のオリコンTOP10入りを果たす。
2014年には“アイドルシンガーソングライター”での活動を終了させ、原点である“シンガーソングライター”がメインのスタイルとなる。
2019年には、テレビ朝日「musicる TV」にて放映された若手音楽作家発掘企画にて、最終選考へ1位通過、楽曲提供のチャンスを掴み、本格的に音楽作家としても活動を始める
大石 蘭 / ライター・イラストレーター profile
1990年 福岡県生まれ。東京大学教養学部卒・東京大学大学院修士過程修了。在学中より雑誌『Spoon.』などでのエッセイ、コラムを書きはじめ注目を集める。その後もファッションやガーリーカルチャーなどをテーマにした執筆、イラストレーションの制作等、ジャンル問わず多岐にわたり活動中。

インタビュー・執筆:大石蘭
取材写真:SUITE IMAGE

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