見出し画像

まさか私が『寿退社』するなんて

「寿退社? 私とは縁遠い話だなあ……」

これがプロポーズされるまでずっと思っていたこと。

記念すべき1記事目は、婚約した2年前に時を戻し、バリキャリとまではいかないまでも仕事が好きで「寿退社」とは縁遠いと思っていた私が意図せず「寿退社」をしていた経験を通して、そもそもなぜ寿退社に対して「まさか」と思ったのか、そこから得た気づきについて書いていきたいと思います。結婚までの流れや私の仕事観なども書いているので少し長めの記事になります。

ちなみに当時は「転勤妻」の覚悟をしましたが紆余曲折あり今は転勤妻を卒業し、今後は家族みんなでずっと東京にいる予定です。

『寿退社』は自分とは縁のない話だと思っていた

その昔、私の母は結婚を機に寿退社をした。母のOL時代はバブル真っ盛りで私は幼少の頃から「お昼休みに同僚と大丸へ新作コスメを買いに行くのが楽しかった」などキラキラしたOL生活の話を聞き、最後は決まって「当時は今と違って25で結婚して寿退社するのが憧れだったのよ~みんな、そうだったのよ」と教えられた(あくまで母談)。例にも漏れず母も24で父と結婚し、華々しく寿退社して専業主婦になった。

そんな話をずーっと聞いてきたけれど、私自身はそもそも結婚に対してあまり憧れもなくイメージも沸かなかったし、仮にいつか誰かと結婚することになっても、仕事が好きでこれからやりたいこともたくさんある自分が結婚を機に仕事を辞めるということはなかなか想像のつかないことだった。

自分と『寿退社』はかけはなれたところにあり、結婚すら想像できない自分には縁遠い話だと思っていた。

夫との結婚を意識したきっかけは「仕事や将来の話を楽しくできる人だから」

26歳の終わりに出会った彼(現・夫)の仕事は、大きく分ければ同じ業界で、職種は違えど彼と仕事の話をするのが楽しくて楽しくて、彼と話をしていくうちに「もし結婚するなら、くだらない話だけじゃなくて、こうやって仕事の話も前向きに楽しくできる人とがいい」と思うようになった。

彼にも私にもこれから積み重ねたいキャリアややってみたい仕事、その先のなりたい理想像があって、そんな話をしては、お互いの仕事の理解を深めたり「それならこんなことをしたらいいんじゃないか」などアドバイスをしあったりしていた。その頃には正式なプロポーズはないもののお互い結婚を前提に色々と話していたので、私は結婚してからも当然このまま東京でキャリア構築をしていくと信じて疑わなかった。

婚約&夫の転勤、どうする私のキャリア!?

2019年の秋、普段からは想像できないほど真っ赤になった彼から渾身のプロポーズを受けた。その頃には今後の二人の貯蓄の仕方やら人生設計の話なんかもしていたので、「え!!!もしかして…!?」的な驚きはなかったし、なんなら待ち合わせの時点で真っ赤な彼をみて「あ今日なんだ!」(←かわいげゼロ)と察してすらいたけれど、やっぱりプロポーズは想像していた以上に心の底から嬉しくて彼と一緒に歩く未来がくっきり見えてこれからが一層楽しみになった。

……が、ほぼ同時期。

「ごめん、秋から名古屋勤務になった」

残業中に来た彼からの電話で頭が真っ白になった。

新婚生活は毎日一緒の同居婚or遠距離別居婚?

当時の私の仕事は東京にしかオフィスがなかったため、まず頭をよぎったのが「仕事を辞めて名古屋についていく」VS「仕事を辞めずに別居婚」の2択だった。

といいつつも心は9割9分「仕事を辞めてついていく」に決まっていた。「結婚はできたらラッキー」程度にしか思っていなかったくせに、いざ結婚するとなったら別居婚よりも「家族になったら一緒に日々の暮らしを重ねたい」という気持ちの方が圧倒的に大きかった。

そうなると次に出てくるのが、私のキャリアはどうするの?という問題。完全に仕事を辞めて専業主婦になるのか、転職して別の会社で働くのか。これからキャリアを積み重ねていきたいと考えていた私にとって、この問題は後者一択、転職以外選択肢がなかった。

「今の仕事を辞めて、名古屋で新しい職探し」これが私の出した答えだった。

結婚後も働きたい。「職探し」で最も重視していること

ここで急に私の仕事観についての話になるのだけれど、私は人生の中で「働く」を通して『女性の人生の選択肢カードを1枚増やす手助けをしたい』と思っている。だからこれを実現するために働いていて、仕事選びもこの想いを実現できるかどうかが肝になっている。(仕事観については別の記事でちゃんと書きたい)

当時F1層向けWEBメディアの広告記事ディレクターをしていた私は、忙しくしんどいことが多い中でもやりがいのあるこの仕事がとても好きだった。今後のキャリアについても、「もっと経験を積んだら同じく女性向けメディアの編集へキャリアチェンジをしたいな」「次はもう少し小規模の会社で0から作っていく経験も積みたいな」などぼんやりとだけれど考えていた。

だから、転職をすると決めた以上、「働ければなんでもいい」ではなく、自分の「したい」を実現できる仕事を見つけたいと思った。

転勤妻の転職活動、詰んでる疑惑

とはいえ私はとても欲張りで、先に書いたように「家族になったからには一緒に暮らしたい」という想いもゆずれなかった。自分の好きな仕事はしたいけれど、そのために別居婚になるのは嫌だという欲張り極まりない考えを持っていた。

そうすると何が起きるか。転職活動が詰む。

そもそも、次いつ名古屋から別の場所に転勤になるかわからないので、「夫の転勤についていく」というゆるぎない決意がある以上新しい職場もいつ退職せざるを得なくなるかわからない。(実際当時予想していたのよりもかなり早く東京に戻ってこれた)そして、自分がやりたいと思っている編集系の仕事はそれでなくても間口が狭いのに東京から離れるとより一層仕事がなかった。

いっそのこと全く違う職種をやってみるか……? いや、だとしても正社員って結構無理めじゃない……? 私が雇う側なら夫の転勤でいつ辞めるかわからない人雇わないよな………

などなど毎日毎日堂々巡りで、「現職を辞める」以外のことは何も決められず、刻一刻と引越しの日が近づいていた。

堂々巡りの私に夫が放った一言

キャリアをめぐる葛藤をそのまま夫に打ち明けた。ちなみにここまでの間、夫から「仕事を辞めて名古屋についてきてほしい」など一切言われていない。「仕事を辞めて名古屋へついていくが、キャリアは諦めたくないのでやりたい仕事をしたい」という結論は私が自分自身で決めたことだった。

とはいえ、比較的スピード婚だった私たちに貯金などあるはずもなく、「やりたい仕事をしたい」という気持ちとは別で「稼がなければ」という現実的な問題もあった。家具家電も揃えなければならなかったし、コロナ前だった当時は結婚式もしたかったし新婚旅行にも行きたかった。そのため「結婚して一緒に住みたい、希望する生活を送りたい、というのが一番望むことなら、”やりたい仕事”は諦めなきゃいけないのかもしれない……」という気持ちが大きくなり始めていた。

ぐるぐると頭を駆け巡っていたことを夫にぶちまけると、彼は静かに聞き、一言「じゃあフリーランスでやればいいんじゃない?」と言った。そして続けて「みきなら絶対フリーでもできると思うよ。最初はなかなか仕事とるのも大変だと思うけど、みきが今までみたいに稼げない間は俺も頑張るし好きな仕事をしてほしい!」と言ってくれた。(控え目に言って神)

ワークもライフも捨てられなくてのフリーランス転身。夫には頭が上がらない

夫と何度も話し合いを重ね、ワークとライフ、どっちも捨てられない欲張りな私は、夫提案のフリーランスが一番しっくりくる気がして、フリーランスになる決意をした。

独身時代はやりたいと思ってもなかなか勇気が出なかったフリーランス転身。常日頃から仕事の話をしていた夫から「みきなら大丈夫」と信じてもらえたから一歩踏み出すことができたし、何より「好きな仕事を諦めなくていいんだ」と思わせてくれた夫には頭があがらない。

余談ではあるが、まだ婚約段階ではあったけれど心底この人と出会えて結婚できてよかったと思ったし、無条件に自分を信じて応援してくれる人がいるだけで、がぜんやる気がでて早く稼げるようになりたい!!と燃えることができた。実際想定していたよりも仕事をいただくことができたりもした。(なんやかんやで職の形は変化していくのだけれどそれはまた追々。)

こうしてプロポーズからの夫の転勤をきっかけに、人生における「仕事」と「生活」について自分が一番譲れないことはなにか、とことん考えて考え抜いて、「キャリアを諦めたくない」という想いのもとフリーランス転身することに決めた。

だから同僚に「いいなー寿退社憧れる」と言われたときは、頭の中が全停止した。

同僚の一言で自分が『寿退社』であることに気がついた

「寿退社? 誰が? わたしが????」

全停止した頭に浮かんだのがこれだった。

でも、たしかに、なのだ。さんざん悩んで出した答えだけれど、つまるところ「プロポーズされて結婚することになったのー。でも彼が名古屋に転勤になっちゃったから仕事やめてついてくの。仕事はどうするのって? わたしは好きな仕事したいからさ、フリーランスになる!」ということなのだ。(こんな言い回しはしていないけれど)

これを聞けば「いいなー結婚してフリーランスかーとはいえ旦那さんいるから生活に困らないだろうし遊びみたいなもんかー寿退社いいなー」とか思われても仕方がない。というか、たしかにすぎてぐうの音もでない。

キャリアを諦めたくないから、自分のキャリア構築のためにフリーランスを選択したのに、気が付けば私は「寿退社する人」になっていた。あんなに縁遠いことだと思っていたのに、だ。

「寿退社」を縁遠いと思ったワケ

長くなったけれど、ここでなんで自分が「寿退社」を縁遠いと思ったのか、なんで「まさか私が寿退社するなんて」と思ったのか考えてみた。

「当時は今と違って25で結婚して寿退社するのが憧れだったのよ~みんな、そうだったのよ」

冒頭に書いた“母から教えてもらった寿退社”について思い返してみてあることに気が付いた。私は母の言葉を受けて無意識に「寿退社」とはかつての女子たちが憧れた、結婚したらたどり着くゴールなのだと思っていたのだ。結婚がゴールに見えてしまうシンデレラストーリーの「そして王子様と結婚して幸せに暮らしました。めでたしめでたし」というのと同じように、寿退社についても「寿退社して幸せに暮らしました。めでたしめでたし」というイメージで捉えていた。だから、「あれ?私って結婚して寿退社しました、めでたしめでたし・・・なの・・・??」という違和感があったのだ。

今も昔も変わらず「その後どのようにして幸せに暮らしたのか」、本当はここがゴールで、「寿退社」は、幸せに暮らす(望む生活を送る)ために数多とある選択肢カードのひとつでしかなかったのに。

選択肢がゴールになってしまう落とし穴

今回自身の結婚と今後のキャリアについての壁にぶち当たって初めて、気が付くことができたけれど、こういう「選択肢カード」がゴールになってしまうことってありふれている気がする。もっと言うと、どの選択肢カードを選んだのか、そこ自体に注目して(されて)しまうことが多い気がする。

女性の選択肢が増えた、とよく聞くけれどちょうど当事者ど真ん中でもある私の肌感では、とはいえ「忙しくても家庭と両立して働くこと」が称賛される傾向にあると感じている。「専業主婦」を選択した人よりも「仕事も家庭もどっちも」を選択した人の方が現代的で充実した生活を送れているよね、という雰囲気を感じることが多い気がするのだ。(あくまで私の肌感)

もちろん働き方や賃金形態はここ数年でどんどん変わってきているし、現実的な問題も大いに影響しているけれど、いったんそれは置いておくとして、一番大事なのは、「働くか」「働かないか」どっちを選ぶの?というWHATの部分ではなく、なにかの壁にぶつかったとき、自分自身はどうしたいのか、自分の「したい」を実現しながらも現実問題と対峙するためにどの手札(選択肢カード)を使ってどうやって歩いていくのかというHOWの部分だと思う。

今回のことで言えば、私は私の「したい」を叶えるために使った複数の選択肢カードの中の1枚に「寿退社カード」が入っていただけのことだった。

私にとっての「寿退社」

長く書き連ねてしまいましたが、私にとっての「寿退社」は、何を選択するかがゴールなのではなく、ゴールはその先にあると気づかせてくれた出来事でした。

今回のことはまだまだ序の口で、きっと今後も子育てと仕事の両立や二人目問題など節目節目でとことん考え悩むのだと思います。

そんなときには、目指したいゴールとその前に立ちはだかる現実問題は何か、問題をクリアしてゴールにたどり着くために使える選択肢カードはどれか、というロジックで考えていけるといいのかなと思うし、持てる選択肢カードを増やすためにも学びや経験を積んでいきたいなと思います。

自分自身の忘れたくない記録でもありますが、この記事が誰かの参考になれたらうれしいなと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?