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ネタバレ考察【ノーウェイホームとシンエヴァの共通点から見る『父親からの解放』】

1月7日に日本公開されたスパイダーマンノーウェイホーム。
MCU版スパイダーマンの3作目で公開前から大きく話題になっていた作品です。私も先日鑑賞しましたが、大傑作でした…!正直マルチバースという、下手をすれば何でもアリのストーリーになりかねない題材をここまで秀逸なストーリーに落とし込めるとは。ただただ脱帽です。

そして今作を見た私は、この作品がある作品ととても類似点が多いことに気付きました。それがタイトルにもある『シン・エヴァンゲリオン劇場版』です。ノーウェイホーム(以下NWH)とシン・エヴァンゲリオン(以下シンエヴァ)、この二つの作品を見比べながらNWHの魅力について言及していきます。

NWHとシンエヴァはどちらも『救済』の物語

NWHを既にご覧になった方なら分かるかもですが、NWHは『救済』の物語です。
他の世界線で死ぬ運命だったヴィランを救い、またそれぞれのピーターが抱えていた後悔も救い、最終的に世界の滅亡から地球を救ったトムホピーター。マルチバースという概念があるからこそできた展開に涙した観客も多いのではないでしょうか。


ここで一度、シンエヴァの世界について言及します。

シンエヴァにはアニメと旧劇場版と新劇場版があり(アニメと旧劇場版は同じ世界線)、旧作と新作は物語の始まり方こそ同じですが肝心の中身は全く別のストーリーになっています。そしてシンエヴァは、旧作で救われなかった登場人物たちが救われていく物語でもありました。

別の世界線で報われなかった者を救ったという点が、私が最初に気付いたこの二つの作品の共通点です。ただ私が今回言及したいテーマはこれではありません。今回言及したいのは『父親からの解放』です。

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作品における父親とその役割

まずトムホピーターですが、シリーズを通して彼に血の繋がった父親ははっきりと描かれてはいません。ではトムホピーターにとっての父親は誰だったのか。ここは間違いなくトニー・スターク(アイアンマン)でしょう。そしてシンエヴァのシンジの父親は、碇ゲンドウです。
トニー・スタークと碇ゲンドウ。この二人だけを見比べても共通点はほぼありませんが、これがピーターとシンジの父親という枠に当てはめると途端に共通点が出てくるのです。


まずシンジとゲンドウについて。

二人は長年離れて暮らしていましたが、14歳になったシンジはある日ゲンドウに呼び出されます。それはシンジをエヴァンゲリオンに乗せ戦わせるためです。今まで普通の生活を送っていたシンジは父によってエヴァンゲリオンの世界へ入ることになりました。


ここで思い出して下さい。トムホピーターはどうやってアベンジャーズの世界へ足を踏み入れたのか。ピーターはブラック・ウィドウのように生まれたときから諜報部員として鍛えられていたわけでもなければ、ソーのように神様だったり元々スーパーパワーを持っていたわけでもありません。そう、トニー・スタークが勧誘したのです。理由はキャプテン・アメリカたちと(本気で敵対していたわけではないが)戦うための戦力としてです。

トニーによってアベンジャーズの世界へ入ったピーターと、ゲンドウによってエヴァの世界に入ったシンジ。シンジは乗り気ではなかったので主人公のモチベーションこそ違いますが、作品の世界への入り方が同じです。

戦うために招集した、という父親側の動機も共通点という点では大きい意味で同じといえるでしょう。

父親からの解放

こうして父親によって物語の世界に入ることになったピーターとシンジ。では先に述べた『解放』とはどういう意味なのか。


まずシンジですが、シンジはずっと父親からの愛に飢えていました。父から認められたい、愛されたいと思っていたシンジですが、シンエヴァでシンジはゲンドウの掲げる人類補完計画を阻止するためゲンドウに立ち向かいます。

そしてその方法ですが、シンジはゲンドウと戦うのではなく彼と向かい合い、彼の計画に巻き込まれたレイ、アスカ、カヲルの魂を救済し、ゲンドウ自身も気付いていなかったゲンドウの望みを見出し、全てのエヴァンゲリオンをこの世から消滅させ世界を救いました。

父親からの愛を欲していたシンジは最終的に愛を欲するのではなく愛を持って父親に語り掛けることで、父親に引き込まれたエヴァの世界から解放されたのです。


次にピーター。ここで押さえておきたいのが、ホームカミングファーフロムホームのヴィランはどちらもトニー・スタークに恨みを持っていたということ。そして今回のヴィランの一人マックスは、スターク社のアークリアクターによってパワーアップしました。

つまりトムホ版スパイダーマンのヴィランは、トニーによって作りだされた面があるのです。

そしてこのヴィランたちを阻止するためにトムホピーターは毎回スーツを着て戦うことになります。ここも「父・ゲンドウの計画を阻止するためエヴァに乗るシンジ」とどこか通ずるところがあります。


そして今作でピーターは自らの存在(記憶)を犠牲に世界を救いますが、その後ピーターは今までのトニーから受け取ったスーツではなく、自ら縫ったスーツで街に飛び出していきます。

ゲンドウから託されたエヴァを抹消し、一人の人間として街に飛び出していくシンジ」と「トニーから受け取ったスーツに別れを告げ、自ら作ったスーツで街に飛び出していくピーター」。彼らは物理的に父と決別しただけでなく、その父から与えられたエヴァやスーツとも決別したのです。

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決別は成長のためのトリガー

では何故ピーターは父親と決別しなければいけなかったのか。

ここもシンジと重ね合わせると分かりやすいのですが、それはピーターがヒーローとして一人前の大人になるためです。

シンジはエヴァの呪いにより14歳のまま歳を取れなかったのですが、ゲンドウを止めエヴァと決別したことでラストシーンでシンジは本当の年齢である20代後半の外見へと変貌しました。


ピーターはトニーが亡くなった以降も、トニーが残したスーツや技術に助けられてきました。しかしどのヒーローを見てもそうですが、ヒーローには自らの手でパワーを手に入れる描写が必要です。それこそ1作目のアイアンマンもそうでした。ピーターとトニーの関係は極めて良好でしたが、ピーターはポスト・アイアンマンではなく一人のスパイダーマンになるためトニーと決別する必要があったのです。

そしてNWHのラスト、全ての人間がピーターの記憶を無くしたことによりピーターとトニーを繋ぐ物理的な関係は切れ、これからピーターは自分の力だけで人々を救っていかなければならなくなりました。

しかしだからこそ、父親の手を離れたこの瞬間、ピーターは真の意味でスパイダーマンになったのではないでしょうか。

今までのスパイダーマンが父親同然だったベンおじさんを失い、スパイダーマンになったばかりの頃は誰にも正体を明かさず活動していたことを考えると、まさにこの作品がトムホピーターが本当の意味で“スパイダーマン”になった瞬間でしょう。

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まとめ

以上のシンエヴァとの共通点から、NWHは救済の物語であると同時にピーターが父親の元を飛び立ち一人前のヒーローになる物語だったのだと思います。


『正義が悪を倒しめでたしめでたし』ではなく、敵も味方も全て背負って助ける。ピーターもシンジも、大いなる力を持っているからこそ大いなる責任を背負い皆が幸せになれる世界を実現してくれました。

そしてシンエヴァは2021年春公開、NWHは2022年1月公開の作品です。今までのヒーロー映画にはあまりなかった『救済』によって世界を守るというストーリーは、今この殺伐とした現代社会だからこそ響くものがあるように思いました。


この作品でヒーローとして子供から大人に成長したトムホピーターは、これからのMCUでますます活躍してくれるでしょう!そしていつかスパイダーマンの後輩的ポジションのヒーローが出てきたら、今度はピーターが父親としてそのヒーローを育て、またそのヒーローがピーターの元を離れ一人前のヒーローとして成長するのでしょうか。

そんなアベンジャーズの成長が見れたら最高ですよね!

とくにアベンジャーズの面々は家族を失っている人が多いので、アベンジャーズがひとつの家族のように成長していってくれたら本当に素敵だと思います。


今回はここまで!長くなりましたが、ここまでご覧いただきありがとうございます!


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