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エルワンさんの奥様への手紙:「対談エルワンさん」の編集後記に代えて

拝啓、エルワンさんの奥様へ

 旦那さまとの3回の対談は、ご自宅の3階への階段のように、ひたすら登り走り続ける旦那さまの真摯な人柄、優しい語り口、その奥にある強い信念、それらが自然体の中にあることに、お話をしていて実に気持ち良い時間が過ごせました。

 第1回目は初対面の硬さは最初からなく、エルワンさんの気さくなお人柄が前面に出てきて、あっ、これなら大丈夫だな、と直ぐ感じました。なにせ冒頭の「28段階段登り、5時間29分、713往復、獲得標高3793m富士山超え」をご自宅の階段で「成し遂げた」ことに私は感動しましたが、奥様は違う感想をお持ちだったようで、私が間違っていることに気付かされました。そりゃ「おかしい」ですよね、階段が汗で洪水状態になってしまったのですから。パートナーとしては、たまったもんじゃありません。

 私も、自分で言うのもナンですが、かなり変わっているので(参照:三河屋幾朗と言う生き方)、エルワンさんにはシンパシーを感じるのですが、女房はいつもとんでもないことを始める私を、それなりに楽しんでいるようです。では、奥様は実際のところ旦那様をどのように思って暮らしてらっしゃるのか。

ラジオ:第1回フランス人山岳ウルトラマラソンのエルワンさん
ラジオ:第2回フランス人山岳ウルトラマラソンのエルワンさん
ラジオ:第3回フランス人山岳ウルトラマラソンのエルワンさん

エルワンさんには、3回にわたって次のことをお聞きしました。


エルワンさんにお聞きしたこと

1.エルワンさんからの100マイル山岳マラソンとは
2.「エルワンさんからのお返事」朗読
3.エルワンさんの半生:出身・大学・ご家族
4.エルワンさんの練習方針
 ポイント練とリカバリーを重視
 マラソン練の特徴:階段練習、高強度練習
 四季と自然を楽しみながら走る
5.「奥様にやらないで」と言われてしまった「階段練」
6.100マイルマラソンの装備、補給計画
7.山岳ウルトラマラソンの魅力
8.ランニング歳時記:自然の中で走る
9.エルワンさんの食事:日本食、野菜中心(キノコ好き)
10.この一週間の練習内容:多摩川沿、階段練
11.その練習の目的:ゴール
12.連続フルマラソン・サブ3完走記録34回、なぜそれを成し得たか?
13.リカバリーと体のメンテナンス
14.なぜ山岳ウルトラマラソンなのか?きっかけは?魅力は?
15.なぜ走るのか?何を求めて走るのか?その先にあるものは?


印象深かったのは「エルワン流 走る哲学」

 第3回目の後半でエルワンさんが「走る」ということについて、ご自身の哲学を語って下さいました。フランスの大学を卒業された後、米国でトップクラスのニューヨーク州立大ストーニーブルックス校で学ばれたエルワンさんですから、もとより秀才で知性の高い事はお話して直ぐ分かったのですが、得てして突き抜けた人は「変わり者」であることが多く、それが他にない魅力だったりしますので、期待しておりましたが、それが的中しました。

サブスリーは「想定内を走るレース」だが、山岳マラソンは「想定外のことが必ず起きる」から面白いとエルワンさんは言います。一般人にサブスリーが想定内とは絶対に言えません。なんとも「想定外」の余裕の発言です。

 そんなエルワンさんですが、フルマラソンの記録が頭打ちしてきて、年齢的にハーフやフルマラソンのような「短い距離」では記録が伸ばせないと口にします。そこで山岳ウルトラマラソンが出てくるのですね。50歳を目前にして、スピードよりは耐久走にシフトして行こうという意志が伝わってきます。日本では北・中央・南アルプスを繋ぐ「超々ウルトラ山岳マラソン」がありますが、そこへの参加もお考えになっているようです。

 また、ヨーロッパのモンブランを走る「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」への参加は考えていますか、とお聞きしたら、「走ってみたい」と言うので、もしそれが実現するのなら、航空券を無理くり確保して応援に行きたいと思います。

  「走る」は人間の起源、そうエルワンさんは語ります。走るのは自然なことで、子供たちは何も言わなくても走り回ります。人間は他の動物より決して速くない、しかし長距離を走れるのが人間の特徴だそうです。人間としての自然の欲求「走る」を「人間らしく続ける」ことを楽しみたいと言います。

 困難があっても乗り越えられる能力、ウルトラマラソンを思えばなんだってやれる!という逆境を乗り越える糧になると、このコロナ禍を通じて思うそうです。そんな困難への挑戦を「遊び」と言い切るエルワンさん。過酷さえ楽しむ、心の余裕を感じました。


パートナーの「偉業」をどう思ってらっしゃるのか?

 ランナーならずとも、この鉄人にして走る哲人は、会う人を、そして一緒に走る人を魅了して離さないと思うのですが、パートナーとして家人のエルワンさんはどんな人なのか、その生態はいかなるものか、興味を抑えることができません。前述の「変わり者」が家の中でも存分に発揮されているのではないかと推察しております。

 そんな外から見れば十分に規格外のエルワンさんが、家の中でも常識の外にいるかもしれない、それはどんな具合だろうと興味津々です。これだけの信念で走り続けている旦那様は、私と似て、案外家の中では奥様に頭が上がらないのではないか、と。

 1月にエルワンさんは腕を骨折されましたね。腕を釣って帰ってきた姿にびっくりされたでしょう。埼玉国際マラソンの当日は熱を出されてDNSでした。折れた腕を抱えて「次はハイテクマラソンだ!」と言って残念がる旦那様を、どう見ていたのか。

 骨折後、ほどなく府中駅伝に参加して、「変人たちの巣窟」多摩サブスリー会の練習会へも行かれて、10㎞をキロ4分15秒で「足らない」というエルワンさんに、怪我した体なのに「おいおい、違うでしょう、それ」と私は思ってしまいますが、パートナーとしてはどうお感じでしょうか?ご主人がブログで示してますように、まさにこれだと思います。

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元来「やばい」は「危ない」という使われ方以外に「スゴイ」という良い意味でも使われますので、「やばい」旦那様は「すごい」旦那様ですので、日々の生活は楽しいのではないかと思います。やはり家の中では、こんな感じなのでしょうか。

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娘さんのこと

 Skyrunning Clubで高校生にしてナショナルチームメンバーとお聞きしました。このコロナ禍が無ければイタリアへ参戦されていたはずの娘さんですから、お父様のDNAを引き継いで、頑強な体でいかんなく才能を発揮されているのだと思います。

 ここに来るには相当の走り込みが無ければ成し得ないですから、お父様を見習って相当の練習をされているのだと思います。普通はお年頃、思春期の娘さんが「お父さんキライ」と言い出す頃ですが、お家の中ではどうなのでしょうか。日本人家庭には無い、フランス人ゆえの文化の違いもあるのではないか、そのように想像します。

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私はベルギーに一時住んでおりましたが、地元のベルギー人の家に行くと、家族という単位を大切にして、親子の会話が日本人とは比較になりませんでした。子供も一人の人格として認めるベルギーと、子供は親の所有物的な意識の強い日本とでは、子供の育て方に大きな違いが見られました。

エルワン家はフランス人の旦那様と日本で暮らすというミックスカルチャーでの子育てですから、アイデンティティも含めてご苦労があるのではないかと思います。その辺りも是非お聴きしたいです。


お手紙ならお返事を頂けるとお聞きしました

 ラジオの収録に是非にとお願いしましたが、声でのご出演はかないませんでした。その代わり手紙にはお返事いただけるとお聞きしましたので、そんなチャンスを逃してなるものかと、このようにお送り申し上げます。

誠に不躾で申し訳ありませんが、「変わり者」ということでご容赦いただいて、お返事いただけるのを心よりお待ち申し上げます。

敬具

三河屋幾朗


付録:ラジオ「フランス人山岳ウルトラマラソン」のエルワンさん

※写真引用はエルワンさんHP「多摩川マラソン日記」より
エルワンさんの自己記録
5K :17分06秒 (2015.2.11 府中駅伝 )
10K :35分16秒 (2015.3.1 立川ハーフマラソンの通過ラップ )
ハーフ :1時間15分18秒 (2015.3.1立川ハーフマラソン )
30K :1時間52分37秒 (2015.11.22 つくばマラソンの通過ラップ )
フル :2時間41分34秒 (2015.11.22 つくばマラソン )
富士登山競走:3時間07分12秒(2015.7.24 )
100K :8時間07分47秒(2015.6.6柴又100K )
ハセツネ:9時間27分16秒(2014.10.12 )

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