菅沼恭司

世人もすなる日記といふものを、吾もしてみむとてするなり。 いろんなテキストを書いて、皆…

菅沼恭司

世人もすなる日記といふものを、吾もしてみむとてするなり。 いろんなテキストを書いて、皆様に見て頂いて生きている物書きです。 ここでは思い出、奇妙なお話し、筆のすさびなどいろいろと。 よろずのご依頼、ご相談などは yahaginosuke@Gメールまでよろしくお願いいたします。

マガジン

  • ものかきものがたり

    物書きになりたかった―― 田舎の愚かな少年が、そんな妄念にとりつかれ。故郷を飛び出し、上京してもがいて迷って絶望して立ち直ってまた迷って。しまいには「不肖の私」たる物書きになるまでの思い出語りです。 ほぼ失敗談しかありません(遠い目)。

  • 書けん日記

    不肖。書けん作家の、日々の苦悶とか無為とか後悔とか失敗とか。ささやかな慰め、喜びなどを不定期と定期更新の間を揺れ動きながら書く日記です。

  • 三河もん昔話

    書けん日記の傍ら、不肖が思い出の中から書く生まれ故郷にして今を生きる土地『三河』地方の、とりとめないさまざまの昔話や思い出を書く場所です。 おばけの話、不思議な出来事など。

最近の記事

ものかきものがたり:4行め 「方便」

バブル期初頭。 上京し、東京某アニメ学院シナリオ科に入学した愚かな青年は。そこで、物書きへの道が遠いことを再確認する以外、何も得られなかった。失望と不安だけがつきまとう1年。そして2年目には、青年はシナリオ科に通うことをやめてしまい、ただの高卒無職のおのぼりさんとなって……東京の片隅で燻るどころか、湿気って火もつかない埃ごみのような有り様になってしまっていた。 だが……青年は。故郷の三河には帰らず、東京の片隅、中野の一角のボロアパートに住み続けていた。 学院と連携した不動産

    • 書けん日記:32 世界の終わりの前と後に

      昨今―― 世界情勢、とくに東欧、中東あたりがまたもやきな臭い、今日このごろに。 T氏「ちょいと前に、こういうアニメをやっていてだな」 不肖「なるほど、ポストアポカリプスな。ゲームでもいっぱいありますし」 不肖「あっそうだ(唐突)。Falloutのドラマ見なきゃ。ゲームやってからのほうがいいですかね」 T氏「情報ゼロからのほうが面白いかもしれんぞ。それはそうと――」 不肖「はい」 T氏「現状、いつ第三次世界大戦がおこって、今の世界がふっとんでポスト・アポカリプスになってもおか

      • 書けん日記:31 貧乏脱出めし - バイ貝のエスカルゴ風

        貧乏めし脱出企画、エスカルゴを食べてみよう! ……は、脱出できたんだか、できなかったよ……だか、わからん結果となってしまいまして。 そのさいに、 T氏「エスカルゴってソースが美味いだけなんじゃね」 不肖「その可能性もありますね……おフランスのエスカルゴバターソースは絶品、サイゼリヤのエスカルゴの、ガーリックとオリーブオイルのソースも実家のような安心感でうまし、で……かんじんの、エスカルゴの身のお味は……うん」 T氏「タコみたいな味、と申しておったの」 不肖「冷凍、解凍にし

        • 書けん日記:30 ヘヴィメタルは効くようになるのか

          不肖「おお。こちらの映画は。例のネットミームの元ネタでは」 T氏「そう。あの『ヘビィ・メタルはまだガンには効かないがそのうち効くようになる』というやつだな」 不肖「植物とか実験細胞に音楽を聞かせると、様々な効果が発現する……なんて話もありましたね。あながち有り得ないことでもなかったりとか」 T氏「というわけで」 不肖「はい」 T氏「メタルとかロックとか聞きながら仕事してみるんだよォ。ガンに効くなら書けんにも効くかもしんねぇからよォ」 不肖「やめてください、私の書けん病がガンよ

        ものかきものがたり:4行め 「方便」

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        • ものかきものがたり
          5本
        • 書けん日記
          33本
        • 三河もん昔話
          3本

        記事

          ものかきものがたり:3行め 「東京」

          物書きになりたい。 未来への展望でも、未来への夢ですらもない。ただの妄念じみた空想、逃避に突き動かされた愚かな青年は、背嚢ひとつで東京行きの夜行列車に乗りこんだ。 東京行きの上り東海道線、夜行列車は――名古屋を出て、浜松、そして熱海あたりからは通勤時間帯の山手線もかくやという混みよう、ボックス席に座る私の前にも立っているおっさんたちが押し込まれる有り様で。 しかも、私に場所を揺すってくれた労務者風のおっさんはずっと酒を飲み続けていて、電車が神奈川に差し掛かったあたりからは絡

          ものかきものがたり:3行め 「東京」

          書けん日記:29 土を喰らう、或いはブッコロ(指定野菜)

          春ですよー。 T氏「のっけから老頭児ネタはルール無用すぎだろ」 不肖「えー。若いファンも多いし、毎年増えてるんですよ。東のほうの界隈って」 T氏「それはそれ。お前の場合は いた↓いた↑しい(VOICEROID風)」 春です。出会いと、別れの季節―― 庭にいた小鳥たち、みかんの輪切りがお気に入りで、いちばん入り浸りで「もう君ら、うちの子だよね」状態だったメジロの夫婦たちは……。 ある日とつぜん、雨上がりの天気の良い温かな日に……鳴き声一つ、のこさず。あの鮮やかな緑でちいかわ

          書けん日記:29 土を喰らう、或いはブッコロ(指定野菜)

          2行め:「上京」

          旅立ちの朝―― よく使われる表現ではあるが、私の場合。愚かな青年の上京、その旅立ちは夕暮れだった。 三河。愛知県から、東京。飛行機や新幹線を使えば数時間のお手軽旅行だ。 だが、愚かな青年にはお金がなかった。出費は、極限まで抑えたかった。新幹線などという贅沢、許されるはずもなかった。 愚かな青年がとった、移動手段は――「青春18切符」。 それは、東京、当時は有明で行われていたコミックマーケットに参加していた知り合いからの入れ知恵だった。 東京へ行くのに、新幹線だと当時でも1万

          2行め:「上京」

          書けん日記:28 AI利用で作家脱出!?

          或日、T氏との打ち合わせにてーー 不肖「最近はAIがすごいですよね。もしかして、小説もAIに書かせることができるんじゃ・・・」 T氏「何を言い出すかと思えば。作家たるもの、自分の力で書くのが当然だろう」 不肖「でも、AIなら設定やプロットを入力すれば、あとは自動で物語を生成してくれるかも」 T氏「ふむ・・・確かに、AIの文章生成能力は目覚ましい。だが、それで作家が務まると思うか?」 不肖「うーん、そうですね。AIに頼りきりでは、作家としての創造性や個性が失われてしまう恐れが」

          書けん日記:28 AI利用で作家脱出!?

          書けん日記:27 希死念慮と戦う 悪夢という名のクスリ

          先日。 買いものに出たさい、いつもの市場ではなく、近場にあるショッピングモールに出向いて買いものをしたら。 それほど混雑もしていない店内で、しっかりウィルスに罹患して翌日発熱、ひどい頭痛と肺の痛みに一週間ほど臥せってしまうという失態をやらかしてしまった不肖です……。 ふだん、あんまり出歩かない、そして外出もほぼ車という不精な生活で体がなまっていたせいか、ちょっとした人混みでもやられてしまう。以前、コロナにやられて以来、風邪を引きやすい雑魚体質に落ちてしまった不肖です……。

          書けん日記:27 希死念慮と戦う 悪夢という名のクスリ

          書けん日記:26 沈黙の旅人たち

          2月も半ばを過ぎた、或日、ある夜―― 三河地方の僻地にも、天気予報通りに春一番が吹いて。その台風のような暴風は、刺すように冷たい雨を伴って夜まで暴れ続けて。 三河ぐらしが長くなった不肖は、2月にこの天気が来ると。春一番からの夜の嵐が来ると、暦も気温もまだ2月の真冬でも、春が近づいてくる気配を感じる……今日このごろ。 三河の田舎ですと、2月の外の野辺を見ればそこかしこに、春のさきがけが目を楽しませてくれる。梅の木に花がつき、木瓜の小枝に花のつぼみが可愛らしく並んで。ヒヨドリた

          書けん日記:26 沈黙の旅人たち

          書けん日記:25 貧乏脱出めし - エスカルゴ

          或日。いつもの。 T氏と、欧州を舞台にした作品の設定や資料などの打ち合わせをする中、余談で。 不肖「そういえば私。エスカルゴ食べたこと無いんですよ、エスカルゴ。あれだけ欧州やアメリカを舞台にして、お高いセレブ描写もしているのに。これでは童貞の書くセッ」 T氏「サイゼリヤにあったぞ、たしか。エスカルゴ。打ち合わせもういいから、行ってどうぞ」 不肖「ぶちさみしいのう。奢ってくださいよ」 T氏「おっさんがおっさんに奢られるゼリ屋デートって。地獄か。炎上案件やないか」 不肖「割り勘

          書けん日記:25 貧乏脱出めし - エスカルゴ

          書けん日記:24 実践貧乏めし - とうもろこしの粉のパン

          私の食生活からひっそりと始まった、日米貧乏めし合戦、後編―― 『とうもろこし粉のパン』に取り掛かる。 T氏「大根飯はいいとして。アメリカ代表のとうもろこし粉のパン、ってこれ」 不肖「いわゆるコーンブレッドですね。日本だとおしゃれなイメージの」 T氏「貧乏めしとは、少し違うんじゃないかコレ」 不肖「アメリカ文学、マーク・トゥエイン先生の作品や、大草原の小さな家にもコーンブレッドはよく出てきますし。なんてったって感謝祭では七面鳥と合わせてコーンブレッドはマストアイテムですし」

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          書けん日記:24 実践貧乏めし - とうもろこしの粉のパン

          書けん日記:23 実践貧乏めし - 大根飯

          或日。テレワークな打ち合わせのあと―― T氏「そういえば。さっき、おまえ不在になっていたけど。どこか出ていたのか?」 不肖「はい、日が暮れる前にと。畑に。大根とカブを掘ってきまして」 T氏「大根掘りで仕事の打ち合わせを中座するやつ、初めて見た」 T氏「というか大根って。おうおう、さては大根飯か。おしんか」 不肖「ししし、失敬な。いくら三河の百姓でも、米くらいはふつうに食べられるんですけお。大根飯とか、たぶんうちの父や祖父の頃でもやっていなかったかと――」 T氏「これが奥羽と三

          書けん日記:23 実践貧乏めし - 大根飯

          書けん日記:22 家之庭目白

          1月も終わりが近い頃に、寒波到来。 昭和に建てられた日本家屋、断熱とかそういうのがほぼ皆無な私の古屋の中では、部屋の中でも吐く息が白く――火鉢で炭を焚いても、部屋の空気は シン と痛みのように固い冷気がこもったままで。 窓の外、夕暮れから即暗くなる庭を見れば、大粒の雪が降っていて。 「あっ……これは積もるな(察し)」 と、かじかむ手でキーボードを叩いたりマウスをポチる夜を過ごすと―― 積もりました。三河の田舎は、けっこう降りました、積もりました。 朝も早くから、不肖はそそく

          書けん日記:22 家之庭目白

          たかなし

          元日――不肖の住む古い木造の住宅も揺れて、窓から見える電柱も電線もぐわんぐわん揺れまして。しばらくはあたふたとしておりました。 そして……。 書けぬ。いつものアレが、再発。 元日の地震からこちら、不安がつのって、心配が高じて、気もそぞろで。書けぬ。 火を使うのも控えるようになって、寒い三が日、松の内を過ごして……。 アレよという間に、もう10日。その間、何も手つかず。 ――しかも。 そういう、気分が塞ぎそうなときにかぎって。例年と違う現象が。 以前の日記でも書かせて頂いた

          ゆくとし

          早いもので、気づけば今年も年末、大晦日。 この不肖、この歳まで生き延び、こうして書けんなりにも物書きとして方便を立てて生活を、こうして居られるのも、皆様のご愛顧とご声援のお陰と――この歳の終わりに、しみじみと感じつつ、毎日の朝陽にするがごとく拝謝する日でありまして。 そして、今年は。 これまでblogもTwitterもやってこなかった老頭児のわたしが、いきなりこちらのnoteをはじめまして――不安しかなかった、私の日常の切り抜きなどを、皆様にご高覧頂いたばかりでなく。 しかも