見出し画像

書けん日記:30 ヘヴィメタルは効くようになるのか

不肖「おお。こちらの映画は。例のネットミームの元ネタでは」
T氏「そう。あの『ヘビィ・メタルはまだガンには効かないがそのうち効くようになる』というやつだな」
不肖「植物とか実験細胞に音楽を聞かせると、様々な効果が発現する……なんて話もありましたね。あながち有り得ないことでもなかったりとか」
T氏「というわけで」
不肖「はい」
T氏「メタルとかロックとか聞きながら仕事してみるんだよォ。ガンに効くなら書けんにも効くかもしんねぇからよォ」
不肖「やめてください、私の書けん病がガンより業病みたいに言うの」

――されど。
書けん。この有り様のままでは、この身も、羞恥にして尊大な我が心も活かし続けることも出来ない現状では、業病に冒されているのも同じ、この不肖。
――ならば。
いつも聞いていた音楽を、ちょいと差し替えるぐらいならば。
というわけで。30年前の家庭用ゲーム機開発の隅っこで埃まみれになっていた青春時代末期、20年前のまだいちおうは美少女が看板の作品を書いていた中年期の終わりに聞いていた、今ではもう古典にカテゴライズされるようなヘビィ・メタルのアルバムをいくつか、引っ張り出してみたんですよ。ヘビィ・メタル。

そして――なぜか。今回一番、あらためて刺さり直したのがこちら。

なぜか、マリリン・マンソン。『メカニカル・アニマルズ』――
以前、20年ほど前に聞いたときは正直、あまり印象にも残らず……アルバムも、2回目のプレイヤーにかけられることもなかった思い出がある、こちらのアルバムが。
なぜか……初老のいま。書けん体と心に、ガツンと。刺さったのですよ、染み込んだのですよ、震えたのですよ、加熱されたのですよ、Coolになったのですよ。

ハードでコアなヘビィ・メタルファンの方にいわせると、マリリン・マンソンはヘビィ・メタルじゃない、オルタナティブやシアトリカルだよ、となるのかも知れませんが……。
あの曲の旋律、歌声。そこで歌われる歌詞のメッセージ。それらが合わさった……曲。
とくに歌詞は、ともすれば支離滅裂ですらあるように見えて――
悲痛、嘲笑。罵倒、慟哭。その言葉は鮮烈、洒脱にして、そして品格。
それがですね。書けん有り様の不肖に、下手なアルコールやニコチン、お薬よりもがつんときまして。

私の大好きなコミックのひとつ『迷走王 ボーダー』。
この中に、主人公の一人、さえない中年男(のフリをしている)蜂須賀が。相棒から貸してもらった、当時は最新鋭のCDプレイヤーで、それまで興味もなかった音楽を。『ザ・ブルーハーツ』のCDを聞いたら、寝食も忘れて瞑想するかのごとく聞き入るという名シーンがありまして。
『メカニカル・アニマルズ』を聞いた私も、まさにそれ。
蜂須賀になりたかった中年時代を思い出すかのように……聞き入ってしまいました。
歌詞カードを見ながら聞いて。そのまま素流しで聞いて。
書けん、真っ白なブラウザを前にして聞いて。
――そして、いま。

うん、効くんじゃないですかね。ガンにも。ヘビィ・メタル。薬効、臨床例としては確定していなくても、プラシーボ以上のものがきっとある。そんな気になる。
そんな『気』になれた時点で、効果ありの判定してもいいのでは?

T氏「もうちっと、効果を実証してほしいんですが。それは」
不肖「すみませんすみません、もっと。なんでも書きますから」
T氏「今。まあそれはそれとして――昔効かなかったものが今、効く。というのはいろいろ興味深いし、いくつか身に覚えもあったりで。面白いかもしれんな。なぜ、効いたかを考察すれば……死病への対策も、他にも見つかるかもしれんし」
不肖「いま、業にあきたらず 死 とかいいませんでした?」

なぜ? 20ン年前にはスルーしていたものが、なぜ今、しみるのか。
――感受性が上がった、精神が鷹揚になった。
――物書き家業が長く、いろんな創作へのチャンネルが開いた。
これらは……思いつきましたが、はい。どれも違いますね。

――私は。弱くなった。弱っている。年老いた。牙が歯槽膿漏になっている。

これ。イメージだと、若い人々の迷い、反抗に刺さるイメージがメタル、ロックですが――それは若さゆえの、ゆらぎや弱さに刺さっている、と考えると。
今の私の、羞恥で尊大なだけの、弱いメンタルに『いま』。
ヘビィ・メタルが刺さるのも、すごく自然なことのような――昔はまだ、気取ったり虚飾を纏うだけの衒気げんきがあった私、その上っ面が剥がれたところに、ようやく……様々のメッセージが染み込むようになっている、と。
弱っているからこそ、クスリは、そして毒も……効く。

同じようなものに……こちら。

『薬用養命酒』。コロナの後遺症(自己診断)がなかなか抜けない私に、T氏が送ってくださったやつ。
これがですね。やっぱり昔、10年以上前にためしてみたことがあるのですが――そのときは、効果が実感できないというか、途中で飲むのをやめちゃって冷蔵庫の地層になっていた養命酒。
これがですね。
2回目のコロナで死にかけて、やっと起き上がれるようにはなったものの……息をするのも苦しく、併発した帯状疱疹と副鼻腔炎がなかなか治らず、難儀していたところに頂いたのを飲み始めたらですね。
……3日目くらいでしたか。「あっやっべ。また熱がぶり返した」と思ったら。
発熱ではなくて、体温が上がって。神経痛の痛みもひいて、ここで描写するのもためらわれるレベルのファッキンな鼻水が、気持ちいいくらい止まらなくなって。
かなり体調が良くなった、そんな養命酒の薬効がしみじみと(効果には個人差があります)。
……ん? んっ、んっ? ん?
弱った体に効く……これ、ヘビィ・メタルと同じでは?

……もしかして、弱った今はチャンス?
……もしかして、私の学びは、虚飾の皮が剥がれ落ちたいま。これから始めねばならんやつ? などと、戦慄と喜びを綯い交ぜにしてなにかに使う縄を作るように、いま。
メタルをきく、不肖です。


もしよろしければサポートなどお願いいたします……!頂いたサポートは書けんときの起爆薬、牛丼やおにぎりにさせて頂き、奮起してお仕事を頑張る励みとさせて頂きます……!!