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#旅行記 ドバイの彼は今。

最近よく思い出してしまう人がいる。
異国の地でたった7時間だけ一緒に過ごした人。
彼は今、このコロナ禍をどう過ごしているのだろうか。

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たった7時間

2019年11月30日。
私たち3人はドバイに降り立った。

4泊6日のUAE旅行、
初日の予定は「デザートサファリ」。

デザートサファリとは、午後から夜にかけて行われる砂漠を4WDドライブで爆走したりラクダに乗ったりヘナタトゥーやシーシャ体験もできる「砂漠ツアー」のようなものだ。以下は実際の私たちのスケジュールである。

15:00 ホテルにお迎え。砂漠へ
16:00 4WDドライブ
17:00 砂漠で記念撮影📸
18:00 キャメルライド🐫
18:30 ヘナタトゥー体験
19:00 ベリーダンスなどを見ながら砂漠で夕食
21:00 ホテルへ
22:00 ホテル到着

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彼は、私たちのツアーガイドだった。
だから、彼とはたったの7時間しか一緒にいない。

思い出

①確かな運転技術

彼はツアーガイドであり、そして私たちの乗車した車の運転者でもあった。デザートサファリで体験する4WDドライブは、道路のない砂漠をエンジン全開で行く非常にスリリングなもので、ジェットコースターが大好きな私も本当に死ぬかと思った。

そんな4WDドライブを私たちが生き延びられたのは、ひとえに彼の確かな運転技術のおかげである。砂漠を爆走する中、車内で爆音で流れていたアラビアンポップ音楽も忘れられない。

「しっかりシートベルトを締めろ」

と言う時の真剣な眼差しと、楽しそうにハンドルを切る彼の顔をよく覚えている。

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②謎の写真撮影

ツアーガイドの仕事には写真撮影も含まれているらしい。彼は車を止めて写真撮影タイムが取られるごとに私たちの写真をたくさん撮ってくれた。また「ここに立って」「こういうポーズをして」と指示まで出してくれるのだ!(非常にありがたい)

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しかし、中には謎のものもあった。「砂を投げるポーズ

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(「なんだこのポーズ?」と思っているのでみんな楽しそう)

彼の撮影技術とたまに出る謎のポーズ要求も忘れられない思い出の1つ。

③帰り道のおしゃべり

最も印象に残っているのはコレかもしれない。
ホテルへの帰り道、
助手席に座った私は運転する彼とお喋りをしていた。

・彼はケニアから出稼ぎに来ていること。
・ドバイに住み始めて3年目なこと。

その時、初めて聞いた。
他にも彼は

「今日はこんなに帰りが遅いけど明日は早朝から山のツアーなんだ」
「ガイドの僕がいるのに質問をSiriに聞く観光客がいるんだよ」
「日本人は良い人たちだけどあまりよく喋らないよね、今日の君たちはたくさん話してくれて嬉しかったな」

などと話し始めた。
大きなデパートの前を通った時には

「休みの日にはここでお買い物したいなと思うんだけどね、いつも疲れていておうちでダラダラしちゃうんだ」

とも言っていた。

ドバイには外国人労働者が多いことは知っていたが、実際に働いている人の話を聞いて、感じるものがあった。

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今、思うことと少しの後悔。

彼は今、どうしているのだろうか。

コロナウイルスの影響で国家間での移動が制限され、観光客は激減しただろう。ゼロかもしれない。ドバイでは人口の8割以上が外国人労働者だと言われる。実際、旅行中に出会った人の多くは外国人労働者だった。タクシー運転手はパキスタン人がほとんどだったし、ホテルのフロントスタッフはインド人だった。

全世界の観光業が苦境に立たされている今、彼らのような出稼ぎ労働者たちはどうしているのだろうか。解雇されてないだろうか。元気にしているだろうか。今日のごはんはちゃんと食べられているのだろうか。

ホテルに到着し彼にバイバイをする時、私たちはチップを渡そうとした。しかし、到着初日で空港で両替したばかり。現地通貨の小銭はなく、お札は額があまりに大きすぎる。

私たちは仕方なく「いつか日本に来たら使ってね」とみんなの財布に入っていた日本円の小銭を渡した。彼は心底嬉しそうに "Thank you." と言ってくれた。

あの時、せめて現地通貨のお札を渡しておけばよかった。
名前を聞いてクチコミを書いてあげればよかった。

そんなどうしようもない後悔が今さら頭に浮かぶ。名前も知らない、ドバイでたった7時間だけ一緒に過ごした彼が今日も世界のどこかで元気でいますように。

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(iPhoneのポートレート機能により背景にされた私たち)

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