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蟻の大冒険

仕事中、忙しそうにどこかへ向かう小さな蟻を発見した。

どうしてこんなところに蟻がいるのだろう?

たった1匹でジグザグ歩きをしながら私の目の前を通り過ぎて行く。

こんな殺風景なオフィスの大理石のカウンターに何の用があるのだろう?

蟻って基本的に集団行動だと思うんだけど

この蟻は集団が嫌いで逃げ出してきたのだろうか?

なんだかイジメてみたくなって蟻の目の前にボールペンを置いてみた。

蟻はそのボールペンが危険物なのかをチェックしている様だった。

蟻には縫い針の先端くらいの大きさの脳があるらしい。

小さな脳だけど、色々と考えている様子は人間と変わらないなと思った。

危険物では無いと判断したのか、蟻はそのボールペンの上を2往復した後、また大理石へと降りて同じ方向へと足早に向かった。

なんだか悔しくて蟻の前に再びボールペンを置いてみた。

蟻は、またかという様子でさっとボールペンを乗り越えてすぐに大理石へと降りた。

私はムキになりボールペンを蟻の前に再び置いたつもりが蟻の上に置いてしまった。

蟻はボールペンにくっついたまま動かなくなった。

降っても落ちてこない。

潰れて死んでしまったのかも。

悲しい気分になった。

しばらくして、蟻の触覚と前足がゆっくり動き始めた。

蟻は生きていた。

気絶していたのだろうか

少し震えながら、ゆっくりとボールペンから降りて大理石の上を同じ方向へとゆっくり歩きだした。

そっち側に一体何があるの?

急に仕事の電話が鳴り、用件をメモをしている最中に蟻はいつのまにかいなくなってしまった。

私が目を離してるとわかって急いで逃げてったのだろうか。

それともどこかへワープしたのだろうか。

今回の私との出会いだけでなく

蟻にはまだまだ沢山の困難が待ち受けてるかもしれない。

清掃員の掃除機に吸い込まれてしまったり

歩行者に踏まれたり

1匹で地図の無い大冒険。

皆と一緒に同じ場所に居ればよかったなと後悔しているかもしれない。

だけど辿り着いた場所には蟻が望んでいた新しい世界や仲間達と出会えるかもしれないね。