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口コミで人を動かす。「書いて届ける」ライターの原点

よいものを見つけたら、よいものを見つけたと叫んだ方がよい。

みんなよいものが知りたい。なにより、よいものを作った本人に、その声は必ず届く。もっとよいものを作ろうと本人は奮い立つでしょう。

『20代で得た知見』p134より

よいものを見つけたら、自分から声をあげて伝えよう。

『20代で得た知見』を読んでそう心に決めた。

だが、実践となると思うようにいかない。

たとえば初めての飲食店に入り、そこの料理をとても気に入ったとき。

帰り際に「おいしかったです。また来ます」とでも一言添えたいのに、言えない。

言おうとしても言えない。
それを言う間、スタッフと自分が一瞬その場に留まることを考えるだけで、恥ずかしさを覚えるのだ。

いつも去りながら小声で「ごちそうさまでした」と伝えるのが精一杯。

だから私は、私なりのやり方で「よい」と声をあげることにした

口コミをはじめたきっかけ

『いまは食べログやぐるなびなどのグルメ媒体ではなく、Googleマップの口コミから飲食店を選ぶ人が増えている』

前職で居酒屋の店長を勤めていたとき、このように上司から共有をもらった。

たしかに私も実際、飲食店を選ぶときはGoogleマップを使う。

まずは地理的に近いところをGoogleマップでピックアップして、星の数や口コミを見て評判の良さそうなところを2、3件絞る。その後食べログなどの媒体を見てゆっくり検討する。

「居酒屋」というキーワードで上位表示されないと、そもそも選ばれない。
これからはGoogleマップの口コミに力を入れていくべきだ、という本社の方針にも頷ける。


口コミの施策を進める中で、上司から「エビアンって口コミやってる?」と聞かれた。

「口コミやるとね、自分のローカルガイドレベルが上がっていくんだよ。せっかくいろいろな場所に旅行行ってるんだし、やってみれば?」

ローカルガイドレベル(Googleマップに口コミをあげると、投稿数や閲覧数などがポイントとして加算されて、レベルが付与される仕組み)はさておき、お客さんに「口コミ書いてください」とお願いする側が口コミを投稿したことがないのは、少々まずい

行ったことのある近くのお店からポツポツと、口コミを書き始めることにした。

どうせ書くのであれば、元「飲食人」のプライドを持って

口コミはだいたい、「すっごくよかった」か「すっごく酷い目にあった」ときにしか書かれない。

飲食店の感想を共有するだけなら、わざわざ口コミを書かなくてもSNSで事足りるからだ。


私はいい店の口コミを書くときに「何を伝えればこの店の魅力が伝わるか」「この店を調べるお客さんは何を知りたいのか」考えるようにしている。

せっかく紹介するのであれば、ただの感想で終わらせたくない。

それは自分が「よい」と思う店にもっとたくさんの人が来てほしいという想いが8割、残りの2割はかつて「飲食人」だったプライドだ。

口コミを書くとたまに、書いた店側から返信をもらうことがある。
定型分だとしても「届いた」気がして嬉しい。

口に出したかったことばを、代わりに文字で伝える

「店長、今日もおいしかったよ!」
「ありがとう。また来るね!」

今までたくさんのお客さんから、帰り際に温かいことばをいただいた。
帰り際の一言ほど、嬉しいものはない。これは経験済みだ。

しかし今改めて、帰り際にスタッフに声をかけることがどれだけ勇気のいる行為か、それをしてくれたお客さんがどれだけすごいかを感じる。

自分自身は恥ずかしくて、それができないのだから。


だから私はせめてものお返しで、退店した後口コミをそっと投稿する。

口で伝える勇気がないから、文字でどれだけの人を動かせるか勝負する

これって実は、ライターの原点ではないだろうか。

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