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学校現場、このままでいいのか

カンボジアの小学校で勉強する子ども。この国では授業はまだまだ教師主導で教科書を読み上げる、それを書き写す、の学習がほとんどだけど、どの子も真剣な表情で勉強していた。


20年ぶりに大学の先輩と再会した。
「僕ね、仕事やめたんだ」
から始まって、29年仕事で葛藤と向き合い続け、精神をすり減らした日々のこと、そしてその葛藤からついに解放されたこと、いろんな話を聞いた。

先輩は元々、わたしと同業者で学校の教員をしていた。
わたしもこの仕事をして23年目だが、この仕事を取り巻く環境はすごく変わった。それによって、今教員はとても疲弊していて、ある意味子どもたちも犠牲者となってしまっているなあと感じる。
その環境の変化は、ここには書ききれないくらいたくさんあるから、今日はその中の一つだけ、世代交代について。

23年前、4浪の末やっと教員採用試験に合格した。30代後半から50代の先生がたくさんいて、20代の先生はほとんど学校にいなかった。
「あなたが40代や50代になる頃は、きっと担任しながら校長もやらなくてはならないくらい、人員不足になるよ」と言われていた。すでに、現場の先生方はみんな20年後に起こるであろう学校現場の混乱を予測していた。

そして、20年が経ち、校長と担任の兼任こそいないものの、常に学校は教員不足が深刻だ。
わたしが教員採用試験に受からず4浪していた頃は、臨時採用の講師は余っていて、なかなか仕事にありつけなかった。でも、今は学校で先生が病気療養や産前産後休暇などを取る時の臨時講師が見つからない、といつも校長先生があちこちに電話を掛けて、講師のなり手を探している。そして、代わりの先生が来ないまま、たくさんの先生が代わりに授業を行ったり、自習をさせたりする。子どもたちや保護者がどんな思いでいるのだろう、本当に気の毒だ。

わたしが若い時にお世話になった、40代の先輩は皆次々に退職の時を迎えた。そして今、学校現場には若い教員があふれている。情熱を燃やし、やる気のある若い先生方も多いが、当然、結婚し家族をもつというライフイベントに差し掛かる教員も多いから、産前産後の休暇をとる人が多く、先に書いた「講師が足りない」問題が発生する。

また、教員の仕事は多岐に渡り、情熱だけでは務まらない。
授業や学級経営はもちろん、保護者への対応、クレーム処理、発達障害や様々な悩みを抱える子どもや保護者への対応、いじめ問題や生徒指導、外国語の指導、GIGAとよばれるタブレット端末やコンピューターを使った学習指導…。20年の間にやらなくてはならないことがずいぶん増えた。子どもたちの学校生活の大半である授業に関わる、教材研究、授業の準備の時間はほとんど取れない先生がほとんど。
知識も必要、経験も必要。決して楽な仕事ではない。そして、報酬がそれに見合っているかどうかといえば…。というわけで、精神的に参ってしまう先生や、やめてしまう先生も少なくない。

というわけで、わたしたちの世代(経験20年以上、40代後半〜)の教員は、ここへきて急にリーダーシップを求められる。当然、日々仕事に追われ、わたしたちの世代もまた精神を病む人が後を絶たない。
気がつけば、定年も延長となった。平均寿命が延びた今日、当然といえば当然のことだけど、先生たちは体力も気力もすり減らし、どうにかして60歳までには辞めたいと、経済的なライフプランに余念がない人が実は結構いる。つまり、長く続けられない、と思っている先生が多いのだ。

そんな中の、先の先輩の退職話。彼はまだ53歳。
子どもがいない夫婦二人の家庭で、奥さんはまだ現役。貯金でなんとか家のローンも完済したから、退職までは、転職先で細々生きていける程度に働くよと。教員を辞めたら、長年のストレスから解放され、メニエール病も治った。辞めたことは後悔してない、と清々しい顔で話していた。

先輩の決断は潔く、わたしも後に続きたいくらいの気持ちも正直ある。
でも、これからの学校現場からまた一人ベテランが去ったこと、学校現場は、教員を取り巻く環境はこのままでいいのか、と言う苛立ちにも似た不安。いろんな気持ちになった先輩との再会だった。


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