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その瞳が忘れられなくて

中米、グアテマラ
現地人が利用するチキンバスと呼ばれる乗り合いバスで北部の街シェラを出て、世界一美しい湖を望めるサンペドロ・ラ・ラグーナへ。

このチキンバス、アメリカのスクールバスのお下がりだそうで
シートは固く、三人掛けなのに定員オーバーは当たり前。
長距離移動には向いていない乗り物である。
その日は4、5時間程度の移動だった。
とても天気の良い日でクーラーなんかない車内だから窓は開けっ放し。
窓際に座って外の景色を眺めているだけで物思いにふけってしまうような自然の豊かさ。
朝市がどこの小さな集落でも開かれていた。
グアテマラという国に来て、たったの3日の私には、久しぶりの自然と土着感漂う村の景色が新鮮だけど、どこか懐かしかったのをよく覚えている。

途中の停車地で、民族衣装のウィピルに身を包んだ若い女性たちが大勢乗車してきた。
皆、朝市に行った帰りのようだ。
美しいウィピルに身を包んだ若い女の子が私の隣に座った。

チキンバスは運転手がアナウスしてくれる日本のようなバスではないため、降車地に着いたか分からない。
バスが停まる度に横の彼女に
「ここはサンペドロ・ラ・ラグーナ?」
と聞く。
何回目かのその質問の後、彼女から
「サンペドロに着いたら教えてあげるから安心して」
と笑顔で返された。
「あなたサンペドロ出身なの?」
「いいえ、でも近くよ」
拙い私のスペイン語で短い会話をした。

世界一美しい湖、アティトラン湖の周りには多くの村がある

どこの村においても女性は皆民族衣装を身に付けていた。

太陽が少し傾いた頃、
大勢の人々が降りる降車地。
横の彼女が
「ここよ!サンペドロに着いたよ!」

特に標識や看板もないただの村の入り口である。
彼女のお陰で乗り過ごすことなく降車できた。
「ありがとう!!」
お礼を言うと
「滞在楽しんでね」
とまた茶目っ気のある笑顔で返してくれた。

身の上話は全くしていないし
彼女の名前も分からない。
どんな村に住んでいてどんな家族や友達がいるんだろう。
もっと彼女を知りたいと思った時には
もうバスは遠くに行ってしまっていた。

ただ一つ、強烈に記憶に残っているのは
窓から差し込む光に照らされた
10代の少女の笑顔とカラフルな彼女の服。

彼女はとても眩しかったということ。


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