アンゼルム・キーファー、戦争の記憶
日本で2024年6月21日から、ドイツの名匠ヴィム・ベンダースが、戦後ドイツを代表する芸術家アンゼルム・キーファーの生涯と現在を追ったドキュメンタリー映画が公開されます。
オランダも観られるかな~と思ったら、もうすでに公開が終わってた。残念。
1月にフォーリンデン美術館で開催されていた「Anselm Kiefer – Bilderstreit」展に行った時にはまだ上映されていたようです。この展覧会がよかっただけにより残念な気持ちに。
この展覧会ではキーファーの作品の背後にあるストーリーが重要だったので、配布された解説が書かれた冊子を熟読しながら展示室をまわりました。
アンセルム・キーファーは1945年、第2次世界大戦中に生まれ、幼少期は戦後ドイツの廃墟の中で遊び、瓦礫の中から見つけた石で家を建てたそうです。
戦争の記憶が刻まれたものに囲まれて育った彼は、物と歴史の間に目に見えない糸を結びつけます。
巨大な鉛の本でいっぱいの本棚。
捨てられたストーリー(歴史の知識と歴史の重さ)の象徴として、図書館の鉄の棚に鉛の本を詰め込んでいます。
決して開くことなく閉じられてしまった歴史が綴られたページ。
持ち出せないようにつないでいる鎖がより一層強固にこの場所にストーリーをつなぎとめています。
展示室の一室に黄金の小麦畑が出現しました。
この小麦畑は戦争時の差し迫った飢餓の恐怖を示されていて、ここにも本が隠れています。
この作品はモーゲンソー・プランに関するものだそうで、よく知らないので調べないとと思っていて忘れていました。よかった、思い出して。
ライン川のほとりにそって下流へと歩いていく風景が描かれた木版画。それらを本の様に綴じています。
穏やかな川辺の風景かと思ったら、最後の方に戦争をほのめかすものが。
木目がぐるぐると渦巻いているのも不穏な空気を醸しています。
シューベルトの曲「冬の旅立ち」にちなんで作られたジオラマは、強烈なインパクトと重要なメッセージが託されているのが分かるのに、ドイツの歴史を知らないと理解できないもどかしさがありました。
おとぎ話の森のような舞台に置かれた古い病院のベッドやキノコといった小道具に名前が書かれているんですが、知らない名前ばかりで…。
こういうのも、映画を見れば全部とはいえないまでも予想できるぐらいまでになったもと思いました。
Anselm Kiefer – Bilderstreit
2023.10.14-2024.02.25
フォーリンデン美術館 Museum Voorlinden
Buurtweg 90
2244 AG Wassenaar
The Netherlands
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