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『風の谷のナウシカ』の世界観と音楽

2020年のクリスマスの金曜ロードショーで、通算19回目の放送となったスタジオジブリの名作『風の谷のナウシカ』(1984)。『ホルスの大冒険』(1968)『カリオストロの城』(1979)が公開当時ヒットせず、アニメ業界で干されてしまった宮崎駿さんが名誉挽回をかけて制作した入魂作品なのだそうです。

コロナ禍において「今の世の中を予見している」と一部で再評価され、実はナウシカには原作漫画があることも少しずつ知られてきているかと思います。漫画は1982年2月号より『アニメージュ』で連載をスタートし、映画制作などのために4度の中断期間を挟みながら、1994年3月号にて全7巻で完結しています。

漫画が完結する前に映画制作が始まったこと、制作期間が限られていてやむを得ずカットしたシーンがあることなどの理由で、映画と漫画でストーリーが異なります。宮崎さん自身も不完全な作品と評価し、高畑さんも「一番オチとしてやってはいけなかった宗教映画になってしまっている」と批評しているとか。ただ、物語の基本の部分は同じです。漫画の表紙裏にあるあらすじを引用します。

ユーラシア大陸の西のはずれに発生した産業文明は
数百年のうちに全世界に広まり
巨大産業社会を形成するに至った
大地の富をうばいとり大地をけがし
生命体をも意のままに造り変える巨大産業文明は
1000年後に絶頂期に達し
やがて急激な衰退をむかえることになった
「火の7日間」と呼ばれる戦争によって都市群は有毒物質をまき散らして崩壊し
複雑高度化した技術体系は失われ
地表のほとんどは不毛の地と化したのである
その後産業文明は再建されることなく
永いたそがれの時代を人類は生きることになった

ナウシカの物語の背景として、高度産業文明(≒18〜19cイギリス産業革命)が絶頂期を迎えた1000年後に「火の7日間」戦争が起きて、さらにそれから1000年後(漫画4巻p.28ではユパが、映画では大ババさまが「腐海が広がって1000年経ち…」と言っています。腐海が広がったのが「火の7日間」のすぐ後からだと考えられています)にあたる、だいたい3800年代だというのは押さえておきたいところです。

この世界ではセラミック片(→プラスチック大量生産・消費をイメージ?)が降り積り、「瘴気」という毒(吸うとナウシカの父のように病気(石化)になったり、吸いすぎると即死する)を発する巨大な菌類の森「腐海」があり、「腐海」を守る王蟲(オーム)や大王ヤンマをはじめとする巨大生物「蟲」がいます。

かろうじて生き残っているのは主に、トルメキアと土鬼(読み:ドルク。漫画版のみに登場)という二大強国と風の谷、工業都市ペジテに住む人々。こんな世界になっても争い続ける人々を嫌い、蟲を愛しこの世界で森と共に生き滅びようとするナウシカの物語です。漫画版では、トルメキア皇女クシャナが戦う理由、腐海と蟲と巨神兵が生まれた本当の意味、ドルクの首都・シュワにある墓所(ぼしょ)と世界再建計画について語られることになり、一層興味深い内容になっています。原作完結後に公開された『もののけ姫』(1997)がナウシカの延長線上にあるものとして比較されることも。

と、ナウシカ全体を見渡したところで、今回は音楽についてまとめておきたいと思います。

■「風の谷のナウシカ」

まずは、安田成美さんの「風の谷のナウシカ」(1984、徳間ジャパン)。映画公開前に「ナウシカガール・コンテスト」というイメージガールを募集し、後に女優となる安田成美さんがグランプリを獲得。安田さんにとってのデビューシングルとなりました。20.9万枚のセールスを記録し彼女自身の最大のヒット曲にもなったようです。

当初はこの曲を主題歌にすることが発表されたようですが、宮崎駿さんと高畑勲さんが本作の内容と楽曲が乖離しているなどの理由で、劇中では不採用。ただ、予告編やテレビCMなどの映画プロモーション用のシンボルテーマソングとして使用されたため、エンディングタイトルにもクレジットが入っているのがわかります。作詞は松本隆さん、作曲は細野晴臣さん(共に元はっぴいえんど)。

手嶌葵さんのカヴァーも素敵。

■「ナウシカ・レクイエム」

「ラン、ランララ、ランランラン」のフレーズでおなじみの「ナウシカ・レクイエム」(「遠い日々」)は作曲を担当した久石譲さんの娘・麻衣さん(当時4歳)が歌っています。

当初ボーイソプラノでの録音を考えていた久石さん。しかしデモテープとして愛娘の仮歌を入れて宮崎駿さんに渡したところ、絶賛し即採用されたのだそう。

久石譲さんがジブリ作品の音楽を担当するのはナウシカが最初。徳間グループ系列会社の関係者の推薦で映画先行発売のイメージアルバムを制作しました。当初はそれだけの予定でしたが、イメージアルバムを聴いた宮崎さん、高畑さんがいたく気に入り、劇中音楽も担当することになったというエピソードも面白いです。

ジブリ作品におけるイメージアルバムとオリジナルサウンドトラックの違いを明確にしておきましょう。イメージアルバムはサウンドトラック発売前、映画公開前に制作されるもので、“作品のイメージを伝える”“たたき台のようなもの”“劇中音楽の原点”と言えます。オリジナルサウンドトラック(OST)は実際に劇中で使われた音楽をまとめたものです。

■サウンドトラック『風の谷のナウシカ〜はるかな地へ〜』

オリコンアルバムチャートで最高8位を記録したオリジナルアルバム。「風の谷のナウシカ〜オープニング〜」が、タペストリーとともに流れているあのオープニング曲です。

■イメージアルバム『鳥の人…』

1曲目に収録されている「風の伝説」が映画のオープニング、タペストリーとともに流れる曲で、オリジナルサウンドトラックの「風の谷のナウシカ〜オープニング〜」の原点となった楽曲と言えると思います。

■番外編

王蟲の鳴き声は、布袋寅泰さんによるギターの音。当時布袋さんが所属していたレコード会社が、ジブリ作品を初期から支えた徳間書店グループの「徳間ジャパン」だった繋がりです。すでにBOØWYとしてデビューしていましたが、まだブレイク前。「久石譲さんに呼ばれてギターで泣いてくれと頼まれました。ずいぶん昔の話です」と布袋さん自身がTwitterで発言し(2011年)、ファンの間ではよく知られたトリビアのようですね。



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