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がんの告知を受ける前後で大切なのは「確かな相談先を知っておくこと」

がんと闘うと決めたとき、悩むのは、治療のことだけではありません。

生活や仕事のこと、聞きたいことはたくさんあるのに、誰に相談したら良いのか分からない。
また家族や職場にどのように伝え、
コミュニケーションを取って行くのが良いのかと迷う方も多いのではないでしょうか。

現在は、肺がん患者のコミュニティ運営やブログでの情報発信をされている清水さんも、
告知された時は誰に相談したらいいか分からず、パニック状態だったといいます。

今回は、清水さんに
「がんの告知前後に、確かな相談先を知る大切さ」についてお話を伺いました。

本インタビューは3編にわたってお届けします。
(1)35歳で見つかった肺がん「ネガティブなイメージだった、抗がん剤の治療に挑もうとしたきっかけ」

(2)がんの告知を受ける前後で大切なのは「確かな相談先を知っておくこと」
←今回はココ

(3)伝えなければ届かない患者の声。自身の活動を通して患者の声を届けていきたい

※本記事は、がん経験者の体験談です。
治療法や副作用などには個人差があります。医療情報につきましては、主治医やかかりつけの病院へご相談してください。

ブログで知人や会社の人に自分の状況を伝えていた

出典 pixabay

ーー告知を受けてからの会社とのやり取りについて、伺えればと思います。
告知を受けてから、会社とはどのようにお話をされていましたか?

精密検査を受けたときに腫瘍があると分かったので、がんの告知を受ける前でしたが、
これはやばいと思って会社に全部状況を伝えていました。

もし悪性のがんだったら、ステージが結構進んでいるのでは、という見立てもあったので、
治療に入って会社に迷惑をかけることになるかもしれないと思っていました。
そこで、自分の持っているプロジェクトの引継ぎができるように社内調整を始めていました。

そして、告知を受けてすぐに「治療に専念するために休職させてほしい」と会社には伝えました。その後すぐに休職をして、仕事からがん治療にパッと切り替えました。

治療が始まってからは、
かなり急展開で山あり谷ありだったので、
仕事に復帰することもなかなか難しく、自分の状況を知人や会社の人も見れるようにブログで事細かに伝えていました。
「こういう状況だから、まだ戻れません」と、時おり会社に連絡をしてました。

清水さんのブログ
ハムだぁ!のプロフィール | 今日も佳き日を… 35歳からの肺腺がん(HER2)ステージⅣ ライフ

当初は有休を消化しながら、傷病手当金をもらっていました。傷病手当金は病気やケガで会社を休んで給与をもらえないときに、加入している健康保険から給料の3分の2程度を受け取れる制度です。会社から傷病手当金に関する情報をいただいて、1年半それを頼りに休職させてもらいました。

参考:傷病手当金 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

1年半経ったとき化学療法が効いていましたが、副作用がけっこうしんどい治療で…。

時短で働くことやスポットで仕事を割り当ててもらって働く方法など、いろいろ会社から提案してもらったり、自分でもこれならできるかもしれないとやり取りしました。
ですが、やはり無理があるし、会社にも迷惑かけることが多すぎると思い、退職することに決めました。

ただ会社とはずっと話し合ってきていましたし、自分の中で納得して辞めたので、特にネガティブな気持ちはありませんでした。
会社からも「治療がうまくいって働けるようになったら、また戻ってきたらいいから。その状況に合わせて、話をしていこう」と有難い言葉もいただいて、退職に至りました。

ーー会社とのやり取りについて、一番最初は直属の上司にお話をされたのでしょうか?

そうですね。告知を受けてすぐその日に会社に行って、まずは直属の上司に全部状況を伝えました。その日に総務の方ともお話しさせていただきました。
その後は、総務の方とずっと制度の話や会社の話とかをつないでもらって、やり取りしていましたね。

ーーご自身の状況をブログで公開されたり、定期的に会社と連絡を取り、スムーズにやり取りをされていたと思いますが、お困りになったことはありましたか?

診断結果がどっちに転ぶか分からなかったので、引き継ぎをしていましたが
「もし何もなかったり、すぐ戻ってくることになったらどうやねん」と言われて、確かにそうだなというのはありました。
現場にかなり迷惑をかけたというのがあって、その辺りがかなりしんどかったですね。

当時、仕事をこなしながら、
検査やいろんなことをしながら情報を調べていたので、診断が降りるまでがめちゃくちゃしんどかったです。

このときが一番不安で、会社に対してもかなり迷惑をかけた時期かなと思っています。

告知を受けた後にパッと「治療に専念します」といって会社との関係を切り離したんですが、そんなに頻繁にやり取りをしなくても会社の業務は回っていたようですし、私に影響が出ないように周りにはとても助けてもらいました。

告知を受けた後、誰に相談していいかわからずパニック状態だった


ーー告知を受けた時期に誰かに相談をしていましたか?

相談相手がいなかったですね。
がんを罹っている知り合いがいなかったですし、 誰に相談していいか分からなかったです。だから、どうにか不安を取り除けないかと、
自分でバーっと調べていました。パニック状態でしたね。

つい最近、知り合いから「大腸がんの告知を受けたんです」という連絡が来ました。

かなりパニック状態で
「何を調べたり、何をしたらいいか分からんから何か教えてくれへん」と。
すごく気持ちが分かるところがあって、
当時自分で何を調べたらいいか分からなかったし、がんを経験した人から情報が欲しかったんですね。
だから、その連絡を受けて、
自分自身が当時どんな情報が欲しかったかなと考えて、連絡を返しました。

ーーがんの告知を受けたあとの相談先や窓口は、不足している状況なのでしょうか。

やっぱり告知されて、初めてがんっていうのが自分の中に入ってくると思うんですね。

お医者さんだったら違うと思うのですが、
病気のことって大半の人はまったく知識のない素人です。なので、いきなりそこに放り込まれて何も分からない状態だと思います。

そのときに医師からも説明はいろいろあると思いますが、説明を受ける時間も少ないので、
理解を深めていくための相談先とか知識について、どこに情報を求めたらいいかすら分からない状態だと思います。

だから、そういった意味では告知を受ける前後にどこに行ったら正しい情報があって、どこに行ったら相談ができるのかっていうのは知っておいた方がいいと思います。

がん情報サービスで情報を仕入れるとか、
大きい病院でがん診療連携拠点病院とかに指定されている病院だったら、がん相談支援センターという院内の相談員とかソーシャルワーカーさんなどの相談先があります。

当時、私もそんな相談先があると知らなかったので、相談できていなかったのですが、告知を受ける前後ではそういう情報はすごく必要だと思います。

参考
がん情報サービス
「がん相談支援センター」とは

ーー「こういう相談窓口があるから、行ってみてください」というように、主治医の先生から相談窓口について案内があるのでしょうか。

私の経験ではなかったですね。
おそらく先生がどこまで考えているかにもよりますし、看護師さんや周りの方が、どこまでそういった情報を患者目線で考えているか、
人によるのかなと思います。

ーーご家族には、どのようなタイミングでお話されたのですか。

告知を受ける診察は、妻と一緒に行きました。だから、妻は私ががんだと知っていましたし、両親にも告知を受けてすぐに伝えました。
会社にも告知を受けたその日に伝えました。

知り合いには、すぐには伝えていなくて…。
仲の良い知り合いであっても、一人一人に説明するのも大変だったので「ごめんやけど、ブログで全部発信するから気になるなら見に来て」と伝えました。

メールとかで個別に「がんです」と伝えるのはショッキングな話だし、周りもすごく気遣いに悩むと思ったので、お互いに負担をかけないようにブログを通して状況を伝えるのもいいのかなと思い、そのように周りには伝えるようにしました。

ソーシャルワーカーに相談しながら障害年金を申請

出典 pixabay

ーーがんは治療費が高額になることもあると思いますが、どのような制度を活用されていますか。

制度によって、なんとか今も治療ができているところがあって、高額療養費制度や傷病手当金がかなり大きかったです。今は、障害年金もいただいています。

傷病手当金は、会社から教えてもらいました。高額療養費制度は限度額が設定されていて適応されますし、限度額認定証を病院の窓口で提示しておくと限度額以上の支払いはせずに済むようになっています。障害年金については、学会の患者向けプログラムの中でファイナンシャルプランナーの方が説明されていて、自分も使える制度かもしれないと思ったので、調べて申請しました。

参考:
高額療養費制度を利用される皆さまへ
医療費が高額になりそうなとき(限度額適用認定)
傷病手当金 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
障害年金の制度をご存じですか?がんや糖尿病など内部疾患の方も対象です | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン

ーー障害年金の申請は手続きが複雑だと思いますが、ご自身で申請されたのですか。

はい、自分で申請しました。申請したときは治療がうまくいって体調が安定している時期で、自身の勉強のためにも自分で申請手続きをやってみました。一度社会保険労務士(以下:社労士)さんの無料相談を利用して話を聞いたり、相談支援センターのソーシャルワーカーさんにも相談しながら、主治医とも連携してもらったりして申請しました。

障害年金の申請に関する知識も病院によって違って、病院自体も手探りで、お互いに勉強しながら申請したところもありました。あとでソーシャルワーカーさんから聞きましたが、僕のケースが院内でモデルケースになって、その後がん患者さんの申請が増えたようです。
障害年金を受ける状況というのは、しんどい状況のがん患者さんということでもあるので、私は体が安定している時期だったから自身で申請できましたが、患者さんの負担を考えると、専門の社労士さんにお願いした方が良い場合もあると思います。

実際に障害年金の給付を受けることで、治療に専念できている部分もあります。
患者さんの中には治療にかかるお金を得るために無理して働いている方もいらっしゃるので。その無理している部分を障害年金でまかなって仕事のボリュームを減らして、状態がよくなったら障害年金の等級を下げて、また仕事を増やすというバランスを取れたらいいなと思っています。

制度の情報も探せば色々出てくるんですけど、なかなか辿り着けないところがあるので、
もっとそういった情報が、がん患者さんが見るところにあるべきなんだろうなと思います。



次回は、
(3)「伝えなければ届かない患者の声。自身の活動を通して患者の声を届けていきたい」をお届けします。

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