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35歳で見つかった肺がん「ネガティブなイメージだった、抗がん剤の治療に挑もうとしたきっかけ」

突然の、がん告知を受けたとき。

「まさか自分が」と大きな戸惑いを感じながらも、治療へと進もうとします。
けれど、ネットや本にはたくさんの情報が溢れていて一体どれが本当に正しくて自分に合った治療法なのか分からない...。

そのような迷いや不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

そんな不安を抱えながらも、
患者さん同士での交流をきっかけに踏み出すことができたと話すのが、
肺がん患者のコミュニティ「HER HER」発起人として活動する清水さん。

現在はがん患者のコミュニティ運営やブログでの情報発信などを行われています。
また、2018・2019年度は、がん対策情報センターの患者・市民パネルとしても活動されていました。

今回は、清水さんに「患者さん同士での交流を通じた、治療への理解の深め方」について、
くわしくお聞きしました。

本インタビューは3編にわたってお届けします。
(1)35歳で見つかった肺がん「ネガティブなイメージだった、抗がん剤の治療に挑もうとしたきっかけ」 ←今回はココ
(2)がんの告知前後で大切なのは「確かな相談先を知っておくこと」
(3)伝えなければ届かない患者の声。自身の活動を通して患者の声を届けていきたい

※本記事は、がん経験者の体験談です。
治療法や副作用などには個人差があります。医療情報につきましては、主治医やかかりつけの病院へご相談してください。

会社の健康診断がきっかけで、がんが見つかる

ーー受診されたきっかけと、告知を受けるまでについて教えてください。

きっかけは、会社の健康診断です。
十数年間ずっとオールAで健康な状態でしたが、2016年11月の健康診断で
「レントゲン検査で影があるから要精密検査」という結果が出て。自覚症状はなかったので、特に不安視せずに、軽い気持ちで会社の近くの病院に行って、検査を受けました。

そのとき初めてCT検査を受けたのですが、
当日すぐに結果が出て、
「どうも腫瘍がある。詳しく診てもらった方がいいから、紹介状を書くので大学病院に行ってください」と先生に言われました。
そこから、自分の中でかなり不安が広がっていって、
"もしかすると、がんかもしれない"と疑い始めました。

その後、大学病院に行ってさまざまな検査をしました。PET検査、脳のMRIの検査。
あと、胸と胸の間に腫瘍があったので、生検と言われる組織検査もしました。その結果、2017年2月に大学病院の呼吸器内科の診断で、肺腺癌のステージⅢbと告知を受けました。

ーー11月に健康診断で要精密検査になって、その後いろいろ検査されて、翌年の2月に肺腺がんと告知されたのですね。

そうですね。年末年始を挟んだこともあって、年末にCT検査を受けたり、年始にさらに大学病院で諸々の検査をして、2月1日に告知を受けた感じですね。

告知を受けたときは、抗がん剤へのネガティブなイメージが強かった

ーー告知を受けてから、どのような感じで治療が開始されていったのでしょうか。

肺腺がんのステージⅢbの告知を受けたときに、化学療法と放射線治療の標準治療を提案されました。
すぐに標準治療に入ってもよかったのですが、抗がん剤に対して、当時すごく拒否反応というか、ネガティブなイメージが強くて…。
いわゆる「抗がん剤は効かない」など、ネットの情報に左右されていました。
なので、すぐに標準治療に入らずに
「手術はできないか」「放射線治療や化学療法でどのようなことができるのか」など、セカンドオピニオンでいろんな専門医に聞きにまわりました。

そうしているうちに、がん性心膜炎というすごく予後の悪い状態に陥り、心膜にがんが浸潤してしまっていたんです。
なんとか緊急処置で一命を取り留めましたが、かなり状態が悪くなり、ステージⅣになりました。

その後、手術も受けたのですが、最終的には先生から化学療法の提案をいただきました。
嫌がっていた化学療法だったので躊躇してるところもあり「いったん考えさせてください」と言っていたら、また8月にがん性心膜炎で心嚢水(しんのうすい)がたまってしまい、化学療法をやりたいと思ってもできない体に戻ってしまいました。

針を刺して心嚢水を抜いたり、緊急入院したりして持ちこたえてということを繰り返していました。だから、当時化学療法をしたいという気持ちもあったのですが、治療に入れない状況が続いていました。

このままだったら、無治療で緩和治療で痛みを取り除いて延命していきましょうとの話も出ていたのですが、2017年12月に心臓や体の状態が化学療法に持ちこたえられる検査の数値も出てきたので、化学療法に入りました。

肺がん学会の患者向けプログラムへの参加がターニングポイントに

出典:Pixabay

ーー告知を受けた直後は化学療法への心配や抵抗感があったとのことでしたが、清水さんの中で徐々に化学療法を受けてもいいかなと変化したきっかけがあったのでしょうか。

自分の状況をSNSやブログでアップしたり、患者同士でいろんな情報をやり取りする中で、ある患者さんから「肺がん学会で患者向けのプログラムがあるから行ってみたら?」と教えてもらい、そこがターニングポイントでした。医師や研究者による標準治療などに関する患者向け講演プログラムが組まれていて、ようやく自分の中で標準治療への理解が深まったタイミングでした。

治療が受けられる体かどうか分からない状態でしたが、受けられるなら受けたいと思いました。プログラムに参加して、自分の頭の中でかなり変わったところがありました。それをきっかけにして、標準治療への理解がかなり進みました。 

ーーがんの治療や症状などについて、どのような情報を調べていましたか。

インターネットでがんの情報を調べたり、本もかなり読みました。
医師の中でも大学病院のがん専門の先生もいれば、個人で開業している先生もいるので、
がんに関わる本を本当に幅広く読んでました。患者さんの体験談のような手記も読んでいました。

ただ、本の情報もかなり偏った情報であったり、怪しげな自由診療の情報もありました。
本当にいろんな情報が錯綜していて、自分の中でどれが一番正しいのか分かっていませんでした。
今となっては「それ違うよ」と、過去の自分に言えるのですが、当時は知識不足で取捨選択の選択を間違っていたこともあるかと思います。

ーー今は清水さんの中で、情報収集について取捨選択の基準はありますか。

まずお勧めしているのが「がん情報サービス」です。国立がん研究センターが運営する公式サイトです。
告知を受けた方もそうですし、治療を始めた方も、エビデンスに伴った正しい情報がまとめられているので抑えるといいと思います。
私自身、今は学会が発信している情報や、セミナーや講演等で話を聞いて、最新の情報を仕入れています。

参考:がん情報サービス

二次治療を終えたあと、HER2を標的にした化学療法の治験を受けることに

ーー標準治療を始めてから、現在受けている治療についてお聞かせいただけますか?

化学療法を進めて、一次治療から運よく薬がすごく効いてくれました。
2017年12月に始めてから1年ちょっとで、
一次治療から二次治療に移りました。

初めは2つの薬を使っていたのですが、二次治療からは1つに絞られました。それから1年ちょっとくらいで、リンパ節に転移が判明しました。もともとあった腫瘍はかなり消えていったのですが、リンパ節の転移で両首と両脇と縦隔部に転移が見つかって、二次治療はそこで一旦終了になりました。

そのあと治験に入りました。
2017年に遺伝子パネル検査を治験で受けていて、そこでHER2の遺伝子変異が見つかっていました。当時は遺伝子パネル検査を保険診療で受けられなかったので、治験で受けていました。

日本では、2019年6月より、がん遺伝子パネル検査が保険適用され、保険診療のもとでがんゲノム医療が受けられるようになりました。詳しくは参考情報をご確認ください。
参考:よく分かるがんゲノム医療とC-CAT

標準治療や化学療法をするときも、
HER2を標的にした治験が走っていると知っていたので、やりたいとは思っていました。
当時は治験の条件に当てはまっていなかったので受けられなかったのですが、二次治療が終わった時に治験がやっていた場合、対象になり受けられると考えていました。
次の治療をどうしていくかは、主治医とずっと話し合って進めていたので、二次治療が終わった段階ですぐに治験に入ろうということになり、2019年12月にHER2の遺伝子変異を標的にした治験を受けました。

当時かかっていた病院では治験を実施していなかったので、主治医に紹介状を書いてもらい治験実施先に転院しました。これもすごく運がいいというのか、それからずっと治験を受けて薬を投与しながら今は生活を続けています。


ーー当時は治験の条件に合致しなかったけれど、二次治療の段階で合致したというのは、
清水さんの状態が変わったので治験を受けられるようになったということでしょうか?

そうではなく、この治験の参加条件として二次治療までは終えている患者さんでないと、
受けれないという条件がありました。主治医から「清水さんにはこういう治験があるんだけど、二次治療を受けた方を対象としているから、今は受けられない」と説明を聞いていました。

ーー遺伝子パネル検査について、どのようなきっかけで受けられたのでしょうか。

2017年当時の肺がん治療の場合、EGFRやALKの遺伝子の検査を個々に行っていました。遺伝子検査を受けていったところ、ことごとく陰性でした。その他にも遺伝子パネル検査の臨床試験が走っている時期で、私は大阪の病院の遺伝子パネル検査を受けました。この遺伝子パネル検査は、がんサバイバーの方が発信されていたブログをきっかけに知りました。


次回は、
(2)がんの告知を受ける前後で大切なのは「確かな相談先を知っておくこと」
についてお届けします。

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