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2022年ノルドカロットレーデン紀行#1 ~ はじめに

 この連載は、2022年2月~3月に行った北欧登山遠征の様子を記録しておくための個人的な紀行文である。
 自分はこの遠征で、真冬の北欧・スカンジナビア半島に飛び、二週間ほど北極圏の冬山に一人きりで籠り、昼はスキーを履いて橇を曳き、夜は本物のオーロラを眺めながらテントに泊まり、約160kmを歩くという少し変わった経験をした。

 登山とは、計画と実行から、下山後の記録執筆と報告までがセットである。
 その点で、ようやく記録に取り掛かろうとするこの遠征は、二年以上経過した今になっても自分の中で未だ正式には完結していない状態にある。
 本来はもっと早く、書かなければならなかった記録なのだ。
 だが、団体に所属せず、パートナーも居らず、特にスポンサーが居るわけでもない完全自己完結型の個人遠征では、正式な報告を仕上げるためのモチベーションを維持することが案外難しい。
 帰国した段階で自分が満足してしまうと、もうそれでお仕舞いである。功名心も、SNSで短文と写真を投稿すればインスタントに満たされてしまう。
 そうして、早く記録を書かなければと思いつつも、慌ただしい普段の生活や、他に趣味で書いている小説同人誌シリーズの執筆に押されてずっと後回しになってしまっていた。
 だが、記憶が風化してしまう前に記録を書き、遠征を正式に完結させねばならないという焦りがいよいよ強くなってきた。
 今回の連載を始める動機は、そんなところにある。

 書かなければという義務感だけで書き始めても、長続きしないことは明白だ。
 そこで今回はnoteでの連載形式にし、二週間に一本くらいのペースで計10本くらい、少しずつ書いていきたいと思う。
 現在想定している目次構成はこんなようなものである。

はじめに(今ここ)
今回の遠征に至るいきさつ①
 ~北欧への憧れ、山とスキー、そしてミリタリー
今回の遠征に至るいきさつ②
 ~北欧の山と文化、一回目と二回目の遠征
遠征の構想と準備
 ~退職と、コロナ禍と、ウクライナ侵攻
装備の準備
 ~極地装備は登山装備と少し違う
出国から入山まで
 ~旅行と同時進行する戦争
山行記録(長いので、何本かに分ける予定)
下山から帰国まで
 ~ロヴァニエミでの出会いと北極航路
まとめ

 この遠征は、北欧の山というフィールドから、スキー&橇による縦走というスタイル、使っている装備のこまごました部分に至るまで、日本の一般的な登山界では馴染みのないものばかりだと思う。
 だが、その分だけ他になかなか例を見ないユニークな遠征になっているとも思う。
 なるべく他の人にも理解してもらいやすいように書けたらと思っているが、基本的には単なる風変わりな変人の奇行録の一種である。

 もしそれでもこの連載に興味を持ってくれる人が居るならば、気長にお付き合いいただきたい。

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