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パンデミックでファッション業界はリセットされる

世界恐慌以来のリセッションとなると言われている「このパンデミックがいつまで続くのか?」「アフターコロナで世界はどう変わるのか?」

という問いは、今を生きる人たち全てが持っているもの。

勿論、ファッション業界の間でも多く語られていて、この危機から回復した時に、逆に「今までよりもより良い状態にするにはどうしたらよいか?」というヒントを見つけるため、世界をリードするファッションデザイナーや各国のVOGUE編集長が今日(4月14日)から4日間、ZOOMでVOGUE GLOBAL COVERSATIONという名目でオンラインセミナーを開始した。第一回目の今日は、下記の二つのテーマでそれぞれ対談形式で行われた。

「創造性の未来」
登壇者:エドワード・エニンフル(UK版編集長)、マーク・ジェイコブス、ケネス・イゼ
「サステナビリティの未来」
登壇者:エウジェニア・デ・ラ・トリエンテ(スペイン版編集長)、ステラ・マッカートニー、ガブリエラ・ハースト

第二部の「サステナビリティの未来」を語ってくれたステラ・マッカートニーが特に示唆にあふれていたので、紹介したい。

ファッション業界をリセットする時が来た

”It's a time to reset the Fashion industry”

マクロの観点から世界を見た時に逃れようのない事実と、それに対してのアクションについて語ってくれた。以下、要約になる。

皮肉にも地球の歴史上はじめて(コロナウイルスという)一つの事象で全世界が今繋がっている。そして、全世界が経済を初めてストップして、どれだけ環境に悪影響を及ぼす大量生産大量消費をしていたかを数値で明確に図る事が出来る現在。中国では1か月の間にCO2排出量が25%減少した。

人や物の移動の制限をすることで、これほど短期間で地球環境が改善された事を数値を持って目の当たりにした。そして、いかに普段私たちが大量消費をし、大量廃棄をして、代替がない地球を汚しているか?という事に気づかせてくれた。

この逃れようもない事実をもって、今こそ私たちはファッションに対しての考え方やあり方をリセットする時が来た。このチャンスを使うべき。消費のスピードを落とし、地球に配慮するべきだ。

サステナブルな選択は時間がかかるという事

次に、生活者マインドの変化の可能性について、語ってくれた。

ご存知の通り、STELLA McCARTNEYは、ブランドのミッションとして美しい地球を守るため、そしてサステナブルな未来を創るための代替素材の開発や、動物実験を行わない事、また森林保護などを創業時から行ってきた。環境に負荷をかけない方法でも素晴らしいマスターピースを作る事が出来る事をブランドとして体現してきた。

ただ、これらの取り組みやそこから生まれる素材調達や商品は一朝一夕にはできない。その事を、生活者が今こそ気づける時ではないのか?と。

それを示す事例として、ステラはビスコース(またはレーヨンと呼ばれる)を、環境保護に配慮し持続可能な方法で栽培された森林であるFSC認証を受けているスウェーデンで採取した木から作られたパルプのみを厳選調達している事を挙げた。

このスウェーデンの森林からとれる木のみを使ったビスコースのように、現在までに時間をかけて選別調達された素材や、開発された素材、つまり既存の素材を使って、次回のコレクションを発表する事を考えているというのだ。

第一部で話しをしたマーク・ジェイコブスは、今は新しい素材をイタリアに見に行くことも出来ないので、次のショーが出来るかどうかわからないと言っているくらい、既存の素材だけで新しいコレクションをラグジュアリーブランドが作る事は今までの常識では考えられない事。

常識を覆すことで、生活者にサステナビリティを考慮した消費や生活には時間を要する事をメッセージとして指し示し、マインドを変えようとしているのだ。

大切な人達との時間や季節を感じる日常に感謝できる気持ちは天からのプレゼント

ステラが考えるサステナビリティ―とは、そもそも意識の問題であり、自覚する事である。

Sustainability is "State of mind" and "State of consciousness". 

彼女は、外出規制が実行され始めてから家族との時間を多く持てるようになったり、季節の変わり目をゆっくり味わえたり、人間らしい自然と調和するようなバランスで生活が送れるようになり、楽しむことが出来ているという。そういった周囲の事に感謝する気持ちが深くなっている人々は少なくないはず。

この気持ちを一時的なものではなく、アフターコロナでも持ち続けながら仕事や生活をし、人と接する事が出来れば、今までとは違う他者を思いやり持続可能な世界が作り上げられる。これは、この状況が与えてくれた天からのギフトだと思う、と最後に伝えてくれた。

マーク・ジェイコブスも、コロナによってもたらされるであろうポジティブな影響の一つとして、みんなが自分自身を振り返る時間を持てている事。そして、各々がこの社会や世界をよくするためにどうやって貢献できるかを考えている事、と締めくくっている。


パンデミック後の世界は、デザイナーの考え方も、ショーの在り方も、サプライチェーンも、マーケティングも、小売りの在り方も、生活者のマインドも、多くが変わっているだろう。

今まで、この業界が「いつかは変わらなければ」と抱えてきていた問題が一気に加速して変わる光をデザイナー達の言葉に見れた気がする。

今回のシリーズは金曜日まで実施されているので、ぜひ多くの人に聞いてほしい。下記より登録すると、ZOOMのMeeting Invitationが送られてくるので、日本時間の22時~23時まで視聴できる。













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